転職して2ヶ月目の夜、私は自宅の机で求人サイトを開いていました。市役所を辞めて入った1社目のIT企業で、思っていた仕事と現実のギャップに耐えられなくなっていたからです。
結論から言えば、私はこの会社を6ヶ月で辞めました。早期離職を経験した私が、当時知っておきたかった判断の手順をお伝えします。
この記事を書いた人
市役所に15年勤務後、35歳でIT企業へ転職。年収200万円ダウン、1社目6ヶ月退職を経て、現在は在宅Webマーケターとして勤務しています。
公務員時代の経験と2回の転職体験をもとに、同じ悩みを持つ方へ判断材料をお届けしています。
当ブログでは、公務員からの転職に関する体験談や実践的な情報を発信しています。ご質問やご相談があれば、お気軽にお問い合わせページよりご連絡ください。
転職して半年以内に「辞めたい」が頭をよぎるのは珍しくありません
転職直後に辞めたくなるのは、能力の問題ではなく適応途中で起きる自然な反応です。私自身、入社して数週間で「ここは違ったかもしれない」と感じ始めました。
同じ局面に立つ人は決して少なくないと、後になって知りました。
私が入社2ヶ月で求人サイトを開いた夜のこと
2022年5月に市役所を辞め、私が選んだ1社目はIT企業の事務職兼カスタマーサポートでした。市役所での15年間とはまったく違う環境に身を置きたかったからです。
ところが入社してみると、覚えるべき業務システムが多く、顧客対応のスピード感にもついていけませんでした。
夜になると不安が押し寄せ、寝つけない日が続きました。「辞めたい」という感情が最初に出てくるのは、たいてい平日の夜か日曜の夜です。
私の場合も、翌朝の出社を考えると気が重くなる時間帯に、決まって退職を考えていました。
「辞めたい」と思った日の私の頭の中を再現します
あの夜の私の頭の中を、できるだけ正直に書いてみます。机の上にはまだ片付けていない夕食の食器があり、画面には半分入力したままの求人応募フォームが開いていました。
「明日も同じ電話を受けるのか」という思いと、「ここで逃げたら市役所を辞めた意味がない」という思いが、同時に押し寄せてきました。
そのとき私は、辞めたい理由を一つも紙に書き出していませんでした。頭の中だけで考えていると、不満は実際の何倍にも膨らんで見えるものです。
具体的に「何が」「どの場面で」つらいのかを言葉にしないまま、ただ「もう無理だ」という塊だけが大きくなっていました。後から振り返ると、この夜にやるべきだったのは応募ボタンを押すことではなく、つらさを一つずつ書き出すことでした。
私は当時、こうした感情の整理の仕方を知りませんでした。だからこそ、同じ夜を過ごしている方には、まず一度だけでも紙とペンを手に取ってほしいと思っています。
画面を閉じて10分だけ書き出すと、見える景色が変わります。
公務員から民間に移った人が早期に揺れる典型パターン
公務員から民間に転職した人が、転職直後に揺れるパターンには共通点があります。私が当時感じたものと、後から相談を受けて知ったものを整理します。
- 仕事の進め方が前例主義から成果主義へ変わり、判断基準が分からなくなる
- 数字や納期の重みが想像以上で、丁寧さより速さを求められて戸惑う
- 年下の上司や先輩に教わる場面が増え、プライドとの折り合いに苦しむ
- 年収が下がった現実が給与明細で可視化され、転職そのものを疑い始める
- 公務員時代の人間関係や安定を、無意識に美化して比べてしまう
これらは「合っていない証拠」ではなく、環境が変わった直後なら誰にでも起きる適応のプロセスです。私はこの区別ができず、揺れをそのまま「失敗」と受け取ってしまいました。
民間の「スピード」に私が一番つまずいた理由
数あるギャップの中で、私が最もつまずいたのは仕事のスピードでした。市役所では、一つの判断に上司の決裁や前例の確認が入り、慎重さが評価されていました。
ところが民間の現場では、顧客を待たせないことが何より優先され、その場で答えを返す力が求められました。
最初の頃、私は問い合わせ一件に時間をかけすぎて、先輩から「もっと早く一次回答を返して」と何度も言われました。丁寧にやろうとするほど遅くなり、遅くなるほど自分を責めるという悪循環でした。
公務員時代に評価された「慎重さ」が、民間では「遅さ」と受け取られる場面があると気づくまで、私はずいぶん時間がかかりました。
ただ、これは私の能力が低いという話ではありませんでした。評価される行動の基準そのものが、職場ごとに違っていただけでした。
この事実を知っていれば、あの夜の自己嫌悪は少し軽くなっていたはずです。価値観の物差しが入れ替わる時期だと理解するだけでも、揺れ方は変わります。
「40代になったら逃げられない」という焦りの正体
転職直後の不安には、もう一つ別の感情が混ざります。30代の公務員だった私には、「40代になったら身動きが取れなくなる」という焦りが常にありました。
転職した今も、その焦りが消えたわけではありませんでした。
ところが、この焦りが転職直後に再燃すると、判断を急がせます。焦りからの決断は、辞める方向にも残る方向にも、冷静さを奪う点で危険です。
当時の私は、焦りで動いている自分にすら気づいていませんでした。
焦りを抑えるために私が後から覚えた小さな習慣
焦りは消そうとしても簡単には消えません。そこで私が後から覚えたのは、焦りを消すのではなく、いったん横に置く習慣です。
具体的には、「この判断は今日決めなくても、来週でも結果は変わらないか」と自分に問うやり方でした。
退職という大きな決断ほど、一晩や二晩で結論を出す必要はほとんどありません。焦りが強い日は、決めるのではなく「決める日を決める」だけにとどめると、勢いでの退職を防げます。
私はこのひと工夫を当時知らず、感情の波が高い夜に求人へ応募しそうになっていました。
たとえば「今週末まではこのまま働き、土曜の昼に冷静な頭でもう一度考える」と区切るだけでも違います。締め切りを自分で設けると、夜中の衝動と、昼間の判断を分けて扱えるようになります。
私にとって、この切り分けは後からとても役に立ちました。
勢いで辞める前に確認したい3つの判断軸
辞めるかどうかを決める前に、まず「今の苦しさが慣れで消えるものか」を切り分けることが最優先です。私はこの切り分けをせずに辞めてしまい、後で説明の難しさに直面しました。
判断軸を3つに絞ってお伝えします。
判断軸1:その不満は「時間」で解決するか
最初に確認したいのは、今の不満が時間の経過で解決する種類のものかどうかです。業務に慣れていない段階の苦しさは、数ヶ月で軽くなることが多いと言われています。
私の場合、業務システムへの不慣れは確かに時間で改善する余地がありました。一方で、職種そのものへの違和感は時間では消えにくいものでした。
下の表は、私が後から整理した「時間で解決しやすいもの」と「しにくいもの」の区別です。
| 種類 | 時間で解決しやすい | 時間で解決しにくい |
|---|---|---|
| 業務スキル | システム操作・専門用語・手順 | 適性が根本的に合わない職種 |
| 人間関係 | 新人ゆえの距離感・遠慮 | ハラスメントが常態化した環境 |
| 待遇 | 試用期間中の限定的な条件 | 求人と大きく異なる労働条件 |
| 働き方 | 通勤や生活リズムの慣れ | 心身の健康を明確に損なう負荷 |
右側の項目に当てはまるなら、我慢ではなく早めの撤退を検討する場面です。左側が中心なら、もう少し様子を見る価値があります。
スキル不足の苦しさと適性の不一致を見分ける方法
時間で解決するかどうかを見分けるとき、私がつまずいたのは「スキル不足」と「適性の不一致」の区別でした。この二つは似て見えますが、辞めるべきかどうかの結論が正反対になります。
見分ける目安として、私は次の問いを使うようにしました。「同じ仕事を半年続けて、今より上達した自分を想像できるか」という問いです。
想像できるなら、それは時間で解決するスキル不足の可能性が高いです。逆に、上達した自分すら思い描けず、そもそもその仕事に魅力を感じないなら、適性の不一致を疑う場面でした。
私の場合、システム操作は「半年後にはもっと速くできているはず」と想像できました。ところがカスタマーサポートという仕事そのものには、上達した先のやりがいを感じられませんでした。
この問いを当時持っていれば、もっと早く落ち着いて整理できたはずです。
- スキル不足のサイン:やり方さえ分かれば前に進める感覚がある
- スキル不足のサイン:先輩のやり方を見て「自分もそうなりたい」と思える
- 適性の不一致のサイン:上達した自分を想像してもうれしくない
- 適性の不一致のサイン:仕事の目的そのものに共感できない
判断軸2:心身の健康に赤信号が出ていないか
次に確認すべきは、心身の健康に明確な異常が出ていないかです。これは他の何より優先される軸だと、私は考えています。
眠れない、食欲が落ちた、朝になると体が動かないといった状態が続く場合は、判断軸の議論より先に距離を取る必要があります。健康を損なってまで続けるべき仕事はありません。
厚生労働省も働く人のメンタルヘルス情報を公開しています。
(参考)厚生労働省:公式サイト
私の場合は不眠が続いていましたが、限界の一歩手前で踏みとどまれました。赤信号が出ているなら、判断軸の優劣を考える前に、まず休むか離れるかを選んでください。
私が見落としていた「黄信号」のサイン
赤信号は分かりやすいのですが、私が見落としていたのは、その手前の「黄信号」でした。完全に動けなくなる前に、体は小さなサインを出していたのに、私はそれを「気のせい」で片付けていました。
たとえば、休日になっても仕事のことが頭から離れず、好きだった散歩にも気が向かなくなっていました。日曜の夕方になると胸のあたりが重くなり、ため息が増えていました。
こうした黄信号の段階で立ち止まれると、赤信号まで進む前に手を打てます。当時の私は、ここを「みんな同じだろう」と軽く見ていました。
黄信号は人によって出方が違います。私の場合は不眠とため息でしたが、肩こりや頭痛、急に涙が出る、笑えなくなるといった形で出る人もいます。
大切なのは、いつもの自分との小さな違いに気づくことでした。違和感を覚えたら、無理に頑張る前に一度休む選択肢を、自分に許してあげてください。
判断軸3:辞めた後の具体的な道筋が描けているか
3つ目の軸は、辞めた後に何をするのか、具体的な道筋を描けているかです。これは私が最も甘く見ていた点でした。
当時の私は「とにかく今の状況から抜け出したい」という気持ちだけで、次の仕事のイメージが曖昧なまま退職を考えていました。次の表は、辞める前に最低限言語化しておきたい項目です。
| 確認項目 | 私が当時答えられたか | 望ましい状態 |
|---|---|---|
| 次に就きたい職種 | 曖昧だった | 具体的に1〜2職種に絞れている |
| 必要な生活費の最低ライン | 把握していた | 数ヶ月分の蓄えと月額を把握 |
| 家族の理解 | 得ていた | 事前に相談し合意がある |
| 退職理由の説明 | 用意していなかった | 事実ベースで一貫して語れる |
辞めること自体が悪いのではなく、準備のない退職が次の選択肢を狭めることが問題なのです。
「辞めたい理由」を紙に書き出すと見えてくること
道筋を描くために、私が後から有効だと感じたのは、辞めたい理由を紙に書き出す作業でした。頭の中だけで考えていると、不満も不安も区別なく一つの塊になってしまいます。
書き出すと、それが「変えられること」と「変えられないこと」に分かれて見えてきます。
私の場合、書き出してみると「電話対応の緊張」「年下の先輩への遠慮」「年収の落ち込み」が並びました。このうち、電話対応の緊張は慣れで減る可能性があり、先輩への遠慮も時間で和らぐものでした。
書き出すと、辞めなければ解決しない問題は意外と少ないと気づける場合があります。
それでも残った「職種そのものへの違和感」が、私にとって本当の退職理由でした。紙に書く作業は、退職を勧めるためではなく、本当の理由を一つに絞り込むための作業です。
本当の理由がはっきりすれば、辞めるにしても残るにしても、その後の説明がぶれなくなります。
私は当時、この不安を誰にも相談できず、一人で抱え込んでいました。職場の人にも家族にも、弱音を吐くのが申し訳ない気がしていたからです。
今になって思えば、利害関係のない第三者に話を整理してもらうだけでも、判断はずいぶん変わったはずでした。キャリアの悩みを専門家と整理したい方には、コーチングという選択肢もあります。
それでも辞めると決めた時の再転職の進め方
早期離職を決めたなら、次の転職活動は「在職中に動く」ことが何よりの基本です。私はここを守れず、退職してから動き始めて苦労しました。
同じ失敗を避けるための手順をお伝えします。
在職中に動き出すべき理由
私が1社目で次を探し始めた時、すでに退職を申し出た後でした。次が決まる前に辞めたため、収入の空白期間ができてしまいました。
転職活動には平均で3ヶ月ほどかかると言われています。収入が途切れた状態での活動は、焦りから条件を妥協させやすく、また同じ早期離職を招くリスクがあります。
在職中なら、給与を受け取りながら腰を据えて次を探せます。
- 収入が続くので、条件を冷静に比較できる
- 内定が出るまで現職に残れるため、空白期間を作らずに済む
- 不採用が続いても精神的に追い込まれにくい
- 退職日を内定の状況に合わせて調整しやすい
在職中の転職活動をどう時間で回したか
在職中に動くといっても、働きながら活動時間を作るのは簡単ではありません。私が反省を踏まえて考えた、現実的な時間の回し方を共有します。
やみくもに動くのではなく、平日と休日で役割を分けるのがコツでした。
平日は疲れて長い作業はできないので、通勤時間や昼休みに求人を眺めて気になるものを保存するだけにとどめます。本格的な書類作成や応募は、頭が動く休日の午前に回します。
「平日は情報収集、休日は手を動かす」と役割を分けると、消耗せずに活動を続けられます。
| 時間帯 | 向いている作業 | ねらい |
|---|---|---|
| 平日の通勤・昼休み | 求人の保存・比較メモ | 短時間で情報をためる |
| 平日の夜 | エージェントへの返信 | 連絡の取りこぼしを防ぐ |
| 休日の午前 | 書類作成・応募 | 集中力が要る作業に充てる |
| 休日の午後 | 面接の振り返り | 次の改善点を整理する |
この回し方なら、現職の業務に大きな支障を出さずに進められます。無理のないペースを保つことが、結局はいちばんの近道でした。
短期離職の職歴をどう説明するか
再転職で最大の関門は、短期離職の理由をどう説明するかです。私もここで悩みました。
採用担当者は、短期間で辞めた人に対して「またすぐ辞めるのではないか」という懸念を持ちます。これは自然な反応です。
隠そうとすると、かえって不信感につながります。私が意識したのは次の3点でした。
- 不満や愚痴ではなく、事実を淡々と述べる
- 早期離職から学んだことと、次にどう活かすかを添える
- 応募先でなら長く貢献できる根拠を、職種理解とともに示す
「前職が悪かった」ではなく「自分の見極めが足りなかった、だから今回はこう変える」という語り口に変えることが鍵です。私はこの伝え方に切り替えてから、面接の手応えが変わりました。
下の表は、避けたい説明と望ましい説明の対比です。
| 場面 | 避けたい説明 | 望ましい説明 |
|---|---|---|
| 退職理由 | 「人間関係が最悪で」 | 「職種の適性を見極め切れず、早期に方向修正した」 |
| 反省点 | 特になし、で済ます | 「事前の職務理解が浅かった」と具体化 |
| 次への意欲 | 「とにかく働きたい」 | 「この職種でこう貢献したい」と職務に紐づける |
面接で「またすぐ辞めない?」と聞かれた時の答え方
実際の面接では、短期離職について踏み込んだ質問を受ける場面があります。私が答え方を考えるうえで意識したのは、相手の不安に正面から向き合う姿勢を見せることでした。
質問をかわそうとするほど、相手の懸念は強まります。
私が用意した答えの骨組みは、三つの順番でできていました。まず、早期に辞めた事実を認めます。
次に、その経験から何を学んだかを具体的に述べます。最後に、応募先ではなぜ続けられると考えるのかを、職種理解に結びつけて話します。
「事実を認める」「学びを示す」「続けられる根拠を語る」という順番を守ると、誠実さと前向きさを同時に伝えられます。
たとえば私は、「前職では職務内容を深く調べずに飛び込んでしまい、適性とのずれに早く気づきました。今回は仕事の中身を事前に確認したうえで応募しています」という趣旨で答えるよう準備しました。
言い訳ではなく、再現性のある反省として語ることが大切でした。
公務員経験を再転職でどう棚卸しするか
短期離職であっても、その前の公務員経験は消えません。15年の市役所勤務で培った正確さや調整力は、説明の仕方しだいで強みになります。
私の場合、市役所での文書作成や住民対応の経験を、民間の言葉に翻訳して伝えるよう心がけました。たとえば「住民からの問い合わせ対応」を「多様な顧客への一次対応とクレーム調整」と言い換えるイメージです。
公務員からの転職に伴う不安をより広く整理したい方は、こちらの記事も参考になります。
(関連記事)公務員からの転職が不安な30代へ
公務員の経験を民間の言葉に言い換える具体例
経験の棚卸しでつまずきやすいのは、公務員時代の業務を民間の採用担当者に伝わる言葉へ翻訳する作業です。同じ仕事でも、言い方を変えるだけで受け取られ方がまったく変わります。
私が実際に意識した言い換えを、いくつか挙げてみます。
たとえば「予算の執行管理」は、民間では「コスト管理と進捗の数値把握」と言い換えると伝わりやすくなりました。「条例や規則に基づく事務」は「ルールに沿って正確に処理を進める力」と表現できます。
専門用語をそのまま使うのではなく、応募先の人が日常で使う言葉に置き換えると、経験の価値が正しく伝わります。
- 住民からの問い合わせ対応 → 多様な顧客への一次対応とクレーム調整
- 関係部署との調整業務 → 複数の立場をまとめる社内調整力
- 申請書類のチェック → ミスを見逃さない正確な確認作業
- 窓口での説明 → 専門的な内容をわかりやすく伝える力
こうして並べてみると、公務員時代の経験は決して無駄になっていないと分かります。私自身、棚卸しを通じて「自分には伝えられる強みがある」と思い直せました。
短期離職の負い目に押されすぎず、その前のキャリアにも目を向けてください。
一人で抱え込まず、第三者に整理してもらう価値
転職直後の「辞めたい」は、感情と事実が混ざって判断を曇らせるため、第三者の視点で整理する効果が大きいものです。私はこれを後から痛感しました。
当事者だけでは事実と感情を切り分けにくい
辞めたい気持ちが強い時、人は自分にとって不利な情報を見落としがちです。私も「今の職場のつらさ」ばかりに目が向き、「辞めた後のリスク」を冷静に見られませんでした。
当事者である以上、感情を完全に切り離すのは難しいものです。だからこそ、利害のない人に状況を言葉にして話すだけで、見えていなかった選択肢が浮かびます。
家族はもちろん、専門のキャリア相談を使う方法もあります。
私自身、もし当時にキャリアコーチングのような場で頭の中を整理できていたら、退職のタイミングや次の準備はもっと違っていたはずでした。迷っている段階で第三者と話すこと自体に価値があると、今では考えています。
話すと頭が整理されるのはなぜか
人に話すだけで頭が整理されるのには、理由があると私は感じています。話すためには、頭の中のもやもやを言葉にしなければなりません。
言葉にする過程そのものが、感情と事実を仕分ける作業になっているのです。
私の経験では、誰かに状況を説明していると、話している途中で自分の本音に気づくことがありました。「つらい」と言いながら、実は「期待していたのに裏切られた気がする」が本当の感情だった、というように、口に出して初めて見えてくるものがあります。
相手が特別な助言をしなくても、聞いてもらうだけで整理が進みました。
だからこそ、相談相手に求めるのは正解ではありません。否定せずに最後まで聞いてくれる相手であれば、それだけで十分に役立ちます。
私が一人で抱え込んでいた時間は、振り返るともったいなかったと感じています。一度声に出すだけで、ずいぶん楽になるものです。
家族への相談で景色が変わった経験
私が最初の転職で年収が200万円下がった時、正直に妻へ打ち明けました。すると妻は嫌な顔ひとつせず、私の挑戦を後押ししてくれました。
今でも感謝しています。
このとき気づいたのは、一人で抱え込んでいた不安の大半は、話してみると現実より大きく膨らんでいたということです。家族に相談することで、生活費の見通しや優先順位が具体的になりました。
- 話す前は「全部自分でなんとかしなければ」と思い込んでいた
- 話した後は、家計の前提を二人で共有できて視界が開けた
- 相談相手がいるだけで、決断の重さが半分になった感覚があった
家族に切り出しにくい時の伝え方
家族に相談すべきだと分かっていても、いざ切り出すのは勇気がいるものです。私も「心配をかけたくない」「情けないと思われたくない」という気持ちで、なかなか言い出せませんでした。
同じように切り出せずにいる方へ、私が後から考えた伝え方を共有します。
ポイントは、結論や決断を先に伝えないことでした。「辞めようと思う」と切り出すと、相手は驚いて反対から入りやすくなります。
そうではなく、「今こういうことで悩んでいる」と、答えではなく状況から話すと、相手も一緒に考える姿勢になりやすいです。私の場合も、悩みを共有する形で話したことで、妻が前向きに受け止めてくれました。
タイミングも大切でした。お互いに疲れている夜より、休日の落ち着いた時間のほうが、冷静に話せます。
家計に関わる話だからこそ、相手を「報告される側」ではなく「一緒に決める側」として巻き込むと、相談はうまくいきます。一人で結論を出してから伝えるより、ずっと建設的でした。
相談先を使い分ける考え方
相談先は一つに絞る必要はありません。私は内容によって相手を変えました。
| 相談したい内容 | 向いている相手 |
|---|---|
| 生活費・家計の前提 | 家族・配偶者 |
| 求人や業界の実情 | 転職エージェント |
| キャリアの方向性・自己理解 | キャリアコーチ・第三者 |
| 退職手続きや制度 | 勤務先の人事・公的窓口 |
目的に合わせて相談相手を選ぶと、それぞれから的確な助言を引き出せます。エージェントに人生相談をしても、コーチに求人を求めても、得られるものは限られます。
私が1社目を6ヶ月で辞めて、実際どうなったか
私は1社目を6ヶ月で辞め、結果として在宅Webマーケターという今の働き方にたどり着きました。良かった点も、今も残る後悔も、両方あります。
きれいごとではなく、正直に書きます。
良かったこと:早く方向修正できた
最大の良かった点は、合わないと感じた職種から早めに方向を変えられたことです。事務職兼カスタマーサポートという仕事は、私には向いていませんでした。
6ヶ月という期間で見切りをつけたことで、次にWebマーケティングという分野へ進む決断ができました。もし「短期離職になるのが怖い」という理由だけで1年、2年と続けていたら、合わない仕事に時間を費やしていたはずです。
早く動いたぶん、自分に合う方向を試す回数を増やせました。
2回目の転職で今の在宅Webマーケターの仕事に出会い、働き方も大きく変わりました。転職した結果を総括した内容は、別の記事に詳しくまとめています。
(関連記事)公務員から民間に転職した結果
6ヶ月という期間が「短すぎなかった」と思える理由
「6ヶ月で辞めて短すぎたのでは」と聞かれることがあります。けれども私は、この期間は短すぎなかったと考えています。
なぜなら、6ヶ月あれば、その仕事が時間で解決するものか、適性の不一致かを判断する材料はそろうからです。
最初の1、2ヶ月は誰でも不慣れで苦しいものです。その段階で辞めていたら、ただの早とちりだったかもしれません。
私は6ヶ月続けたことで、業務システムには慣れた一方、職種そのものへの違和感は消えないと確認できました。慣れても消えない違和感が残るかどうかを見極めるには、ある程度の期間が必要でした。
つまり、私の6ヶ月は「勢いで投げ出した期間」ではなく、「適性を確かめるために必要だった期間」でした。辞めるにしても、ある程度は続けてみて判断材料をそろえたという事実は、面接でも前向きに語れます。
短すぎる退職を避けつつ、長く我慢しすぎない。そのちょうどよい長さが、私にとっては6ヶ月でした。
今も残る後悔:準備不足での退職
一方で、今も残る後悔があります。それは、次を決めずに勢いで辞めてしまい、収入の空白期間を作ったことです。
退職してから転職活動を始めたため、貯蓄を取り崩しながらの活動になりました。焦りもありました。
在職中に動いていれば、もっと落ち着いて条件を比較できたはずでした。この点は、当時の自分に強く言い聞かせたい反省です。
- 後悔1:次の内定を得る前に退職を申し出てしまった
- 後悔2:短期離職の説明を、辞めてから慌てて準備した
- 後悔3:誰にも相談せず、一人で結論を出そうとした
空白期間が私の心に与えた影響
収入の空白がもたらしたのは、家計の不安だけではありませんでした。むしろ私を苦しめたのは、心への影響でした。
毎朝、行く場所がないという事実が、想像以上に気持ちを沈ませました。
働いていた頃は当たり前だった「今日やるべきこと」がなくなると、生活のリズムが崩れていきます。私は次第に昼まで起きられなくなり、応募書類に向かう気力も落ちていきました。
空白期間は時間の余裕を生むようでいて、実際には焦りと自己否定を強める時間になりやすいと、身をもって知りました。
だからこそ、繰り返し「在職中に動いてほしい」とお伝えしています。これは単なる効率の話ではなく、自分の心を守るための備えでもありました。
働きながらの転職活動は大変ですが、無職の不安に押しつぶされながら活動するよりは、はるかに健やかでいられます。私の後悔が、同じ轍を踏む人を一人でも減らせたらと願っています。
早期離職は「失敗」と決まったわけではない
私の経験から言えるのは、早期離職そのものが人生の失敗を意味するわけではないということです。問題は、辞め方と次の進め方にあります。
準備のない退職は確かに苦労を招きました。それでも、合わない職種を早く離れた判断は間違っていなかったと、今は思っています。
転職全体を振り返った後悔と納得の整理は、こちらの記事でも書いています。
(関連記事)公務員 転職 後悔の真実
まとめ:辞めるかどうかより、辞め方と次の準備が結果を分けます
転職してすぐ辞めたくなった時に大切なのは、「辞めるか残るか」を急いで決めることではなく、まず苦しさの正体を切り分け、辞めるなら準備を整えてから動くことです。
私は1社目を6ヶ月で辞めました。合わない職種から早く離れられた点は良かったと考えています。
一方で、次を決めずに辞めて収入の空白を作ったことは、今も残る後悔です。この両方が、私の早期離職の正直な結果でした。
転職直後の「辞めたい」は、能力が足りないからではなく、環境が変わった直後なら誰にでも起きる揺れです。その揺れの中で一人で抱え込まず、判断軸で状況を切り分け、必要なら第三者に整理してもらってください。
私自身の結論は、辞めるにしても残るにしても、感情だけで決めた選択は後で重くのしかかる、ということです。


