公務員から転職はもったいない?市役所15年→年収200万ダウンした私が今思うこと

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「公務員を辞めるなんて、もったいない」

転職を考え始めたあなたは、この言葉を何度聞いたでしょうか。親から、友達から、同僚から。まるで呪文のように繰り返されるこの言葉に、せっかく固まりかけた決意が何度も揺らいでいるのではないでしょうか。

正直に言います。その言葉は、半分正しいです。

公務員の安定は本物です。クビにならない、給料は毎年上がる、ボーナスは確実に出る。これらは紛れもない事実であり、手放すには相応の覚悟が必要です。

ですが、こうも思うのです。

「もったいない」という言葉に縛られて、自分の人生の選択肢を閉ざし続けることの方が、よっぽどもったいないのではないか

私は大阪府の某市役所に15年勤めた後、35歳でIT企業に転職しました。最初の転職で年収は200万円ダウン。妻と幼い子ども、35年の住宅ローンを抱えた状態での決断でした。その後、2社を経験し、現在はWebマーケターとして完全在宅で働いています。

この記事では、「もったいない」の正体を一つひとつ分解し、その上で私自身の転職体験をすべてお話しします。転職を煽るつもりも、引き止めるつもりもありません。

あなたが自分自身の頭で判断するための「材料」を、できる限り正直にお渡しすることだけを目的としています。

  1. 「公務員から転職はもったいない」と言われる6つの理由【全部事実です】
    1. 理由①:クビがなく、市役所は潰れない「絶対的な雇用安定」
    2. 理由②:黙っていても上がる給料と、確実に出るボーナス
    3. 理由③:有給・育休・病休……子育て世代には最強の福利厚生
    4. 理由④:住宅ローン・クレジットカード審査で無敵の「社会的信用」
    5. 理由⑤:「あんなに勉強したのに」──試験突破の記憶が足を引っ張る
    6. 理由⑥:30代未経験の転職市場は、想像以上に厳しい
  2. 「もったいない」と言う人の正体──その言葉は誰のためか?
    1. 親・親戚が反対する理由は「あなたへの愛情」|でも時代が違う
    2. 配偶者が反対する理由は「生活防衛本能」|感情論では絶対に勝てない
    3. 同僚・上司が引き止める理由は「自分の選択を否定されたくない」から
    4. 「もったいない」と言われて揺らぐなら、まだ辞め時ではないかもしれない
  3. 15年勤めた市役所を辞めるまで──「もったいない」を超えた3つの転機
    1. 転機①:管理職の背中を見て「この先に自分の未来はない」と確信した日
    2. 転機②:「市役所の〇〇さん」以外の自分が、どこにもいなかった
    3. 転機③:子どもに「お父さんの仕事って何?」と聞かれて、答えに詰まった
    4. 年収200万ダウンの現実──転職直後の家計は本当に苦しかった
    5. 1社目(IT企業・事務職兼カスタマーサポート)は「民間社会のリハビリ」だった
    6. 2社目(Webマーケター・完全在宅)で、ようやく「辞めてよかった」と思えた
    7. それでも「公務員に戻りたい」と思ったことは一度もない
  4. 公務員から転職して分かったメリット5つ・デメリット5つ
    1. 【メリット①】成果が正当に評価され、自己肯定感が回復した
    2. 【メリット②】在宅勤務・副業OK──「働き方の選択肢」が一気に広がった
    3. 【メリット③】「個人のスキル」が積み上がる感覚は、安定とは別の安心感
    4. 【メリット④】人間関係を「自分で選べる」環境になった
    5. 【メリット⑤】残業が「自分でコントロールできるもの」に変わった
    6. 【デメリット①】年収ダウンは覚悟が必要
    7. 【デメリット②】「公務員」の看板が消えた瞬間、社会的信用は確実に下がる
    8. 【デメリット③】公務員には基本的に戻れない──片道切符の覚悟
    9. 【デメリット④】「成果を出さなければ居場所がない」というプレッシャー
    10. 【デメリット⑤】「思っていたのと違う」──転職先のミスマッチは普通に起こる
  5. あなたは辞めるべき?残るべき?|後悔しないための判断チェックリスト
    1. 「転職した方がいい人」に当てはまる5つのサイン
    2. 「辞めない方がいい人」に当てはまる5つのサイン
    3. 最も危険なのは「辞めるか・残るか」で悩み続けて何もしないこと
  6. 年収ダウンを最小限に抑える「家族を説得するためのお金の話」
    1. 公務員と民間の「手取り」を正しく比較する──額面年収だけでは見誤る
    2. 「3年で追いつき、5年で追い越す」は本当か?──昇給カーブの現実
    3. 住宅ローンがあるなら「転職前」にやるべき3つのこと
    4. 「副業OK」の民間企業を選べば、年収ダウンは副業でカバーできる
  7. 公務員からの転職で後悔しないための実践ステップ
    1. ステップ①:在職中に「なぜ辞めたいのか」を紙に書き出す
    2. ステップ②:職務経歴書は「何をしたか」ではなく「どう工夫したか」で書く
    3. ステップ③:転職エージェントは「相性」で選ぶ|合わなければ変えていい
    4. ステップ④:面接で「なぜ公務員を辞めるのか」と聞かれた時の答え方
    5. ステップ⑤:内定が出てから「辞めるか残るか」を決める
  8. 【Q&A】公務員からの転職でよくある疑問に経験者が回答
    1. Q. 公務員は失業保険がもらえないって本当?
    2. Q. 公務員を辞めたら退職金はどうなる?
    3. Q. 30代後半でも未経験転職は可能?
    4. Q. 公務員からの転職先でおすすめの業界・職種は?
    5. Q. 転職活動は在職中にバレない?
    6. Q. 転職に有利な資格はある?取ってから辞めるべき?
  9. まとめ──「もったいない」の本当の意味は、自分で決めていい

「公務員から転職はもったいない」と言われる6つの理由【全部事実です】

まずは「もったいない」の中身を見ていきましょう。大事なのは、これらが単なる思い込みではなく、客観的に見てもほぼ事実であるということです。

理由①:クビがなく、市役所は潰れない「絶対的な雇用安定」

民間企業では、業績不振によるリストラや、会社そのものの倒産といったリスクが常につきまといます。ですが、公務員にはそれがありません。どれだけ景気が悪化しようと、懲戒免職にならない限り、定年まで雇用が保障されています。

私自身、15年間の市役所勤務で「明日、仕事がなくなるかもしれない」という不安を感じたことは一度もありませんでした。この安心感は、実際に手放してみるまで、そのありがたみに気づきにくいものです。

理由②:黙っていても上がる給料と、確実に出るボーナス

公務員の給与は年功序列です。極端な話、特別な成果を出さなくても、毎年少しずつ基本給は上がっていきます。加えて、期末・勤勉手当(ボーナス)は年2回、ほぼ確実に支給されます。

民間に転職して最初に衝撃を受けたのが、まさにこのボーナスの不確実性でした。「業績連動」という言葉の意味を、身をもって理解することになります。

理由③:有給・育休・病休……子育て世代には最強の福利厚生

公務員の福利厚生は、民間企業と比較しても群を抜いて手厚いです。有給休暇の取得率は高く、育児休業も取りやすい環境が整っています。共済組合による医療費の補助や、各種手当も充実しています。

特にお子さまが小さい家庭にとって、この福利厚生の価値は計り知れません。病気で保育園から呼び出しがかかった時に「すみません、今日は早退します」と言いやすい空気があるかどうかは、家庭の安定に直結します。

理由④:住宅ローン・クレジットカード審査で無敵の「社会的信用」

公務員の社会的信用は、金融機関からの評価という形で具体的に表れます。住宅ローンの審査では、公務員というだけで圧倒的に有利です。

実際、私が住宅ローンを組んだのは転職の2年前、市役所職員だった時です。今振り返ると、あのタイミングでローンを組んでいたのは結果的に正解でした。転職後に同じ条件でローンが通ったかどうかは、正直わかりません。

理由⑤:「あんなに勉強したのに」──試験突破の記憶が足を引っ張る

公務員試験は決して簡単な試験ではありません。何ヶ月、あるいは何年もかけて準備し、ようやく手にした合格。「あれだけ苦労して入ったのに、自分から辞めるなんて」という心理的な抵抗は、想像以上に強烈です。

これは経済学でいう「埋没コスト(サンクコスト)」に近い心理です。過去に使った時間や努力は、すでに戻ってきません。ですが、人間の脳は「ここまでやったんだから」という感情で、冷静な判断を曇らせてしまうのです。私自身、辞める直前まで「15年を無駄にするのか」という思いと戦い続けていました。

理由⑥:30代未経験の転職市場は、想像以上に厳しい

30代半ば、民間企業での実務経験なし。この経歴で転職市場に出ると、書類選考の段階でかなりの数が落ちます。

私の場合も、応募した企業のうち書類選考を通過できたのは一部でした。「公務員=ビジネス経験なし」と見なされるケースは少なくなく、この現実は事前に知っておくべきです。

「もったいない」と言う人の正体──その言葉は誰のためか?

ここまで読んで「やっぱり辞めない方がいいのかも」と感じたかもしれません。ですが、もう一歩だけ踏み込んで考えてみてください。あなたに「もったいない」と言っている人たちは、いったい誰の人生を心配しているのでしょうか。

親・親戚が反対する理由は「あなたへの愛情」|でも時代が違う

親御さんが反対するのは、あなたのことが心配だからです。それは間違いなく愛情です。

ですが、親世代が「公務員=最良の選択」と信じた時代と、今とでは前提が大きく異なります。終身雇用が当たり前だった時代、転職そのものが「根性なし」の烙印を押された時代の価値観で、今のあなたの選択を判断するのは、少し無理があるかもしれません。

反対されたからといって、親の意見を無視する必要はありません。ですが、「親が安心するための人生」と「自分が納得できる人生」は、必ずしも同じではないことは心に留めておいてください。

配偶者が反対する理由は「生活防衛本能」|感情論では絶対に勝てない

妻や夫が転職に反対するのは、家族の生活を守りたいからです。住宅ローン、子どもの教育費、日々の生活費。これらがある以上、「年収が下がるかもしれない」という話は、パートナーにとって脅威以外の何ものでもありません。

ここで大切なのは、「やりたいことがあるんだ!」という情熱だけでは、パートナーの不安は絶対に解消されないということです。必要なのは、具体的な数字と計画。この点については、後のセクションで詳しくお話しします。

同僚・上司が引き止める理由は「自分の選択を否定されたくない」から

「もったいないよ、せっかくここまで来たのに」と言ってくれる同僚や上司。その言葉に嘘はないでしょう。ですが、一歩引いて考えると、彼らにも「同じ閉塞感を感じているけれど、自分は辞めないと決めた人」が少なくありません。

あなたが辞めることで、「自分がここに残っている選択は正しかったのか?」という問いが生まれてしまう。無意識のうちに、自分の選択を守るために引き止めているケースは、残念ながらあります。

「もったいない」と言われて揺らぐなら、まだ辞め時ではないかもしれない

ここまで読んで、「それでも周囲の言葉が気になる……」と感じたとしたら、それは恥ずかしいことではありません。

むしろ、揺らぐのは当然です。大切なのは「何に」揺らいでいるのかを見つめること。「年収が下がるのが怖い」のか、「自分に自信がないから不安」なのか、「そもそも転職して何がしたいのかが明確でない」のか。

もし周囲の一言で簡単に気持ちが変わるなら、それは転職理由がまだ十分に言語化できていないサインかもしれません。その場合は、無理に動く必要はありません。「今は辞め時ではない」という判断もまた、立派な決断です。

15年勤めた市役所を辞めるまで──「もったいない」を超えた3つの転機

ここからは、私自身の話をさせてください。「もったいない」の6つの理由がすべて事実だと分かった上で、それでも私が退職を決断した経緯と、その後に待っていた現実をお話しします。

転機①:管理職の背中を見て「この先に自分の未来はない」と確信した日

市役所での15年間、私はいくつかの部署を経験しました。保険年金課、総務課、教育委員会。異動のたびにゼロからのスタート。ようやく仕事を覚えた頃に、また別の部署へ。

転機になったのは、ある管理職の日常を間近で見た時でした。その方は、朝から晩まで部下のトラブル処理に追われ、議会対応の資料づくりで休日出勤し、板挟みの調整に心身をすり減らしていました。

「あと20年以上、あの椅子に向かって登り続けるのか」

そう想像した瞬間、足元が崩れるような感覚がありました。自分のキャリアの延長線上に、なりたい自分がいない。この気づきが、最初の転機でした。

(関連記事)「公務員=安定」という考えが実はリスクな理由

転機②:「市役所の〇〇さん」以外の自分が、どこにもいなかった

ある日、ふと思ったのです。名刺から「〇〇市役所」という肩書を外した時、自分には何が残るのだろう、と。

同年代の友人が「プロジェクトマネジメント」や「マーケティング戦略」の話をしている時、私が話せるのは「庁内の決裁フロー」や「補助金の交付要綱」など。別にそれが悪いわけではありません。ですが、「市役所の外では、自分は何者でもない」という事実に気づいた時、強烈な焦りを感じました。

「このまま組織の看板に守られ続けて、自分の足で立つ力を完全に失ってしまう前に、動かなければ」。これが、2つ目の転機です。

転機③:子どもに「お父さんの仕事って何?」と聞かれて、答えに詰まった

決定的だったのは、子どもの何気ない一言でした。

「お父さんのお仕事って、何してるの?」

3歳の子どもに、市役所の仕事を分かりやすく説明する。それ自体は難しいことではありません。ですが、その時に私がためらったのは、「自分の仕事を誇らしげに語れない自分」に気づいてしまったからです。

家族がいるから辞められない、とずっと思っていました。ですが、この瞬間に気づいたのです。家族がいるからこそ、子どもに胸を張れる働き方をしたい、と。

年収200万ダウンの現実──転職直後の家計は本当に苦しかった

決意を固めて転職した先は、IT企業の事務職兼カスタマーサポート。ですが、現実は甘くありませんでした。

年収は約200万円ダウン。市役所時代に当たり前だったボーナスはほぼなくなり、各種手当も大幅に減りました。手取りで見ると、月々の収入が目に見えて少なくなったのです。

住宅ローンの支払いは変わらない。子どもの保育料も変わらない。ですが、入ってくるお金は確実に減っている。毎月の家計簿を見るたびに、胃がキリキリしたのを覚えています。

「本当にこれでよかったのか」と自問する夜が、何度もありました。

1社目(IT企業・事務職兼カスタマーサポート)は「民間社会のリハビリ」だった

1社目で最も苦労したのは、「仕事のスピード感」の違いでした。

市役所では、ミスなく丁寧に進めることが最優先。1つの文書に何人もの上司のハンコをもらい、慎重に合意を形成していく。それが正しいやり方でした。

ですが、民間企業では「完璧を目指して遅い」より「7割の完成度でもいいから、速く回す」ことが求められます。最初はこのギャップに適応できず、「遅い」「もっとスピードを上げてほしい」と言われるたびに自信を失いました。

一方で、市役所時代に鍛えた「理不尽なクレームへの対応力」は、カスタマーサポートの現場でも役に立ちました。感情的なお客さまの話を冷静に受け止め、事実ベースで解決策を提示する。この力は、市役所の窓口で何千回と繰り返してきたことそのものでした。

1社目は、正直に言えば「天職」とは呼べない仕事でした。ですが、「公務員の世界しか知らなかった自分が、民間企業で働くとはどういうことかを学ぶ期間」としては、かけがえのない経験でした。

(関連記事)子持ち・30代半ばで公務員を辞めた実体験

2社目(Webマーケター・完全在宅)で、ようやく「辞めてよかった」と思えた

1社目で民間の基礎体力を身につけた後、私はWebマーケターとして2社目に転職しました。

なぜWebマーケティングだったのか。それは、1社目で事務作業やカスタマーサポートを経験する中で、「情報を整理し、分かりやすく伝える」という作業に強い適性を感じたからです。市役所時代に培った「複雑な制度を住民向けに噛み砕いて説明する力」や「正確な文書を素早く作成する力」は、Webマーケティングの「コンテンツを構造的に設計する力」とつながっていました。

現在は完全在宅勤務で働いています。通勤時間はゼロ。子どもの保育園の送り迎えも自分でできるようになりました。市役所時代は繁忙期に連日残業で、子どもが寝た後にしか帰れない日が続いていたことを思うと、働き方は劇的に変わりました。

年収も、1社目の頃に比べれば着実に回復しています。公務員時代の水準にはまだ届いていない部分もありますが、副業が可能な環境になったことで、収入の選択肢自体が広がりました。

それでも「公務員に戻りたい」と思ったことは一度もない

年収200万ダウン、カルチャーショック、「自分は通用しないのかもしれない」という孤独感。すべてを経験した上でいま断言できるのは、「公務員に戻りたい」と思ったことは、ただの一度もないということです。

誤解のないように言えば、今の生活が完璧なわけではありません。民間には民間の大変さがあります。ですが、「自分で選んだ道を、自分の足で歩いている」という感覚は、市役所にいた頃には得られなかったものです。

それは安定とは違う種類の安心感であり、私にとっては年収以上に価値のあるものでした。

公務員から転職して分かったメリット5つ・デメリット5つ

ここからは、経験者として忖度なしでメリットとデメリットを並べます。良いことだけを語るつもりはありません。

【メリット①】成果が正当に評価され、自己肯定感が回復した

公務員の年功序列には安心感がある反面、「頑張っても頑張らなくても、ほとんど給料は同じ」という虚しさが常につきまとっていました。民間に来てからは、自分の仕事の成果が直接的に評価される環境に変わりました。「あなたのおかげで数字が伸びた」と言われた時の充実感は、市役所では味わえなかったものです。

【メリット②】在宅勤務・副業OK──「働き方の選択肢」が一気に広がった

公務員時代は毎日決まった時間に出勤し、原則として副業は禁止。転職後は、完全在宅勤務が可能になり、副業もOKの環境になりました。通勤に使っていた往復の時間がゼロになり、その時間を家族と過ごしたり、スキルアップに使えるようになったのは大きな変化です。

【メリット③】「個人のスキル」が積み上がる感覚は、安定とは別の安心感

市役所にいた頃は、「この組織を出たら何も残らないのではないか」という不安が常にありました。今は、日々の業務を通じて市場で評価されるスキルが積み上がっていく実感があります。転職サイトに登録しているだけでスカウトが届くようになった時、「自分にも市場価値があるんだ」と素直に安心しました。

(関連記事)公務員を辞めてよかったと感じた3つのリアルな理由

【メリット④】人間関係を「自分で選べる」環境になった

市役所の人間関係は「異動ガチャ」です。苦手な上司や合わない同僚がいても、異動するまでの数年間、耐えるしかありませんでした。民間企業でも人間関係の問題はありますが、「合わなければ自分から環境を変えられる」という選択肢があること自体が、精神的な安定につながっています。

【メリット⑤】残業が「自分でコントロールできるもの」に変わった

市役所時代の残業は、自分ではコントロールできない性質のものが多かったです。突発的な市民からの問い合わせ、議会前の資料準備、災害時の対応など。現在の仕事では、業務量を自分でマネジメントできるため、「今日は早めに切り上げて子どもと遊ぶ」という判断が自分でできます。

【デメリット①】年収ダウンは覚悟が必要

これは何度でも強調します。私の場合、最初の転職で年収は約200万円下がりました。特に初年度は本当に苦しかった。住宅ローンの支払いは変わらない中で手取りが減るのは、想像以上に精神的な負担です。もちろん、口座残高もどんどん減っていきました。

【デメリット②】「公務員」の看板が消えた瞬間、社会的信用は確実に下がる

親戚の集まりで「今は何をしているの?」と聞かれた時、「IT企業で……」と答える時の空気の変化。「市役所の職員」だった時とは、明らかに反応が違います。この目に見えない「信用の低下」は、じわじわとメンタルに効いてきます。

【デメリット③】公務員には基本的に戻れない──片道切符の覚悟

公務員試験を再度受験すれば、理論上は戻ることも可能です。ですが、年齢制限や実務経験のブランクを考えると、現実的にはかなり厳しい。「ダメだったら戻ればいい」というセーフティネットがないことは、覚悟しておく必要があります。

【デメリット④】「成果を出さなければ居場所がない」というプレッシャー

公務員は、言い方を選ばずに言えば「いるだけで給料がもらえる」環境です。もちろん、皆さん一生懸命働いていますが、構造としてはということです。民間では、成果が出なければ評価が下がり、場合によっては居場所がなくなります。このプレッシャーが心地よい緊張感になるか、ストレスになるかは、人によって分かれます。

【デメリット⑤】「思っていたのと違う」──転職先のミスマッチは普通に起こる

私自身、1社目は率直に言えばミスマッチでした。仕事内容が想像と違った部分もありましたし、「この仕事を一生続けたいか」と聞かれれば、答えはノーでした。

ですが、これは失敗ではなく「プロセス」だったと今は思っています。1社目で民間の基礎を身につけたからこそ、2社目で自分に合った仕事にたどり着けた。「転職=ゴール」ではなく「転職=新しいスタート地点」であるという認識は、持っておいた方がいいです。

あなたは辞めるべき?残るべき?|後悔しないための判断チェックリスト

メリットもデメリットも理解した上で、最も大切なのは「自分の場合はどうなのか」を見極めることです。以下のチェックリストで、自分の状況を整理してみてください。

「転職した方がいい人」に当てはまる5つのサイン

以下に3つ以上当てはまるなら、まず転職活動だけでも始めてみる価値はあると思います。

  • 不満の原因が「特定の上司や部署」ではなく「公務員という働き方そのもの」にある
  • 「このまま定年まで」と想像した時に、希望よりも閉塞感の方が大きい ←私はこれが1番です。
  • 「組織の看板ではなく、自分の名前で評価される人間になりたい」という欲求がある
  • 年収が一時的に下がっても、1〜2年は耐えられるだけの家計上の余裕がある(または作れる)
  • 「転職活動をしてみること」自体に、大きな抵抗感がない

「辞めない方がいい人」に当てはまる5つのサイン

逆に、以下に3つ以上当てはまるなら、今は無理に動かず「現在の環境の中でできることを探す」方が賢明かもしれません。

  • 今の不満が「異動」によって解決する可能性が十分にある
  • 「なぜ辞めたいのか」を聞かれて、「なんとなく嫌」以上の理由を言語化できない
  • 住宅ローンや教育費の支出が大きく、年収ダウンに1年すら耐えられない
  • 安定した給与・福利厚生に対して、実は心の底では満足している
  • 公務員以外で「これをやりたい」という具体的なビジョンが見えていない

最も危険なのは「辞めるか・残るか」で悩み続けて何もしないこと

私が一番伝えたいのは、「辞めるか、残るか」で悩む必要は、今はないということです。

「転職活動」と「転職」は全く別物です。転職活動は、職務経歴書を書き、エージェントと話し、面接を受けること。今の仕事を続けながらできますし、お金もかかりません。

内定が出てから「辞めるか、残るか」を考えればいい。内定が出なかったら、「今の自分には市役所が最善の環境だ」と、納得した上で残ればいい。

どちらに転んでも、「外の世界を見た上で判断した」という事実は、あなたの中に残ります。最もリスクが高いのは、悩み続けて何もしないまま、40代を迎えてしまうことです。

(関連記事)転職を後悔しないための自己診断チェックリスト

年収ダウンを最小限に抑える「家族を説得するためのお金の話」

転職を考える上で、最大の壁はやはり「お金」です。特に住宅ローンや子どもの教育費を抱えている場合、パートナーの理解を得るためには、感情ではなく「数字」で語る必要があります。

公務員と民間の「手取り」を正しく比較する──額面年収だけでは見誤る

公務員の給与には、額面に表れにくい恩恵が多くあります。共済組合の保険料率は民間の社会保険と異なりますし、地域手当、扶養手当、住居手当などの各種手当も手厚い。退職手当の積み立ても、在職中は見えにくい「隠れた収入」です。

転職先から提示された「年収400万円」と、公務員としての「年収550万円」を額面だけで比較すると、実態を見誤ります。手取りベースで、社会保険料の違いや手当の有無まで含めて計算した上で、初めて正確な比較ができます。

「3年で追いつき、5年で追い越す」は本当か?──昇給カーブの現実

公務員の昇給は緩やかですが確実。民間の昇給は変動幅が大きい代わりに、スキル次第で上振れの可能性がある。これが一般的に言われていることです。

正直に言うと、「3年で公務員時代の年収に追いつく」と断言するのは無責任です。業界、職種、本人の努力と適性、そして運。さまざまな要素が絡み合います。

私の場合、1社目(事務職・カスタマーサポート)の段階では、公務員時代の年収には程遠い状態でした。2社目(Webマーケター)に転職してからは着実に回復しており、副業収入も含めると生活は安定してきています。ですが、正直なところ、福利厚生などを含めた公務員時代の年収水準に完全に戻ったとは言い切れません。

大切なのは、「将来的に追いつく可能性があるか」を冷静に見極めることと、追いつくまでの期間を家計的に耐えられるかを事前にシミュレーションしておくことです。

(関連記事)年収200万ダウンを乗り切る家族への説得と防衛計画

住宅ローンがあるなら「転職前」にやるべき3つのこと

住宅ローンを抱えた状態での転職には、事前準備が不可欠です。

1つ目は、公務員の信用があるうちにローンの借り換えを検討すること。転職後は借り換え審査が厳しくなる可能性があるため、有利な条件で借り換えできるタイミングを逃さないようにしましょう。

2つ目は、固定費の徹底見直し。保険、通信費、サブスクリプション。月2〜3万円のコスト削減ができれば、年収ダウンのダメージをかなり吸収できます。

3つ目は、生活費の最低6ヶ月分を貯蓄として確保しておくこと。これは転職直後の精神的な安定に直結します。「最悪、半年は耐えられる」という安全網があるだけで、焦りが大幅に軽減されます。

「副業OK」の民間企業を選べば、年収ダウンは副業でカバーできる

公務員は原則として副業が禁止されています。ですが、民間企業には副業を認めている会社が増えています。転職先を選ぶ際に「副業OK」を条件に入れるだけで、収入面のリスクヘッジが可能になります。

公務員時代に培った文書作成力や事務処理能力は、Webライティングや資料作成代行、事務代行などの副業ですぐに活きます。月3〜5万円の副業収入があれば、年収ダウン分の大部分をカバーできる計算です。「本業で学び、副業で稼ぐ」という二刀流は、公務員時代には不可能だった戦略です。

公務員からの転職で後悔しないための実践ステップ

ここまでの内容を踏まえて、「実際に何から始めればいいのか」を具体的に整理します。

ステップ①:在職中に「なぜ辞めたいのか」を紙に書き出す

転職の第一歩は、エージェントに登録することでも、求人を探すことでもありません。まず、白い紙を1枚用意して、「今の仕事で不満に感じていること」と「転職して叶えたいこと」を、思いつくままに書き出してみてください。

体裁は気にしなくて構いません。大事なのは、自分の中のモヤモヤを「文字」にして外に出すこと。言語化できた不満は対処できますが、言語化できないままの不満は、いつまでも霧のように心を覆い続けます。

ステップ②:職務経歴書は「何をしたか」ではなく「どう工夫したか」で書く

多くの公務員が書く職務経歴書は、「〇〇課にて窓口業務を担当」「予算管理業務に従事」といった配属先の説明だけで終わっています。これでは、民間企業の採用担当者には響きません。

求められているのは、「どんな課題に対して、どう工夫し、どんな結果につなげたか」です。たとえば、「年間〇〇件のクレーム対応を通じて、対応フローのマニュアルを整備し、処理時間の短縮に貢献した」。こう書くだけで、印象は大きく変わります。嘘をつく必要はありません。視点と言葉を変えるだけです。

ステップ③:転職エージェントは「相性」で選ぶ|合わなければ変えていい

転職エージェントは、1社に絞る必要はありません。2〜3社に登録して、担当者との相性を比較してください。

大切なのは、「公務員の経験を正当に理解してくれるかどうか」です。「公務員?ちょっと難しいですね」と最初から塩対応のエージェントに当たったら、遠慮なく担当者を変えてもらうか、別のエージェントに切り替えてください。あなたの経験を「民間の言葉」に翻訳して、企業に売り込んでくれる担当者を見つけることが生命線です。

ステップ④:面接で「なぜ公務員を辞めるのか」と聞かれた時の答え方

面接では、ほぼ確実に聞かれるのが「なぜ安定した公務員を辞めるのですか?」という質問です。

ここで「人間関係が嫌だった」「閉塞感があった」とネガティブな理由を正直に述べるのは得策ではありません。嘘をつく必要はありませんが、ポジティブな表現に転換する工夫は必要です。

たとえば、「公務員として培った調整力や正確な事務処理能力を活かしつつ、より成果が可視化される環境で自分の力を試したい」といった形です。「逃げ」ではなく「挑戦」として伝わる言い方を、事前に準備しておきましょう。

ステップ⑤:内定が出てから「辞めるか残るか」を決める

繰り返しになりますが、「転職活動」と「転職」は別物です。

在職中に転職活動を行い、内定を獲得する。その内定の条件(年収、仕事内容、働き方)と、現在の公務員としての待遇を比較する。その上で、「転職する」か「今の仕事を続ける」かを判断する。

この順番を間違えて、先に辞めてしまう必要はまったくありません。内定という「選択肢」を持った状態で悩む方が、今の「選択肢がない」状態で悩むよりも、はるかに前向きで建設的です。

(関連記事)後悔を乗り越えるための5つの生存戦略

【Q&A】公務員からの転職でよくある疑問に経験者が回答

最後に、私自身がよく聞かれる質問にまとめてお答えします。

Q. 公務員は失業保険がもらえないって本当?

本当です。公務員は雇用保険に加入していないため、退職しても失業保険(雇用保険の基本手当)は受給できません。ただし、退職手当がその代替的な役割を果たす仕組みになっています。そもそも、在職中に転職先を決めてしまえば、失業状態にならないため、この問題自体が発生しません。

Q. 公務員を辞めたら退職金はどうなる?

勤続年数に応じた退職手当が支給されます。金額は勤続年数、退職理由(自己都合か否か)、給料月額などによって異なります。一般的に、自己都合退職は定年退職に比べて支給率が低くなります。具体的な金額は自治体によって異なるため、人事課や共済組合に事前に確認しておくことをおすすめします。

Q. 30代後半でも未経験転職は可能?

可能ですが、選べる職種は限られます。30代半ばまでは「ポテンシャル採用」として未経験でも受け入れてくれる企業がありますが、30代後半になるとそのハードルは確実に上がります。私自身は35歳で転職しましたが、体感としてはギリギリのタイミングだったと感じています。

Q. 公務員からの転職先でおすすめの業界・職種は?

公務員経験との親和性が高いのは、事務系職種(総務・人事・経理)、カスタマーサポート、IT企業の管理部門などです。私の場合は、1社目がIT企業の事務職兼カスタマーサポート、2社目がWebマーケターです。いきなり「理想の仕事」に就けなくても、1社目で民間の経験を積み、2社目でステップアップするという段階的なキャリア構築も十分に現実的な選択肢です。

Q. 転職活動は在職中にバレない?

注意すれば、基本的にバレません。私が気をつけていたのは、面接の日程調整に有給休暇を使うこと(まとめて取りすぎないよう分散させる)、SNSに転職活動に関する投稿を一切しないこと、そして転職エージェント経由で応募し、自分の名前や現在の勤務先が企業側に伝わるタイミングをコントロールすることでした。

Q. 転職に有利な資格はある?取ってから辞めるべき?

資格よりも実務経験の方が、転職市場では圧倒的に評価されます。ただし、ITパスポートや簿記2級などは「ビジネスの基礎知識がある」ことの証明にはなるため、書類選考で多少のプラスになる可能性はあります。

ただし、「資格を取ってから転職しよう」と考えると、それが先延ばしの口実になりがちです。資格取得と転職活動は並行して進めるのが現実的です。

まとめ──「もったいない」の本当の意味は、自分で決めていい

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

あらためて伝えたいのは、公務員の安定は本物であり、「もったいない」と思う感覚は正しいということです。それを手放すリスクは確かに存在しますし、この記事は「今すぐ辞めろ」と煽るために書いたものではありません。

ですが同時に、「選択肢がないまま定年を迎えること」や「自分の市場価値を知らないまま組織にしがみつくこと」も、それはそれでもったいないと私は思っています。

年収200万ダウンを経験し、カルチャーショックに苦しみ、2回の転職を経て今の働き方にたどり着いた私が断言できるのは、たった1つのことだけです。

「転職」にはリスクがある。ですが、「転職活動」にはリスクがない。

もし今、あなたの心の中に「このままでいいのか」という問いがあるなら、その問いを無視しないでください。まずは転職サイトに登録して、自分の経歴でどんな求人が届くかを見てみる。それだけで構いません。

外の世界を覗いてみて、「やっぱり公務員が一番いい」と思えたなら、それは立派な結論です。「もっと先を見てみたい」と思えたなら、その時はもう少しだけ、歩みを進めてみてください。

「もったいない」の本当の意味を決めるのは、あなた自身です。

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元公務員 Webマーケター
sawada

元公務員Webマーケター
大阪府の某市役所に15年勤務後、35歳でIT企業へ転職。最初の転職で年収200万円ダウンを経験。事務職兼カスタマーサポートを経て、現在は完全在宅勤務のWebマーケターとして働いている。このブログでは、公務員から民間への転職について、年収ダウンの現実も含めた実体験を発信中。

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