役所は出たいけれど、民間企業へ飛び込むのはこわい。その2つのあいだで止まっている人が、大学職員という進路にたどり着くことがあります。役所は出るけれど、民間企業ほど遠くへは行かない。そういう選び方です。
私は35歳で市役所を辞めて、民間のIT企業へ移りました。年収は200万円下がり、その1社目は6ヶ月で辞めています。
だからこそ、大学職員を「安定を残したまま役所を出る道」として見ている人の気持ちは、よく分かるつもりです。
年収の平均額や選考の倍率は、出どころをたどれない数字が多いので使いません。代わりに、あなたが自分で原典に当たれる場所を示します。
国立大学法人と私立大学で何が違うのか。役所での経験を大学のどの仕事に結び付けられるのか。
少子化のなかで大学ごとの経営と働き方をどう見極めるのか。応募できる募集をどう絞り、年収と家計をどの順番で確かめるのか。
この5つが分かれば、求人票を前にして迷う時間はかなり減ります。
この記事を書いた人
sawada|市役所に15年以上勤務した後、35歳でIT企業へ転職しました。最初の転職では年収が200万円下がり、1社目は6ヶ月で退職する遠回りも経験しています。現在は在宅勤務のWebマーケターとして働いています。大学職員には転職していないので、この記事は選ばなかった側から書いています。
詳しい経歴は運営者情報をご覧ください。記事へのご感想やサイトに関するお問い合わせはお問い合わせページから承ります(個別の税務・法律に関するご相談にはお答えできません)。
国立大学法人と私立大学の仕組みを比べて選ぶ

国立大学法人で働く職員は、公務員ではありません。法人化で身分の扱いが変わっているので、「国立なら身分が守られる」という前提のまま比べると、出発点からずれてしまいます。
国立か私立かという区別だけでは、待遇は決まりません。雇用主が誰で、どんな契約条件で採るのかまで確かめて、はじめて比べられる状態になります。
私は市場価値を知らないまま応募先を決めて、1社目を6ヶ月で辞めています。法人の仕組みと、学校法人ごとの条件と、専任か契約かの区分を押さえておくと、同じ求人票がまったく違って見えてきます。
国立大学法人の職員を公務員と区別して理解する
国立大学は法人化されています。文部科学省は法人化の柱のひとつとして「非公務員型による弾力的な人事システムへの移行」を挙げています。
同じ資料には「能力・業績に応じた給与システムを各大学の責任で導入」「学長の任命権の下での全学的な人事を実現」とも書かれています。つまり、給与や人事の仕組みを決めるのは国ではなく、それぞれの大学です。
ここから導かれる実務上の結論は単純です。「国立大学法人だから」という理由だけで待遇を推し量ることはできません。
私立大学では学校法人ごとの雇用条件を確かめる
私立大学の雇用主は、大学そのものではなく学校法人です。同じ「私立大学職員」でも、法人が変われば給与規程も休暇制度も別のものになります。
法人によっては複数の大学や附属の学校を運営しています。募集の名前が大学名でも、実際の配属や異動の範囲は法人の全体に及ぶことがあります。
健康保険や年金がどの制度になるかも、法人の側で決まっています。私学の教職員が入る制度として私学共済がありますが、自分が加入の対象になるかは雇用の区分で変わります。
募集要項を読むか、応募先に直接確かめてください。
専任職員と契約職員の違いを募集要項で確かめる
大学の求人には、専任職員、契約職員、嘱託職員、有期雇用職員といった呼び名が並びます。呼び名からは契約期間も待遇も読み取れません。
見るべきは呼称ではなく、募集要項に書かれた雇用期間と更新の条件です。「契約期間の定めなし」なのか、「1年更新・上限あり」なのかで、10年後の姿はまったく違うものになります。
プロパー職員という言い方をする大学もあります。これは法人が直接採用した職員という意味合いで使われることが多く、雇用期間の保証を表す言葉ではありません。
外郭団体や独立行政法人も含めて、「役所に近い組織」全体を比べたい方は、公務員から団体職員へ転職はあり?元市役所15年以上が実情と選び方を解説をご覧ください。
| 確認項目 | 国立大学法人 | 私立大学 |
|---|---|---|
| 雇用主 | 各国立大学法人 | 学校法人 |
| 身分 | 公務員ではない(非公務員型) | 公務員ではない |
| 主な採用窓口 | 地区ごとの統一採用試験+各大学の独自募集 | 学校法人・大学ごとの募集 |
| 給与規程の所在 | 各法人が定める。公表資料で概要を確認できる | 学校法人が定める。募集要項と面接で確認する |
| 共済・保険の確認先 | 法人の人事担当(募集要項に記載がある場合も) | 法人の人事担当。私学共済の対象かを確認する |
| 休日・休暇制度の所在 | 就業規則・募集要項 | 就業規則・募集要項 |
(出典)文部科学省:国立大学法人法の概要
公務員の経験を大学職員の仕事に結び付けて考える
役所で積んだ経験は、大学でも通じる部分があります。ただし通じるかどうかを決めるのは、募集されている業務と自分の経験が一致しているかであって、公務員だったという事実そのものではありません。
応募先を考えるときは、前職で何をしていたかに加えて、その経験が募集業務にどう当てはまるかを整理してください。同じ職歴でも、当てはめ方によって伝わり方が変わります。
職務経歴書に書く材料は、役所の仕事を大学の言葉へ置き換えるところから決まっていきます。置き換えたあとで、応募先が公表している課題と突き合わせると、話す順番まで見えてきます。
役所で培った調整力を大学の実務に結び付ける
地方公務員の仕事は、条例や要綱にもとづいて手続きを回し、関係部署と調整し、住民に説明することの積み重ねです。大学にも、総務・人事・財務という管理部門があり、同じ形の仕事があります。
規程を読んで運用に落とす作業は、大学では学内規程の改正や補助金の執行として現れます。決裁をもらうまでの段取りを組める力は、組織が変わっても価値が消えにくい部分です。
ただし、これを職務経歴書にそのまま書いても伝わりません。公務員の経験は、募集されている業務との接点を示せたときに強みとして伝わります。
教務や研究支援の仕事を自分の経験と照合する
大学の事務には、管理部門のほかに大学固有の仕事があります。教務、学生支援、入試、研究支援、産学連携、国際交流といった区分です。
教務は履修や成績の管理で、規程の運用という点では窓口業務に近い面があります。学生支援は奨学金や課外活動の支援で、申請を受けて審査する流れは役所の給付事務と似ています。
入試は、募集要項の作成から出願の受付、試験当日の運営、合否の通知までを扱う仕事です。決められた期日に向けて全学の職員を動かし、一件のミスも許されない状態で本番を迎える点は、選挙事務や国の統計調査の事務に近い形をしています。
研究支援は外部資金の申請や執行の管理で、補助金の事務経験が生きる可能性があります。地域連携の部署があれば、自治体との協定や共同事業を担当することもあります。
自分の経歴のうち、どの部署と接点があるのか。この照合を先にやっておくと、募集を見たときの判断が速くなります。
大学で実現したいことを応募先の課題から考える
大学の採用で問われるのは、経験の棚卸しだけではありません。その大学で何をしたいのかを、その大学の事情に即して話せるかが見られます。
ここで役に立つのが、応募先が公表している中期計画や事業報告書です。学部の再編を進めているのか、外部資金の獲得に力を入れているのか、認証評価で何を課題として挙げたのか。
公表資料には、その大学がいま困っていることが書かれています。
安定を求めて応募すること自体は、責められることではありません。ですが面接で伝わるのは、安定への期待ではなく、相手の課題に自分がどう関われるかという話のほうです。
| 役所での経験 | 対応し得る大学の業務 | 募集要項で確認する点 |
|---|---|---|
| 条例・要綱の運用と改正 | 学内規程の整備、総務 | 規程改正の担当が置かれているか |
| 予算要求・執行・決算 | 財務、研究支援(外部資金の執行) | 財務系の職務内容の記載 |
| 窓口対応と申請審査 | 教務、学生支援、奨学金 | 学生対応の有無と繁忙期 |
| 選挙事務・統計調査などの全庁動員業務 | 入試 | 入試期の応援体制と繁忙期の記載 |
| 補助金の申請・実績報告 | 研究支援、産学連携 | 外部資金に関する記載 |
| 議会・庁内調整、文書管理 | 総務、人事、法人本部 | 法人本部と大学事務の区分 |
| 他機関との協定・共同事業 | 地域連携、国際交流 | 地域連携部署の有無 |
少子化と働き方から大学ごとの安定を見極める
「大学職員はホワイト」も「大学職員はやめとけ」も、大学を一括りにした評価です。安定しているかどうかは、その大学の経営と、自分が配属される部署の働き方を別々に見ないと分かりません。
とくに気にしてほしいのが、定員割れという言葉の使われ方です。数字そのものは公表されていますが、その数字が何を意味するかについては、公表している側が丁寧に注意書きを付けています。
煽りの言葉に振り回されないためには、その注意書きまで読んだうえで、一校ごとの資料に当たるしかありません。勤務地の条件も、同じ段階で確かめておく必要があります。
定員割れの割合だけで大学の経営悪化を決めない
日本私立学校振興・共済事業団は『令和8(2026)年度 私立大学・短期大学等 入学志願動向』を公表しています。それによると、集計対象となった私立大学595校のうち、入学定員充足率が100%未満だった大学は275校でした。
この595校に占める割合は46.2%です。
前年度は316校・53.2%でしたから、41校減り、割合は7.0ポイント下がりました。調査基準日は各年度5月1日です。
ここで必ず添えておきたいのが、原典に書かれている注意書きです。同資料には「未充足であることが、直ちに経営状況が悪化していることを示すものではないことには留意が必要である」と明記されています。
定員が埋まっていないことだけでは経営の悪化は判断できず、大学ごとの資料を合わせて読む必要があります。なお、これは私立大学の集計なので、すべての大学の話として広げないでください。
(出典)日本私立学校振興・共済事業団:令和8(2026)年度 私立大学・短期大学等 入学志願動向
学生募集と財務の資料から経営の持続性を読む
一校ごとの状況は、その大学が出している資料で確かめられます。学校法人には財務情報を公開する仕組みがあり、国立大学法人にも業務と財務の状況を示す資料があります。
見るのは1年分ではなく、数年分の流れです。入学定員充足率が下がり続けているのか、持ち直しているのか。学部の再編や新設に動いているのか。
- 入学定員充足率の年次の推移(募集単位ごとに見ると傾向が分かりやすい)
- 学校法人の事業報告書と資金収支計算書
- 国立大学法人の業務・財務等に関する資料
- 学部・学科の再編や新設、募集停止の有無
- 繁忙期の残業と有給の取りやすさ(入試期と年度替わりに集中しやすい)
- 勤務地として、キャンパスや附属施設がどこにあり、異動が転居を伴うかどうか
事業報告書や財務資料は、大学の公式サイトの「情報公開」「法人情報」といった欄にまとまっています。サイト内検索で「情報公開」「財務」と入れて探してみてください。残業や有給の取りやすさ、異動に伴う転居の有無は、募集要項で分からなければ採用担当へ確かめてください。
見つからないときは、事務局の総務課に置き場所を聞けば教えてもらえます。
事業団が毎年度実施している学校法人基礎調査の集計値も、業界全体の動きをつかむ材料になります。個別の大学を判断するときは、その大学自身が出している資料のほうを優先してください。
勤務地と異動の範囲を配属先の業務から確かめる
大学職員の働き方は、部署によってかなり違います。学生と直接向き合う部署と、法人本部の管理部門とでは、忙しくなる時期も残業の出方も別のものになります。
そして見落とされやすいのが勤務地です。複数のキャンパスや附属施設を持つ法人では、異動が転居を伴うことがあります。
市町村の職員は、原則として転居を伴う異動がありません。
だからここは、失うものとして意識されにくい部分です。
住宅ローンを組んだ家に住み続ける前提で転職先を探すなら、勤務地の条件は年収と同じ重さで効いてきます。返済や審査の側から見た注意点は公務員から転職すると住宅ローンはどうなる?審査と返済の現実にまとめました。
募集要項の勤務地の欄と、異動の範囲の説明は必ず読んでください。
大学職員の採用ルートと応募先の条件を照合する
大学職員への入口は、ひとつではありません。採用ルート、応募資格、雇用区分の3つを先に照合しておくと、選考に進んでから条件の不一致に気づく事態を避けやすくなります。
在職中に動くなら、確かめる順番を先に決めておくほうが消耗しません。募集がどこに出ているかを知り、自分が応募できる条件かを確かめ、選考の日程を確保できるかを見る。
ここまでは事務作業なので、平日の夜でも進められます。そのうえで、募集要項に書かれた選考内容に合わせて準備を進めます。
統一採用試験と大学独自の募集を分けて探す
国立大学法人には、地区ごとに実施される統一採用試験があります。一次試験を共通で行い、合格者が各法人の面接へ進むという流れです。
これとは別に、各大学が個別に行う中途採用や経験者採用の募集もあります。統一採用試験だけを見ていると、通年で出ている個別募集を取りこぼします。
私立大学は、学校法人ごとの募集が基本です。大学の採用情報ページ、人事課からの告知、大学関係の求人媒体など、募集の載る場所が分かれています。
なお、この統一採用試験の対象には、大学共同利用機関法人や国立高等専門学校機構も含まれます。この記事が扱うのは大学の職員なので、そちらの中身までは触れません。
受験資格と雇用区分を募集要項で照らし合わせる
年齢の要件は、思い込みで判断しないでください。関東甲信越地区国立大学法人等職員採用試験実施委員会は、令和8年度から全試験区分で受験可能年齢を30歳から35歳へ引き上げると案内しています。
試験区分は事務、図書、技術系です。
これは関東甲信越地区の案内です。35歳なら誰でも受けられるという意味ではないので、生年月日を含む具体的な要件は、応募する地区の試験案内で必ず照合してください。
年齢の要件を満たしても、それだけでは応募してよい募集かどうかは決まりません。同じ大学の同じ時期の募集でも、期間の定めのない専任として採る枠と、1年更新で上限のある有期の枠が並んで出ていることがあります。
受験できる募集と、働き続けられる募集は同じではありません。応募資格の欄と雇用期間の欄は、必ず一組で読んでください。
倍率の話を見かけることもありますが、出どころのはっきりしない数字が多く、判断の役には立ちません。倍率より先に、自分が応募資格と雇用条件の両方を満たしているかを確かめるほうが確実です。
(出典)関東甲信越地区国立大学法人等職員採用試験実施委員会:関東甲信越地区国立大学法人等職員採用試験
在職中の応募条件と選考日程を確かめる
在職中に応募するなら、日程の確保が最初の関門になります。一次試験が日曜に行われる場合もあれば、面接が平日昼間に設定される場合もあります。
確認する項目を、応募前に一覧にしておくと迷いません。
- 応募資格(年齢、学歴、実務経験の要件)
- 雇用区分と契約期間(期間の定めの有無、更新の上限)
- 選考日程(平日か土日か、来校が何回必要か)
- 入職予定日(4月起点が基本になりやすい)
ここで絞った募集は、そのまま手元に置いておいてください。給与の水準を読む作業は、次の章で同じ募集を見ながら進めます。
入職の時期については、年度の途中で辞められるのかという問題が出てきます。私自身は5月に役所を辞めました。その可否と手続きは公務員の年度途中退職はあり?5月に辞めた元市役所15年以上の実体験に書いています。
面接では公務員経験と大学への貢献を結び付ける
ここまでで、応募先の公表資料から読んだ課題と、自分の経歴の接点は書き出せているはずです。面接で確かめられるのは、この2つがつながっているかどうかです。
つなぐ材料は、応募先が挙げている課題の名前と、自分が役所で担当していた業務です。その2つを、自分が関われる部分でつなぎます。この対応関係を、志望動機や面接で説明する内容の土台にしてください。
大学職員への転職で年収と家計の変化を見積もる
大学職員になれば年収が上がる、とは限りません。応募前に読めるのは、募集要項や公開されている給与規程からわかる待遇の目安までです。前歴換算の基準や自分への当てはまり方が分からないときは採用担当に確かめ、最終的には提示された条件で判断することになります。
先に読めるものと、あとで確かめるものを混ぜると、家計の判断ができなくなります。
私は最初の転職で年収が200万円下がりました。その経験から、転職後の家計は条件の提示を受ける前に見積もっておいてほしいと思っています。
先に済ませられるほうから手を付けると、提示された数字に引っ張られずに判断できます。
応募前に給与規程と公表資料から水準を読む
前の章で絞った募集は、まだ手元にあるはずです。その法人が出している資料を開いてください。
国立大学法人なら役職員の給与等の公表資料があります。学校法人は財務情報の公開ページや事業報告書で人件費の状況を示しています。
どちらも大学の公式サイトの「情報公開」「法人情報」の欄にあることが多く、サイト内検索で見つからないときは事務局へ問い合わせれば置き場所を教えてもらえます。
ただし、学校法人の財務資料に載っている人件費は、法人全体の支出です。教員と事務職員の内訳が示されていても、人件費の総額から自分に適用される給与水準は判断できません。
内訳の有無にかかわらず、募集要項と公開されている給与規程を確認し、それでも分からない点は採用担当へ問い合わせてください。
それでも、求人サイトの「大学職員の平均年収」より、応募先が自分で公表している資料のほうが確かめられる情報です。
この記事で金額を書かないのは、出どころをたどれない数字を載せたくないからです。あなたが見るべき原典の場所だけをお伝えします。
昇給と経験年数の評価を給与規程から確かめる
もうひとつ、応募前に読めるのが給与の決め方です。中途で入るとき、これまでの勤続年数がどれだけ換算されるかで、初年度の額も、その後の上がり方も変わります。
公務員の年収は、長く勤めた分の積み上げでできています。同じ仕事をしていても、入庁5年目と15年目では毎月の額が違います。
前歴の換算が何割で見られるのか、初任給の決定にどう反映されるのか。ここが分かると、提示を受けたときに「思ったより低い」と感じる理由まで読めます。
年功序列が強いと言われる職場では、若いうちの大幅な上昇は起きにくい代わりに、長く勤めたときの積み上げが効きます。どちらが自分に合うかは、いま何歳で、あと何年働くのかによって変わります。
住宅ローンと子育て費用から許容できる額を決める
条件の提示を受ける前に、下げてはいけない額を先に決めておいてください。提示を見てから決めると、その数字に引っ張られます。
通帳と給与明細を開いて、次の順で足してみてください。
- 住宅ローンの年間返済総額(毎月返済分とボーナス返済分の合計)を12で割った額
- 保育料と学資保険
- 保険料と車の維持費
- 食費・光熱費・通信費
- 固定資産税など年1回の支出を12で割った額
この5項目は出発点です。日用品費や医療費、保育料以外の教育費など、家庭ごとに必要な支出と、予備費や積立の分も足してください。
その合計が、世帯として毎月確保したい金額の目安になります。その合計から、配偶者などが毎月負担する額を差し引いて、自分の毎月の手取りで賄う必要がある額の目安にしてください。年払い用に確保してある資金を反映するなら、対象の期間に合わせて月額に直し、その資金を使い切ったあとに必要な積立額も確かめてください。
年収で考えると手当や賞与に紛れるので、手取りの月額で出します。金額が確定していない賞与は、下限の前提に入れないでください。
私の場合は、年収が200万円下がった現実を、毎月の手取りの減り方として受け止めることになりました。その経緯は公務員から転職して後悔した?年収200万減の本音と戻らない理由に書いています。
数字としての200万円より、月々で何が削れるかのほうが生活に効きます。
提示年収を基本給と賞与などに分けて比較する
求人票のモデル年収と、自分に提示される年収は別のものです。提示を受けたら、基本給、賞与、手当に分解してください。
賞与は支給月数が固定とは限らず、業績や在籍期間で変わることがあります。手当についても、住居手当や通勤手当が現職と同じ条件とは限りません。
大学職員への転職は、モデル年収ではなく自分に適用される条件で家計を判断します。
| 比較する項目 | 現職(公務員) | 応募先 |
|---|---|---|
| 基本給(月額) | 給与明細で確認 | 提示内容で確認 |
| 賞与 | 支給月数と算定期間 | 支給月数と算定の考え方 |
| 手当(住居・通勤・扶養など) | 現在の支給内容 | 支給の有無と条件 |
| 経験年数の評価 | ― | 前歴換算の考え方 |
| 退職金制度 | 制度の内容 | 制度の有無と算定方法 |
| 年間休日・有給付与・両立支援制度 | 現在の条件 | 就業規則・募集要項で確認 |
| 勤務地・転居の有無 | 現在の勤務地 | 勤務地と異動の範囲 |
表の空欄は、分からないまま残してください。推定額を書き込むと、比較したつもりになってしまいます。
退職金と年金や共済の扱いを応募先に確認する
退職金は、制度があるかどうかと、算定がどうなるかの両方を確かめます。公務員の退職手当と転職先の退職金は別の制度なので、公務員としての勤続年数が引き継がれると断定はできません。通算の扱いがあるかどうかは、応募先に直接確かめてください。
年金や健康保険についても、どの制度に加入することになるのかを応募先に聞いてください。私立であれば私学共済が関わる場合がありますが、雇用区分によって扱いが変わることがあります。
公務員側の退職金がどう計算されるのかは、公務員の退職金は転職でいくら?勤続15年の計算式と20年の壁で詳しく書いています。
公務員から大学職員への転職でよくある質問
以下の4つは、検索でよく見かける疑問です。先に答えを言うと、この記事で確かめた範囲では人数の統計も働きやすさの一般値も見つかりませんでした。一般論では判断できないので、募集要項や公表資料を確かめ、自分に適用される待遇は提示された条件で判断してください。
転職者が多いかどうかも、働きやすいかどうかも、年収が上がるかどうかも、募集ごと・大学ごとに違います。一般論で答えを出そうとすると、どの説明も「場合による」で終わってしまいます。
だから以下の4つは、どこを見れば自分の答えが出るのかが分かる形で書きました。どれも前の章で扱った判断材料に戻るようになっているので、気になったところがあれば該当の章を読み直してみてください。
公務員から大学職員に転職する人は本当に多いか
「多い」と書いている記事はよく見かけますが、この記事で確かめた範囲では、転職者数を示す統計は見つかりませんでした。ですから、多いとも少ないとも断定できません。
よく言われる「組織の文化が近い」「規程どおりに仕事を進める点が似ている」という説明には、うなずける部分もあります。ただし、それはあなたが採用される理由にはなりません。
大学職員は本当に楽でホワイトな仕事といえるか
部署と時期によります。入試期や年度替わりに業務が集中する部署もあれば、比較的平準化されている部署もあります。
雇用区分によっても働き方は変わります。判断の材料は、「少子化と働き方から大学ごとの安定を見極める」の章にまとめてあります。
大学職員への転職で年収は上がるのか下がるのか
上がる人も下がる人もいます。年収は、応募先の給与規程と、あなたの経験年数の評価のされ方で決まります。
平均年収の比較記事で自分の結果を推し量るより、「大学職員への転職で年収と家計の変化を見積もる」の章で、提示条件を分解して現職と並べるほうが早く答えが出ます。
在職中でも大学職員の選考を受けられるのか
在職中の応募そのものを禁じる募集は、一般的ではありません。実務上の壁になるのは、休暇を取って選考に出られるかどうかです。
一次試験と面接で何日必要になるかは、「大学職員の採用ルートと応募先の条件を照合する」の章の確認項目にまとめてあります。
まとめ:大学の名前ではなく条件で選ぶ

大学職員は、公務員の経験を生かせる選択肢のひとつです。ですが応募先を決めるときに効いてくるのは、仕事の中身と、生活を維持できる条件です。
私は大学職員になっていません。書けるのは、役所を出るときに何を確かめておけばよかったか、という側からの話だけです。
それでも、3つの進路を同じ物差しで並べてみると、自分がどこで迷っているのかははっきりします。迷いの正体が年収なのか、勤務地なのか、それとも仕事の中身なのか。そこが決まれば、確かめる順番も自然に決まります。
続ける・大学職員・民間を同じ物差しで並べる
並べる軸は、経験との接点、勤め先が続くかの確かめ方、雇用条件、収入の見通しの4つになります。
| 判断の軸 | 公務員を続ける | 大学職員になる | 民間企業へ出る |
|---|---|---|---|
| 経験との接点 | そのまま生きる | 募集業務との一致を確認する | 職種によって大きく変わる |
| 勤め先が続くかの確かめ方 | 自治体が公表する財政資料を見る | 学生募集と財務の資料を数年分見る | 事業内容と公開されている業績・財務資料を見る |
| 雇用条件 | 現在の条件と、異動や制度改定による変更の可能性を確認する | 雇用区分・勤務地・休暇を確認する | 求人ごとに大きく違う |
| 収入の見通し | 積み上げの見通しが立つ | 前歴換算と提示条件で決まる | 提示条件と昇給・賞与の条件を確認する |
この3つのうち、私が経験しているのは公務員と民間企業で働くことです。大学職員として働いた経験はありません。
大学職員の列が確認項目ばかりなのは、私がその道を経験していないからです。経験していないことを、経験したように書くつもりはありません。
大学職員への転職で譲れない条件を言葉にする
比べる前に、譲れない条件を言葉にしてください。年収の下限を守りたいのか、勤務地を動かしたくないのか、雇用期間の定めがないことを優先するのか。
3つ全部を満たす募集が見つからない場合に備えて、順位を付けておくと迷いません。私の場合、最初の転職で年収が200万円下がりました。
条件に合う募集を選び不明点を応募先に確認する
- 譲れない条件を3つ書き出し、順位を付ける
- 役所での経験を部署ごとに書き出し、募集されている業務と重なる部分に印を付ける
- 気になる大学の公表資料を、数年分さかのぼって開く
- 募集要項で応募資格と雇用区分を照合し、応募できる募集だけを残す
- 毎月必ず出ていく額から、下回ってはいけない手取りの月額を先に決めておく
- 分からなかった点を書き出し、応募先の人事担当へ問い合わせる
自分の条件を整理しきれないまま応募先を探すと、落ちた理由も分からないまま消耗します。段階ごとにどこへ相談すればよいかは、公務員の転職は何から始める?段階別の相談先とサービスの選び方にまとめてあります。
大学の名前で決めないでください。仕事の中身と条件を確かめ、自分が譲れない条件に合うかどうかで判断してください。これが、大学職員を選ばなかった私からの答えです。
この記事について分かりにくいところがあれば、お問い合わせページからお知らせください。


