私が市役所を辞めたのは2022年5月で、35歳のときでした。その翌年度から、公務員の定年は段階的に引き上げられています。
当時の私は「この先25年、この席に座り続けるのか」と考えて外に出ました。今の30代は、そこに5年が足された30年を前提に、同じ問いに向き合うことになります。
定年が延びると聞くと、働ける年数が増えるという話に見えます。ただ、制度の中身を開くと、増えているのは年数だけで、単価のほうは下げる設計になっていました。
この記事では、内閣人事局と人事院が公開している令和8年4月版の資料、地方公務員法と国家公務員法の条文、総務省の実施状況等調査と退職状況等調査を、いずれも私が自分で開いて確かめ、その内容をまとめました。
最後に、その数字を見たうえで30代が何を考えるべきかも書いています。
公務員の定年は段階的に65歳へ上がります
定年年齢は2年に1歳ずつ引き上げられ、令和13年度に65歳でそろいます。令和5年度に61歳となったのを起点に、令和7年度からは62歳です。
この先は令和9年度から63歳、令和11年度から64歳と上がっていきます。
自分の定年が何歳になるかは、生まれた年で決まります。年度で覚えるより、生年で自分の位置を確かめるほうが早いと思います。
2年に1歳ずつ上がる仕組み
国家公務員法第81条の6は、定年に達したときは定年に達した日以後における最初の3月31日などに退職すると定めています。同条第2項は、その定年を「年齢六十五年とする」と書いています。
条文の上ではすでに65歳が原則で、そこへ向けて段階的に上げている途中という整理です。内閣人事局と人事院の資料は、この引上げを「定年年齢を2年に1歳ずつ引上げ」と説明しています。
生年別に見た自分の定年
資料には、生年と定年年齢の対応表が載っています。数え間違いを防ぐために、そのまま引くと次のようになります。
| 生年 | 定年年齢 |
|---|---|
| 昭和37年4月2日〜昭和38年4月1日生まれ | 60歳 |
| 昭和38年4月2日〜昭和39年4月1日生まれ | 61歳 |
| 昭和39年4月2日〜昭和40年4月1日生まれ | 62歳 |
| 昭和40年4月2日〜昭和41年4月1日生まれ | 63歳 |
| 昭和41年4月2日〜昭和42年4月1日生まれ | 64歳 |
| 昭和42年4月2日以降生まれ | 65歳 |
いま30代の職員は、全員が65歳定年の側にいます。引上げの途中で調整が入る世代ではなく、65歳まで勤める前提で生涯の設計を組むことになります。
なぜ定年を引き上げるのか
引上げの背景としてよく挙げられるのは、大きく2つです。1つは年金の支給開始年齢が段階的に後ろへずれ、60歳で退職すると収入が途切れる期間ができてしまうことです。
もう1つは、働き手そのものが減っていることです。経験を積んだ職員に長く働いてもらう必要があるという事情は、民間の高年齢者雇用の流れとも重なります。
民間では、高年齢者雇用安定法によって65歳までの雇用確保が事業主の義務とされ、70歳までの就業機会の確保が努力義務とされています。公務員の定年引上げも、この流れの中にあると理解しておくと位置づけがつかみやすくなります。
地方公務員の定年は条例で決まる
ここは国と地方で建て付けが違います。地方公務員法第28条の6第2項は、定年について「国の職員につき定められている定年を基準として条例で定めるものとする」と定めています。
つまり地方公務員の定年年齢は、国を基準にしながらも、最終的には自分の自治体の条例で決まります。同条第3項には、職務と責任に特殊性があるときや欠員の補充が困難なときに、条例で別の定めをすることができるという例外も置かれています。
出典:e-Gov法令検索「国家公務員法」/e-Gov法令検索「地方公務員法」/内閣官房内閣人事局・人事院「国家公務員の60歳以降の働き方について(概要)」
61歳に達する年度から基本給は7割になります
働ける年数は増えますが、60歳を過ぎると基本給の単価は下がります。資料は「当分の間、61歳に達する年度以後の俸給月額(基本給)は、俸給月額の7割水準になります」と書いています。
増えるのは勤める年数で、単価のほうは3割落ちるという設計です。ここを知らずに「定年が延びたから安心だ」と考えると、生涯賃金の見立てを外します。
7割措置の中身
対象になるのは俸給月額、つまり基本給です。資料には、行政職俸給表の例として、降任のない職員の俸給月額427,000円が7割の298,900円になるという計算が示されています。
役職定年で降任した場合は、降任等前の俸給月額の7割水準になります。このとき降任等前後の俸給月額の差額のうち一定額が「管理監督職勤務上限年齢調整額」として俸給に上乗せされ、7割措置後の俸給月額と調整額の合計は、降任後に現に受ける職務の級の最高号俸の俸給月額が上限になります。
7割になる手当とならない手当
手当は一律ではありません。資料は次のように分けています。
| 扱い | 手当の例 |
|---|---|
| 7割水準となる | 地域手当、期末手当・勤勉手当 等 |
| 7割水準とならない | 住居手当、扶養手当、通勤手当 等 |
基本給に連動する手当が下がり、生活に紐づく手当は据え置かれるという分け方です。
年収ベースではどのくらい下がるのか
月給の総支給額は、住居手当などが据え置かれる分だけ3割までは減りません。ただし賞与にあたる期末手当と勤勉手当まで7割側に入るため、年収の減り方は月給の見た目より大きくなります。
子どもの教育費が終わっている時期なら扶養手当の影響は小さいものの、住居費がまだ残っている人にとって、住居手当が7割にならない意味は小さくないと思います。
なぜ7割なのか
資料は「当分の間」という言い方をしています。恒久的な制度ではなく、現時点の措置として置かれているという意味です。
資料は理由までは書いていません。一般に説明されるのは、定年を延ばすと人件費の総額が増えるため60歳以降の水準を調整して全体の均衡を取るという考え方と、民間企業でも60歳以降は給与が下がる例が多いという比較です。
地方公務員の給与は条例で決まるため、この7割という水準がそのまま適用されるとは限りません。ただ、国に準じて条例を整備した自治体が多いので、自分の自治体の条例を確かめる価値があります。
役職定年で管理職のポストからは外れます
60歳になると、管理監督職の職員は管理職以外のポストへ降りることになります。資料は「60歳に達した管理監督職の職員は非管理監督職ポストに降任等」と説明しています。
定年が延びても、最後まで課長や部長で走り切る設計にはなっていません。役職から降りたうえで、65歳まで勤めるという形です。
対象と異動期間
国家公務員では、指定職と俸給の特別調整額を支給される官職などが対象になります。俸給の特別調整額は、いわゆる管理職手当のことです。
降任等が行われるのは「異動期間」で、これは60歳の誕生日から最初の4月1日までの間を指します。地方公務員では、地方公務員法第28条の2が、地方自治法第204条第2項の管理職手当を支給される職などを管理監督職として扱い、同じ枠組みを置いています。
降りた後の給与の見え方
資料には、行政職俸給表9級2号俸の532,000円の職員が、降任に伴って6級73号俸の427,000円へ降格する例が示されています。
ここで先ほどの調整額が効いてきます。降格後の427,000円を7割にした298,900円で終わりではなく、管理監督職勤務上限年齢調整額が上乗せされ、降任等前の532,000円の7割にあたる372,400円になります。
この上乗せ分の73,500円が、管理監督職勤務上限年齢調整額です。降格による差額105,000円がそのまま補われるのではなく、7割措置後の水準に合わせた額が上乗せされます。
特例任用という例外
例外も用意されています。人事院規則で定める事由に該当する場合、つまり役職定年による異動によって公務の運営に著しい支障が生ずる場合には、特例任用として異動期間を延長し、引き続き管理監督職に就くことができます。
ただしこれは組織の都合で残す仕組みで、本人が希望すれば使えるものではありません。原則は降りる、という前提で考えておくほうが安全です。
出典:内閣官房内閣人事局・人事院「国家公務員の60歳以降の働き方について(概要)」
退職手当が不利にならない仕組みがあります
60歳を過ぎて定年前に辞めても、退職手当で損をしないよう手当てされています。資料は「60歳以後定年前に退職した職員が不利にならないよう、退職手当の基本額は、当分の間、退職事由を『定年退職』として算定されます」と書いています。
自己都合退職として計算されると支給率が下がりますが、その扱いにはならないという意味です。定年まで勤め上げなければ損をする、という構図にはなっていません。
「定年退職」として算定される
退職手当の額は、退職事由によって支給率が変わります。同じ勤続年数でも、自己都合か定年かで結果が違ってきます。
60歳以後の定年前退職については、この支給率を定年退職と同じ扱いにするという措置が置かれています。60歳を過ぎてから自分の意思で辞めるという選択が、金銭面で不利になりにくい形です。
ピーク時特例
もう1つが「ピーク時特例」です。7割措置や役職定年による降任で俸給月額が下がると、退職時の俸給月額だけで計算したときに手当が目減りしてしまいます。
そこで、減額前の俸給月額の最高額を考慮して計算する仕組みが置かれています。減額前の俸給月額に減額日前日までの勤続期間に応じた支給率を掛けた額と、退職日の俸給月額に残りの期間分の支給率を掛けた額に、それぞれ調整率を掛けて足し合わせる、という計算方法です。
退職金は増えるのか減るのか
ここで効いてくるのが支給率の上限です。国家公務員退職手当法の附則は、35年を超えて勤続して退職した場合の基本額を「その者の勤続期間を三十五年として」計算すると定めていて、この扱いは60歳以後の定年前退職にも準用されます。
新卒で入っていれば60歳時点でおおむね35年を超えているので、そこから5年延ばしても支給率は動きません。俸給月額のほうは7割措置と役職定年で下がりますが、先ほどのピーク時特例で減額前の俸給月額が計算の基礎に使われます。
つまり支給率も計算の基礎も60歳の時点でほぼ固まるので、そこから5年勤め続けても退職手当は大きくは動きません。自分の場合にどうなるかは、勤続年数と役職、そして自治体の条例で変わります。
地方公務員の退職手当は各自治体の条例で決まりますが、国に準じた上限を置いている例が一般的です。退職手当の担当課に試算を頼むのが確実です。
計算の考え方そのものは公務員の退職金を勤続年数から整理した記事にまとめています。
5年延ばしても手当が増えないなら、残る理由は給与と仕事の中身で決まる
ここまで見たとおり、退職手当は60歳の時点で支給率も計算の基礎もほぼ固まり、そこから5年勤めても額は大きくは動きません。そうなると、残るか出るかを分けるのは手当ではなく、毎月の給与と仕事の中身です。30代のうちに外の給与の目安を一度見ておくと、この先も残る年数の重さを測りやすくなります。
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60歳以降の働き方は3つに分かれます
60歳を過ぎたときの選択肢は、常勤で続けるか、定年前再任用短時間勤務に移るか、公務の外へ出るかの3つです。資料のフローチャートも、「60歳以後の勤務の意思表明」からこの3つに分かれる形で描かれています。
引上げの途中の期間は、これに加えて、定年退職した後に暫定再任用でつなぐ道も別に用意されています。
この3つは勤務時間と給与の形が違うので、先に全体像を押さえておくと迷いにくくなります。判断するときに効いてくるのは、次の3点です。
- 身分が続くかどうか。常勤で続ける場合は退職を挟みませんが、再任用はいったん退職してから採用される形になります
- 勤務時間をどこまで減らせるか。短時間勤務は週15.5時間から31時間の範囲で決まります
- 退職手当をいつ受け取るか。定年前に退職すればその時点で支給され、その後の再任用は別の任用として扱われます
3つの道を並べる
| 働き方 | 勤務時間 | いつまで |
|---|---|---|
| 常勤職員として続ける | フルタイム | 定年退職日まで(管理監督職は降任等を経る) |
| 定年前再任用短時間勤務 | 週15.5時間〜31時間 | 採用の日から定年退職日相当日まで |
| 退職して公務の外へ出る | ― | 60歳以後の定年前退職は、退職手当の基本額が定年退職として算定される |
| (参考)暫定再任用=定年退職後の経過措置 | フルタイム38時間45分/週、または短時間15.5〜31時間 | 1年を超えない範囲で更新し、最大65歳到達年度の末日まで |
常勤のまま続ける場合
いちばん素直な選択は、常勤職員のまま定年退職日まで勤めることです。身分も勤務時間もそのままで、変わるのは61歳に達する年度からの基本給と、管理監督職なら役職の位置です。
手続きの面では何もしなくてよい代わりに、7割措置と役職定年をそのまま受け入れる形になります。年金の受給が始まるまでの収入をつなぐという意味では、いちばん安定した選択でもあります。
定年前再任用短時間勤務
本人が希望して60歳以後に退職し、短時間勤務のポストへ再任用される仕組みです。採用は、人事評価の全体評語その他従前の勤務実績等に基づく選考で行われます。
基本給は各俸給表の定年前再任用短時間勤務職員の欄の額に、1週間当たりの勤務時間の割合を掛けて決まります。地域手当や期末・勤勉手当は支給されますが、扶養手当は支給されません。
地方公務員では、地方公務員法第22条の4が、条例年齢以上退職者を条例の定めにより短時間勤務の職へ採用できると定めています。ここも条例が土台です。
暫定再任用
定年が段階的に上がっている途中は、定年退職の年齢と65歳の間に空白ができます。それを埋めるのが暫定再任用で、旧来の再任用制度と同じ仕組みを経過措置として残したものです。
任期は1年を超えない範囲で、更新しながら最大で65歳到達年度の末日まで勤められます。引上げが完了すればこの制度は役割を終えるため、今の30代が使う場面は基本的にありません。
実際にはどれが選ばれているのか
総務省が公表している令和6年度の調査に、地方公務員の実績が載っています。定年前再任用短時間勤務職員は4,841人で、勤務時間は「29時間3分45秒以上31時間以下」が最も多く63.1%を占めました。
職種別では一般行政職が最も多く、44.4%にあたる2,150人でした。短時間勤務といっても、実際には週31時間近くまで働く形が主流だと分かります。
出典:総務省「定年前再任用短時間勤務制の実施状況等に関する調査結果のポイント(令和6年度実績)」/総務省「地方公務員制度等(高齢対策)」
年金が始まるまでの空白をどう埋めるか
引上げの背景としてよく挙げられていたのが、年金の支給開始年齢とのつなぎでした。裏を返すと、60歳で辞めると年金が始まるまでの期間を自分で埋める必要が出てきます。
60歳以後に定年前退職を選ぶなら、退職手当と貯蓄でその期間をどうつなぐかを先に計算しておくことになります。短時間勤務で残る道が用意されているのは、この空白を薄く長く埋めるためでもあります。
年金そのものの仕組みや、退職して民間へ移った場合の切り替えについては、公務員の転職で年金がどう変わるかをまとめた記事で整理しました。
定年延長と再任用の違いは給与の決まり方に出ます
定年延長と再任用の差がいちばん大きく出るのは、基本給の決まり方です。定年延長で常勤に残る人は自分の号俸を引き継いだまま7割になり、再任用に移る人は職務の級ごとに決まった一律の額に切り替わります。
手当の面でも、再任用では扶養手当が支給されず、暫定再任用の期間には退職手当も出ません。同じ「65歳まで働く」でも、どちらの道を通るかで手元に残る額の計算式が変わります。
若いうちに積み上げた号俸が60歳以降の基本給に効き続けるのは、常勤で残る道だけだと私は読んでいます。
定年延長は自分の号俸を引き継いで7割になります
常勤職員として定年まで勤める場合、61歳に達する年度以後の基本給は、それまでの自分の俸給月額の7割水準です。計算の土台は、長年の昇給で積み上がった自分の号俸のままです。
内閣人事局と人事院の資料には、60歳を超えた常勤職員についても「勤務成績に応じた昇給等はあり得ます」と注記されています。7割に下がったあとも、評価によって号俸が動く余地は残るということです。
扶養手当が7割にならずに支給され続けるのも、常勤で残る道の特徴です。再任用に移ると、扶養手当そのものが支給の対象から外れます。
再任用は級ごとの一律の額に切り替わります
「60歳以降の働き方は3つに分かれます」で見た再任用欄の額は、暫定再任用でも基本給の基準になります。人事院はこれを職務の級ごとの基準俸給月額と説明していて、号俸による区分はありません。
フルタイムの暫定再任用ならその額がそのまま基本給になり、短時間勤務なら1週間の勤務時間の割合を掛けた額になります。同じ級で再任用された人は、勤続の長さにかかわらず同じ基準額から出発します。
号俸の積み上げが基本給に反映されなくなる点が、常勤で残る道との決定的な差です。地方公務員の場合は、自分の自治体の給料表で今の級の号俸と再任用欄の額を並べてみると、差の大きさがつかめます。
扶養手当と退職手当の扱いで差が広がります
人事院の暫定再任用のページでは、地域手当、住居手当、通勤手当、単身赴任手当、超過勤務手当、期末・勤勉手当などが支給されると整理されています。期末・勤勉手当は、行政職俸給表(一)6級以下で成績が標準の職員の例で、年間合計2.41月分と示されています。
一方で、定年前再任用短時間勤務の説明で見たとおり、再任用では扶養手当が支給されません。同じページには、暫定再任用では退職手当は支給されないとも明記されています。
定年前再任用短時間勤務の場合は、60歳以後に退職した時点で退職手当が支給され、そのあと短時間勤務で採用される流れです。3つの道の違いを、給与と手当の軸で並べると次のようになります。
| 項目 | 定年延長(常勤で残る) | 定年前再任用短時間勤務 | 暫定再任用 |
|---|---|---|---|
| 基本給の基準 | 自分の俸給月額の7割(61歳に達する年度以後) | 再任用欄の基本俸給月額×勤務時間の割合 | 再任用欄の基本俸給月額(短時間は勤務時間の割合を掛ける) |
| 号俸・昇給 | 勤務成績に応じた昇給等はあり得る | 級ごとの一律の額 | 級ごとの一律の額 |
| 扶養手当 | 支給(7割にならない) | 支給されない | 支給されない |
| 退職手当 | 退職時に支給 | 再任用の前の退職時に支給 | 暫定再任用の期間には支給されない |
暫定再任用は引上げ期間中の経過措置なので、いまの30代に関係するのは常勤で残る道と定年前再任用短時間勤務の2つです。地方公務員の給与は条例で決まるため、手当の扱いは自分の自治体の例規集と人事担当課で確かめてください。
出典:人事院「暫定再任用制度」/内閣官房内閣人事局・人事院「国家公務員の60歳以降の働き方について(概要)」
地方公務員が自分の条件を確かめる手順
ここまでの制度の数字は国家公務員に適用されるもので、地方公務員が実際に受ける条件は自分の自治体の条例で決まります。定年年齢も、役職定年も、定年前再任用短時間勤務も、いずれも条例事項です。
この記事で引用している総務省の調査結果は、いずれも地方公務員のものです。
国の資料は土台として読み、そのうえで条例に当てはめる。この順番で確かめると迷いません。
条例で決まる範囲
条例で定めることとされているのは、定年年齢だけではありません。管理監督職の範囲、異動期間の延長の扱い、定年前再任用短時間勤務の対象になる年齢、60歳を超えた職員の給与の扱いも、それぞれ条例や規則に定められています。
だから「国がこうだから自分もこうだ」とは言い切れません。国の資料で全体像をつかんだうえで、自分の自治体の条例で数字を確かめる二段構えが要ります。
情報提供・意思確認の制度
60歳以降の働き方について本人へ情報提供し、意思を確認する仕組みは、地方公務員にも置かれています。地方公務員法附則第23項は、任命権者が、職員が条例で定める年齢に達する日の属する年度の前年度に、その後に適用される任用と給与の措置の内容などの情報を提供するものとし、あわせてその年齢に達する日の翌日以後の勤務の意思を確認するよう努めるものとする、と定めています。
内閣人事局と人事院が出しているパンフレットも、国家公務員の同じ制度に基づく情報提供として作られたものです。案内は60歳の前年度に来る建て付けなので、それより早く知りたいなら自分で条例を読むしかありません。
条例を探す手順
自分の条件を確かめるなら、次の順で当たるのが早道です。
- 「自治体名+例規集」で検索し、職員の定年等に関する条例を開く
- 定年年齢と、生年ごとの経過措置の表を確認する
- 管理監督職の範囲と、役職定年の扱いを確認する
- 定年前再任用短時間勤務の条例と、対象になる年齢を確認する
- 給与条例で、60歳超の俸給月額の扱いを確認する
ここまで見ておけば、自分が何歳まで勤められて、どの時点から単価が下がるかが分かります。そのうえで人事担当課に確かめれば、聞くべきことが具体的になります。
30代にとって何が変わるのか
ここからは制度の説明ではなく、私の見方を書きます。定年が延びても、判断を先送りできる年数が増えたわけではありません。
延びたのは勤められる年数で、選び直せる年数ではないからです。むしろ、上が詰まる時間が長くなる分だけ、若い世代の景色は変わります。
ポストの回り方が変わる
役職定年で管理職からは降りるとはいえ、その職員は非管理監督職として組織に残ります。定員の枠は有限なので、下の世代が入る余地はその分だけ狭くなります。
私が市役所にいたころも、ポストが空くかどうかは上の世代の退職時期に左右されていました。その退職時期が後ろへずれるという意味では、30代の昇任の時期にも影響が出ると考えるのが自然です。
生涯賃金の形が変わる
定年が5年延びれば、単純計算では5年分の給与が積み増されます。ただ、その5年は7割水準で、しかも役職からは降りた後です。
山の高さが上がるのではなく、山の裾野が長く伸びるという形の変化です。今の給料が上がらない実感と、その先も水準が上がらない見通しは、分けて考える必要があります。
給与の見通しそのものは公務員の給料は今後下がるのかを整理した記事に書きました。
採用と人員構成にも効いてくる
定年が上がっていく途中では、その年度に定年を迎える職員がまとまって生じない年度が2年に1度現れます。総務省の地方公務員に関する調査は、令和5年度について「定年の段階的な引上げにより、60歳の定年退職者が生じなかった」と報告しています。
その翌年度は反動が来ます。同じ調査は令和6年度について「61歳の定年退職者が生じたことなどから定年退職者については、前年度から40,453人増加」したとしています。
本来の定年による退職者がまとまって出ない年度と、まとめて出る年度が交互に来るので、採用の人数もその波を受けます。採用数は定員管理の計画や普通退職の状況でも動くので、退職者が減った分がそのまま採用数の減少になるわけではありません。
年齢構成の山が動くので、10年後の職場の景色は今とは違うものになります。自分より上の層が厚いまま推移する職場で、どんな役割を担うことになるかは想像しておく価値があります。
これは悪いことばかりではありません。経験のある職員が残ることで、引き継ぎや専門的な業務の担い手が確保されるという面もあります。
出典:総務省「地方公務員の退職状況等調査 調査結果のポイント(令和6年度)」
やり直せる年数は増えていない
定年が5年延びたことで、キャリアを選び直せる期間まで5年延びたわけではありません。未経験の職種に移れるかどうかは、定年ではなく採用する側の判断で決まります。
むしろ、残る年数が長くなったぶん、同じ場所にとどまる決断の重さは増したと考えています。65歳まで勤めるとすれば、30代半ばの人にはまだ30年前後の時間が残っているからです。
私は35歳で外に出ました
私が辞めたのは2022年5月で、給料月額は約23万円でした。最初の転職で年収は200万円下がり、そこから職種を変えて積み直しています。
数字だけ見れば損をしていますが、選び直せる時間が残っているうちに動いたことは、今でも間違いではなかったと思っています。30代の転職は遅いのかを検証した記事には、当時の判断の材料をまとめました。
一方で、残ることが悪い選択だとも思っていません。65歳まで働けて、退職手当も不利にならない設計は、民間の平均から見れば恵まれた部類に入ります。
60歳からの7割水準と、外の求人票の額面を同じ表に並べてみる
私が辞めたのは35歳、給料月額が約23万円のときで、最初の転職で年収は200万円下がりました。残る側の損得は、役職定年と60歳以降の7割水準まで読めば計算できます。出る側の数字は、外の求人票の額面を見ないと埋まりません。
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定年延長と再任用を30代で比べるときの判断基準
60歳からの5年をどんな条件で働けるかは、60歳の時点でほとんど決まっていると私は考えています。再任用の採用は従前の勤務実績などに基づく選考で行われ、常勤で残る道でも役職を降りた後の働き方が問われます。
30代から50代の積み上げが、そのまま60代の条件になるということです。だから30代のうちに確かめておきたいのは、制度の細部より、自分の数字と家族の状況です。
そのうえで、残るか出るかを決める期限を自分で置くことを勧めます。
役職を降りた後に何を任されるかで重さが変わります
役職定年で管理職を降りた人も、再任用で残る人も、60歳以降は管理職以外の立場で実務を受け持つ場面が増えます。そこで何を任されるかによって、65歳までの5年の中身は変わってきます。
私は保険年金課で加入・喪失・給付を担当し、のちに賦課も受け持ちました。その経験から見て、制度の細部まで分かる担当者は、年齢や役職に関係なく頼りにされる存在だったと思います。
反対に、調整役だけを長く続けてきた人が60歳で実務に戻るのは、本人にとっても職場にとっても負担が大きいはずです。65歳まで残るつもりなら、40代以降も自分の手で回せる分野を1つ持っておくことが、再任用の選考でも効いてきます。
30代のうちに確かめておきたい3つの判断材料
判断材料は、制度の説明より自分の数字に寄せるほうが役に立ちます。私がいま30代の職員なら、次の3つを先に確かめます。
- 自分の生年で決まる定年年齢と、61歳に達する年度がいつになるか
- 今の級の号俸の額と、給料表の再任用欄の額との差
- 60歳の時点で扶養している家族がいるかどうか
3つ目は見落とされやすい項目です。子どもが生まれた時期によっては60歳の時点でまだ扶養が続く家庭もあり、常勤で残るか再任用に移るかで、扶養手当の有無がそのまま家計の差になります。
数字をそろえておくと、60歳の前年度に届く情報提供の案内を、自分の条件に当てはめて読めるようになります。
私なら40歳までに残るか出るかの結論を出します
私が期限を置くなら40歳です。残ると決めれば、そこから20年あまりを評価と専門分野の積み上げに使えますし、再任用の選考で見られる従前の勤務実績もその間にできあがります。
出ると決めた場合も、準備に使える年数が残ります。私の1回目の転職活動は10月に始めて翌年3月に内定が出るまで約5ヶ月かかり、そのあいだは市役所に勤めながら進めました。
決めないまま50代に入ると、残る側の積み上げも出る側の準備も中途半端になりやすくなります。期限を決める前の材料として、公務員に将来性はあるかを5つの軸で判断する方法もあわせて読んでみてください。
出典:内閣官房内閣人事局・人事院「国家公務員の60歳以降の働き方について(概要)」
公務員の定年延長でよくある疑問
調べているときに引っかかりやすい点をまとめます。共通しているのは、答えが生年と年度で決まるということです。
一般論として何歳と覚えるより、自分がどの列にいるかを先に確かめるほうが早く済みます。
65歳定年になるのはいつからですか
令和13年度からです。それまでは2年に1歳ずつ上がる途中で、令和5年度は61歳、令和7年度は62歳、令和9年度は63歳、令和11年度は64歳という並びになります。
いま30代の職員は、生年別の表のとおり65歳定年の側に入ります。
給料が7割になるのはいつからですか
61歳に達する年度からです。60歳になった時点ではなく、61歳に達する年度以後という区切りである点に注意してください。
資料は「当分の間」の措置と書いているので、将来見直される可能性は残ります。
定年延長で退職金は減りますか
支給率は勤続35年が上限なので、新卒で入庁した人は60歳時点で頭打ちです。7割措置と役職定年で俸給月額は下がりますが、ピーク時特例で減額前の俸給月額が計算の基礎に使われるため、減額後の低い額だけで計算されることはありません。
結果として、60歳で辞めた場合と大きくは変わらない水準に落ち着くのが一般的です。
ただし勤続年数や役職、自治体の条例で条件は変わるので、担当課に試算を依頼するのが確実です。
再任用と定年延長は何が違いますか
定年延長は、常勤職員のまま勤め続ける仕組みです。再任用は、いったん退職したうえで改めて採用される仕組みで、勤務時間や給与の決まり方が変わります。
定年前再任用短時間勤務は自分の希望で60歳以後に退職して短時間勤務に移る道、暫定再任用は引上げ期間中の空白を埋める経過措置です。
役職定年は60歳ちょうどですか
降任等が行われるのは、60歳の誕生日から最初の4月1日までの「異動期間」です。誕生日当日に役職が外れるわけではありません。
地方公務員の場合、管理監督職の範囲や上限年齢は条例で定められます。
役職定年は廃止されるのですか
現時点で廃止は決まっていません。管理監督職勤務上限年齢制は地方公務員法にも置かれた仕組みで、条例で管理監督職の範囲や上限年齢を定める形になっています。
民間で役職定年を見直す動きがあることと、公務員の制度が変わることは別に考える必要があります。公務の運営に著しい支障が生ずる場合の特例任用はありますが、これは組織側の判断で使われるものです。
60歳より前に辞めた場合はどうなりますか
60歳より前の退職は、原則として自己都合退職として扱われます。退職手当を定年退職として算定する措置は、あくまで60歳以後の定年前退職が対象です。
ただし例外もあります。早期退職募集制度に応募して認定された場合など、自己都合とは別の扱いになる仕組みが用意されています。
ここは勘違いしやすいところなので、退職の時期を考えるときは自分の年齢と支給率の関係を先に確かめてください。
そのうち70歳定年になりますか
一般の職員について、70歳への引上げは決まっていません。ただし国家公務員法第81条の6第2項のただし書は、職務と責任に特殊性があることなどにより65歳が著しく不適当と認められる官職を占める医師および歯科医師その他の職員について、65年を超え70年を超えない範囲内で人事院規則により定年を定めることができるとしています。
地方公務員も、地方公務員法第28条の6第3項により、職務と責任に特殊性があることや欠員の補充が困難であることで国の定年を基準とするのが実情に即さないと認められる職員に限って、条例で別の定めができます。ただし国や他の自治体の職員との権衡を失しないよう考慮することが条文で求められており、一般の職員の定年を条例で70歳にできるという仕組みではありません。
民間では70歳までの就業機会の確保が努力義務とされていますが、これは公務員の定年とは別の話です。
将来の見直しを前提に生活設計を組むのは危ういので、いま決まっている65歳を基準に考えるほうが安全です。
60歳で辞めたらどうなりますか
60歳以後の定年前退職は、退職手当の基本額が定年退職として算定されます。60歳を過ぎていれば、定年前に辞めたという理由だけで自己都合扱いの低い支給率になることはありません。
ただし支給率は勤続35年で頭打ちになります。新卒で入って60歳時点ですでに35年を超えている人は、65歳まで勤めても支給率は変わりません。
そのうえで、短時間勤務で残るのか、完全に外へ出るのかを選ぶことになります。外に出る選択を考えるなら、体力と選択肢が残っているうちのほうが動きやすいのは確かです。
地方公務員も同じ内容ですか
枠組みは同じですが、数字は条例で決まります。定年年齢、管理監督職の範囲、定年前再任用短時間勤務の対象年齢、60歳超の給与の扱いは、いずれも自分の自治体の条例を見る必要があります。
在職中に収入を増やす手段を探しているなら、公務員の副業がどこまで許されるかを整理した記事もあわせて読んでみてください。
まとめ|延びたのは年数で、判断の猶予ではない
公務員の定年は2年に1歳ずつ引き上げられ、令和13年度に65歳でそろいます。いま30代の職員は全員が65歳定年の側で、途中の調整が入る世代ではありません。
お金の面では、61歳に達する年度から基本給が7割になり、地域手当や期末・勤勉手当も同じ水準に下がります。一方で退職手当は、60歳以後の定年前退職を定年退職として算定する措置とピーク時特例で守られています。
今日から動くなら、次の3つで足ります。
- 例規集で自分の自治体の定年等に関する条例を開く
- 生年から自分の定年年齢を確かめる
- 給与条例で60歳超の俸給月額の扱いを見る
私の結論は、残るなら条例まで読んで自分の数字をつかむこと、出るなら早いほうが選択肢は多いということです。年金や社会保険の切り替えまで含めた見立ては公務員の転職で年金がどう変わるかをまとめた記事に、辞める前の資金の考え方は貯金はいくら必要かをまとめた記事に書いています。
出る側を選び、エージェントを使うなら、応募を始める前に相談しておくという進め方があります。私は1社目のとき転職サイトだけで動いて、求人の読み方が分からないままでした。
相談先の順番と使い分けは公務員の転職エージェントおすすめ比較にまとめてあります。公務員ならではの比較の軸と、状況別に最初に使う1社も書きました。
制度は見直されることがあり、地方では条例によって扱いが違います。この記事は判断の材料であって、最終的な条件は所属の人事担当課と公式資料でご確認ください。


