公務員から転職する時、最も気を使うのが退職理由の伝え方です。本音をそのまま言えば角が立ち、建前だけでは不誠実に感じる。
私は15年以上勤めた市役所を辞める時、退職理由を4パターンに書き分けて乗り切りました。本音・上司用・面接用・家族用という4つの型と、同僚20人以上の事例から見えた伝え方を書いていきます。
公務員が転職で辞める本当の理由TOP7
私が15年以上の勤務で同僚から直接聞いた退職理由と、自分が辞めた時の本音を総合すると、次の7つに集約されます。どれも複数の理由が絡み合っており、単独の理由で辞める人はほとんどいないというのが実感です。
| 順位 | 本当の理由 | 割合(体感) |
|---|---|---|
| 1位 | 成果が見えずやりがいを感じられない | 約30% |
| 2位 | 年功序列と昇進の遅さ | 約20% |
| 3位 | 人間関係・異動先のハズレ | 約15% |
| 4位 | 年収の伸びしろのなさ | 約10% |
| 5位 | スキルが身につかない焦り | 約10% |
| 6位 | 家庭の事情(結婚・転勤・介護) | 約10% |
| 7位 | 心身の不調・休職 | 約5% |
1位:成果が見えずやりがいを感じられない
最も多いのがこの理由だといわれています。公務員の仕事は「住民のため」という大義はありますが、個人の成果が数字で見えにくく、何を達成したのか自分でも説明しづらい構造になっています。
私自身、辞める一番の引き金はここでした。担当した施策が本当に住民の役に立ったのか、統計で確かめられる場面がほぼなく、年度末の評価面談でも「業務を滞りなく遂行した」という曖昧な評価で終わる年が続きました。
30代に入ると、自分が今年1年で何を成し遂げたのかを他人に説明できない状態が耐えがたくなり、民間の数字で評価される世界に惹かれるようになりました。
2位:年功序列と昇進の遅さ
実力より年次で昇進が決まる慣習は、実力志向の若手ほどストレスになります。同期でも昇進速度が大きく変わらないため、「何年経っても同じ」という閉塞感が積み上がります。
特に、目の前で明らかに力不足の先輩が役職で上にいる状況は、若手のモチベーションを静かに削っていく要因だと感じました。昇進の条件が勤続年数と上司の評価に強く依存するため、自分の努力で短縮できない構造も焦りを生みます。
3位:人間関係・異動先のハズレ
どの組織でもありますが、公務員は2〜3年ごとの異動で上司・同僚が強制的に入れ替わります。ハズレ異動で一気にメンタルを削られ、それが退職の引き金になる同僚を何人も見ました。
異動先の部署が自分の適性と合わないと、2〜3年間は転属希望も基本的に通らないため、逃げ場がない状態に陥ることも少なくありません。
4位:年収の伸びしろのなさ
初任給は低めで、年次とともに着実に上がりますが、天井が見えているのも事実です。家族が増える時期に、年収の上限を意識して外を向く人が増えます。
40代後半から50代の先輩の給与明細を知る機会があると、「自分の10年後の上限がこれか」と冷静になる瞬間が訪れるものです。住宅ローンや教育費の見通しを立てる時、この天井感が重くのしかかる世代は多いといわれています。
5位:スキルが身につかない焦り
異動が多く、一つの業務を深く掘れないため、「この役所の中でしか通用しないスキル」しか身につかないのではという不安を抱える若手が多くいました。民間企業のジョブ型雇用が広がるにつれ、専門性がないと市場価値が下がるという認識が強まり、30代半ばで退職を考え始める同僚が増えた印象があります。
6位:家庭の事情
結婚・配偶者の転勤・親の介護・子育てなど、ライフイベントに合わせて辞める人もいます。特に女性同僚は、結婚・出産のタイミングでキャリアを見直すケースが多い傾向にありました。
配偶者の転勤に帯同するため退職を選ぶ男性も近年増えており、家庭優先の退職は以前よりも受け入れられやすい空気になっていると感じます。
7位:心身の不調・休職
公務員はクレーム対応・議会対応・災害対応など、特有のストレス源があります。メンタルを削られて休職に入り、そのまま退職に至る事例も少なくないといわれています。
特に異動直後の3ヶ月〜半年は新業務の適応期間と重なり、休職に入るリスクが高いタイミングだと感じました。復職しても、休職前と同じ部署・同じ業務に戻るケースでは、根本原因が解消されずに再発するパターンも珍しくないと聞きます。
単独の理由では辞めない
どれか1つだけで辞める人はほぼいない、というのが実際のところです。1位の「やりがいのなさ」を感じながらも、2位の「昇進遅延」で刺激され、5位の「スキル不安」が背中を押す。退職理由の言語化は、複数の理由をどう組み合わせるかの作業だと捉えてください。面接や上司への説明で単一理由だけを語ると、説得力が弱くなる場合が多いといわれています。
公務員の退職理由を辞める前に4つに仕分ける判断基準
退職理由は、異動で消えるもの、休んで回復を待つもの、制度で足りるか確かめるもの、役所にいる限り消えないものの4つに仕分けてから、辞めるかどうかを決めるべきだと私は考えます。理由の数が多いほど辞める決意は固まったように感じますが、その中に異動や休養で消える理由が混ざっていると、辞めた後に同じ悩みが残ります。
私の基準では、異動で入れ替わる人間関係は単独では辞める理由にせず、年功序列や成果の見えにくさのように仕組みに根がある理由を転職の軸にします。心身の不調が絡むときは、退職を決める前に休職の制度と相談先を確かめるのが先です。
異動で消える退職理由は辞める理由にしない
人間関係や異動先との相性は、つらさが本物でも、2〜3年ごとの人事異動で相手も仕事も入れ替わります。私は総務部総務課、保険年金課、教育委員会総務課の3つの部署を経験し、同じ市役所でも部署が変われば毎日の空気がまるで違うことを知りました。
今の部署の人間関係だけが理由なら、希望がすぐには通らなくても、退職願より先に異動希望を出すほうが筋が通ります。転職先にも上司や同僚はいるので、人間関係だけを理由に辞めると、次の職場で同じ悩みに当たったときに逃げ場がなくなります。
ハラスメントのように本人の努力では解決できない問題なら、記録を残したうえで人事担当や職員向けの相談窓口に相談し、異動を待たずに動いてください。
異動のつらさとの向き合い方は、公務員の異動がつらいときの対処法と転職の判断軸にまとめています。
役所にいる限り消えない退職理由を転職の軸にする
年功序列、年収の天井、成果の見えにくさは、どの部署に移っても給料表と人事の仕組みが同じなので消えません。私にも年間の残業が300時間を超えた時期がありましたが、辞める一番の引き金になったのは、部署が変わっても残る成果の見えにくさのほうでした。
| 理由の種類 | 当てはまる退職理由 | 役所の中で取れる手段 | 私の判断 |
|---|---|---|---|
| 異動で消える | 人間関係・異動先の相性 | 異動希望の申告、次の人事異動を待つ | 単独では辞める理由にしない |
| 休んで回復を待つ | 心身の不調 | 病気休暇・休職、主治医や産業医への相談 | 回復を優先し、退職は後で決める |
| 制度で足りるか確かめる | 家庭の事情(介護・配偶者の転勤など) | 介護休暇などの制度を人事担当で確認 | 制度で両立できなければ辞める理由になる |
| 役所にいる限り消えない | 成果の見えにくさ・年功序列・年収の天井・スキルへの焦り | 部署が変わっても仕組みは同じ | 転職の軸にしてよい |
転職の軸にしてよいのは、表の最後の行のように役所にいる限り消えない理由だけだと私は考えます。この種の理由は応募先の環境と比べて話せるので、次の章の4パターンで相手ごとに言い分けるときの土台になります。
表の最後の行が残ったなら、その理由が外で解消されるかを求人票で確かめる
成果の見えにくさ、年功序列、年収の天井は、部署を移っても消えない理由でした。ただ、外へ出れば解消されるかどうかは会社によって違います。転職の軸にするなら、求人票の仕事内容や給与の目安を見比べて、その理由が外で本当に解消されそうかを先に確かめておくと、次の章で話す退職理由にも中身が伴います。
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心身の不調が退職理由なら先に休職と相談先を確認
心身の不調が退職理由に入っているなら、辞めるかどうかより先に、休めるかどうかを確かめてください。地方公務員法第28条は、心身の故障のため長期の休養を要する場合には休職させることができると定めています。
病気休暇や休職の期間、その間の給与の扱いは、自治体の条例や規則で決まっています。体調の判断は一人で抱えず、主治医や産業医、人事担当に相談してから進めるのが安全です。
私は体調を理由に辞めたわけではないので、休職を体験として語ることはできません。それでも、病気休暇や休職は残るか辞めるかを決める前に使える仕組みで、使ったからといって転職という選択肢が消えるわけではないことは伝えておきたいと思います。
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退職理由は「本音」「建前」4パターンを書き分ける
退職理由で失敗する人の多くは、同じ理由を全員に使い回しています。相手によって伝え方を変えるのは嘘ではなく、相手の関心に合わせた情報選択だと私は考えています。
| 相手 | 目的 | 使う理由 |
|---|---|---|
| 自分(本音) | 意思決定の軸 | すべての本音を言語化 |
| 上司 | 円満退職 | 前向き+個人的理由 |
| 面接官 | 採用判断 | 挑戦・キャリア軸 |
| 家族 | 合意形成 | 将来性+家計への配慮 |
| 同僚 | 関係維持 | ぼかし+個人的事情 |
なぜ書き分けが必要か
相手が必要とする情報が違うからです。上司は組織としての体面と引継ぎを気にし、面接官は採用後のリスクを気にし、家族は生活の安定を気にします。
それぞれの関心軸に対して、本音の中から合致する部分だけを選んで伝えるのが、円満な移行の鍵です。
「嘘をつく」との違い
書き分けは嘘ではありません。本音の中には複数の要素があり、どれを強調するかを相手に応じて選ぶのは誠実な態度だといわれています。
嘘になるのは、本音にない理由を作り出して伝える時だけです。この区別を間違えないでください。
上司に伝える退職理由の型
上司への退職理由は、円満退職と引継ぎの円滑化が最優先です。組織批判や職場の不満は一切口にしない方が無難だといわれています。
基本テンプレート
突然のご相談となり恐縮ですが、個人的な事情により◯月末をもって退職させていただきたく、ご相談させていただきたいのですが。
最初は切り出しの一文だけ持っていきます。相手から「どうして」と聞かれたら、次の型で答えます。
もともと◯◯の分野に強い関心があり、数年前から学習を続けてきました。年齢を考えて今が勝負のタイミングだと判断し、思い切ってチャレンジすることにしました。
ここまでお世話になった職場を離れるのは本当に心苦しいのですが、どうかお許しください。
押さえておくべき3つのポイント
- 組織批判ゼロ:「ここが嫌だった」は一切言わない
- 個人的な挑戦として提示:「自分の都合」で退職するため責任の所在を曖昧にしない
- 感謝を必ず添える:15年以上の恩を忘れていないと示す
私が実際に使った退職理由(上司用)
私は上司に次のように伝えました。
実は数年前からWebの分野に強く惹かれており、独学で勉強を続けてきました。35歳という年齢を考えると、転職して未経験から挑戦できるのは今が最後かもしれないと感じ、内定をいただいた企業でキャリアを作り直すことを決めました。
15年以上お世話になったこの職場を離れるのは本当に辛いのですが、どうか背中を押していただけないでしょうか。
上司は驚きつつも「止めないが、引継ぎはしっかり頼む」と応じてくれました。組織批判を含まない前向きな理由であれば、ほとんどの上司は円満に受け止めてくれる傾向があります。
伝えるタイミングと場所
退職の意思は、上司と一対一で話せる場で切り出すのが基本です。朝礼・会議の合間ではなく、前もって面談時間を取ってもらうのが望ましいといわれています。
私は「ご相談したいことがあります」とだけ伝え、上司の手が空いた時間に別室で話しました。時間帯は午前中の遅め(10時台)が、感情的な反応を避けやすいとされています。
退勤間際は上司の疲労が溜まっているため、冷静な対話になりにくい時間帯だと感じました。
引き止めへの対応
上司は立場上、一度は引き止める場合が多いといわれています。「昇進を考えていた」「異動で配慮する」などの条件を提示されても、すでに内定を得ている場合は意思を変えないのが基本です。
条件改善で残っても、根本的な退職動機が解消されていない限り、同じ理由で再び辞めたくなると言われています。
(関連記事)公務員から転職する時の退職の流れ
面接で伝える退職理由の型
面接での退職理由は、「うちでも同じ理由で辞めないか」という面接官の不安を打ち消すのが最優先です。上司用とは違い、挑戦のベクトルを強く出します。
基本テンプレート
公務員として◯◯の業務に◯年間従事し、住民の生活を支える仕事には大きなやりがいを感じていました。一方で、個人の成果を数字で可視化できる環境で、より自分の力を試したいという思いが年々強くなり、転職を決意しました。
御社は〜。
NGとOKの対比表
| NG表現 | OK表現 |
|---|---|
| 組織が古くて変化できない | スピード感のある組織で挑戦したい |
| 安定志向の職場が合わなかった | 成果が数字で見える環境で勝負したい |
| 人間関係で消耗した | 多様な価値観のチームで働きたい |
| 給料が上がらない | 実力に応じて評価される環境で働きたい |
| 残業が多すぎた | 時間の使い方を自分で設計できる環境に移りたい |
面接用の退職理由で必須の3要素
- 現職で得た経験と感謝:ネガティブな離職ではないと示す
- 挑戦のベクトル:前向きな意思決定である
- 転職先でなければ満たせない理由:この会社・業界を選ぶ必然性
この3要素が揃うと、退職理由が志望動機とシームレスにつながるため、面接全体の説得力が大きく上がります。逆に、このうち1つでも欠けると、面接官の頭の中で「なぜこの会社なのか」という問いが宙に浮き、評価が下がる傾向があります。
面接官が退職理由で見ているポイント
面接官が退職理由で確認したいのは、次の3点だといわれています。
- 採用後に同じ理由で辞めないか(再現性リスク)
- 前職で何かトラブルを起こしていないか(行動リスク)
- キャリアの軸に一貫性があるか(意思決定の質)
この3点に先回りで答える構成にしておくと、追加質問で深掘りされても揺らがずに対応できます。特に「同じ理由で辞めないか」の不安を消すためには、転職先の環境だけが持つ要素(スピード感・成果の可視化・スキルの専門性など)を具体的に名指しして、現職では得られなかった理由と対比させるのが効果的だと感じました。
(関連記事)公務員の転職面接対策
家族に伝える退職理由の型
家族への退職理由は、将来性と家計への配慮が最重要です。特に住宅ローンや子どもの教育費がある世帯では、感情より数字とシナリオで説明すべきだといわれています。
家族が本当に知りたい3つのこと
- 生活は維持できるのか:年収と家計キャッシュフローの見通し
- 将来のリスクは許容範囲か:失敗した場合のリカバリープラン
- 家族の生活が変わらないか:住む場所・子どもの学校・配偶者の働き方への影響
伝え方テンプレ
公務員の安定は確かに大きなメリットだと思う。ただ、自分の中で「このままでいいのか」という気持ちが年々強くなっていて、挑戦できるうちに挑戦したいと思っている。
年収は一時的に下がる見込みだけど、◯年で戻せる見通しで、家計シミュレーションも紙にまとめたから一緒に確認してほしい。もし失敗しても、公務員経験があれば再就職の選択肢は残っている。
協力してくれるとうれしい。
妻との対話で私が準備したもの
- 転職先の見込み年収表(3年分)
- 家計シミュレーション(固定費・変動費・月別キャッシュフロー)
- 失敗した場合のリカバリープラン(半年以内に再転職する条件)
- 自分が増やす家事分担の提案
妻は嫌な顔一つせずに背中を押してくれましたが、これは事前に数字で説明する準備を徹底したからだと今でも思います。
家族説明で避けるべき伝え方
- 感情先行で「もう限界」と伝える:家族が一緒に不安になり、建設的な議論に進めない
- 数字の裏付けなしに「なんとかなる」と言う:家計を担う配偶者ほど納得しない
- 決定事項として通告する:事前相談なしの報告は信頼関係を損ねる
- 失敗した場合の撤退条件を示さない:最悪のシナリオを共有しないと家族の不安が残る
私が妻に提示した4種類の資料のうち、特に刺さったのはリカバリープランでした。「半年以内に転職活動が長引いたら公務員系の外郭団体に応募する」「1年以内に再就職できなかったら一時的に実家近くに転居する」という具体的な撤退ラインを明示したことで、妻は「最悪でも生活は守られる」と判断してくれたように思います。
(関連記事)公務員の年収ダウンと向き合う方法
同僚に伝える退職理由の型
同僚への退職理由は、関係維持と情報漏洩の防止のバランスが重要です。上司に話す前に同僚に話すと、噂が先回りして組織内での立場が悪くなるケースがあります。
伝える順番
- 上司への一次報告の前:誰にも話さない(仲の良い同僚でも)
- 上司承認後〜退職届提出後:直属チームに報告
- 退職確定後:その他の同僚・全庁
基本テンプレート
実は◯月末で退職することになりました。個人的な事情で、新しいキャリアに挑戦することにしたんです。
直前のタイミングでの報告になってしまい、本当にごめんなさい。引継ぎはしっかりやるので、残りの期間よろしくお願いします。
詳細を聞かれた時の返し
組織に不満があるわけじゃなくて、前から考えていたキャリアの話で。でも正直、最後は勇気が要ったよ。
組織批判のニュアンスを絶対に入れないことが鉄則です。退職後も公務員の同期ネットワークは続くため、ここで悪印象を残すと長期的に損をするといわれています。特に地方自治体では、退職者同士の同窓会や現職との情報交換が長く続くケースも多く、10年後にまた別の仕事で繋がる可能性を意識しておくのが賢明です。
同僚から詳しく聞かれた時の返し
退職確定後、同僚から「本当の理由は何?」と詰められる場面が来る場合があります。その時は、個人的な挑戦軸だけを返して、組織の話題には一切触れないのが鉄則です。
以下のような返し方を用意しておくと、詰められても動じずに済みます。
- 「ずっと前から考えていたことで、今が決断のタイミングだった」
- 「組織の話ではなく、自分のキャリアの話で」
- 「ここでの経験は本当にありがたかった。だからこそ次に進みたい」
そのまま使える公務員の退職理由・例文まとめ
退職理由は考え方を理解しても、いざ言葉にしようとすると手が止まります。私も上司に切り出す前は、一言一句をノートに書いて練習しました。
ここでは、面接・上司・退職届の場面ごとに、そのまま使える例文をまとめます。大事なのは嘘をつくことではなく、同じ事実を角が立たない言い方に整えることです。
ご自身の状況に合わせて、言葉を差し替えて使ってください。
面接用|前向きに言い換えた退職理由の例文
面接では、辞めた理由そのものより「これから何をしたいか」に話がつながっているかを見られます。私が意識したのは、現職の不満で終わらせず、志望動機と地続きにすることでした。
例文としては、次のような形が使いやすいです。「行政では住民対応や制度運用で調整力を磨いてきましたが、成果が数字で見える環境で力を試したいと考え、転職を決めました」。
不満を語らず、経験と次の目標をつなぐのがコツです。
面接官は退職理由と志望動機の一貫性を見ているので、この2つがぶつからないよう整えておくと安心です。
上司への切り出しと退職届で使える一言例文
上司に伝えるときは、感謝と意思を短くまとめると、余計な波風が立ちにくくなります。いつ伝えるか、引き止めにどう応じるかは公務員の退職は何ヶ月前に伝える?で扱っています。
私が実際に使ったのは「突然のご相談で恐縮ですが、一身上の都合により退職を考えております。◯月末を希望しています」という切り出しでした。
退職届は理由を詳しく書く必要はありません。「一身上の都合により、◯年◯月◯日をもって退職いたします」と書けば十分で、口頭で理由を聞かれたときだけ、前向きな言葉で短く添えれば足ります。
最初の一言で退職の意思をはっきり示しておくと、その後の話し合いが引き止め一辺倒になりにくいと感じました。
本音を建前に変える言い換え例(NG→OK)
本音のまま伝えると角が立つ理由も、視点を変えれば前向きな言葉になります。下の対比を参考に、自分の本音を一段やわらかい表現に置き換えてみてください。
| 本音(NG寄り) | 建前(OKな言い換え) |
|---|---|
| 人間関係に疲れた | より協働しやすい環境で力を発揮したい |
| 給料が上がらない | 成果が評価に反映される環境で挑戦したい |
| 仕事が単調でつまらない | 裁量を持って新しい課題に取り組みたい |
| 残業が多くてつらい | 働き方を見直し家族との時間も大切にしたい |
本音を隠すのではなく、事実を前向きな動機に翻訳するのが、退職理由を角を立てずに伝える近道です。
言い換えた退職理由は、書類の形にして初めて使える
面接官は退職理由と志望動機がつながっているかを見ている、と上で書きました。NG→OKの表で言い換えた一文は、面接で話す前に職務経歴書の志望動機や自己PRの欄へ写しておくと、口頭と書類の食い違いを防げます。
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職務経歴書を作成しても、すぐに応募する必要はありません。口頭と書類の言葉をそろえる準備として使っても構いません。
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退職理由でやってはいけないNG7
最後に、どの相手にも絶対に使ってはいけないNG退職理由を7つ整理します。
NG①:組織や上司の批判
「こんな組織にいたくない」「上司がひどい」は、誰に言っても自分の評価を下げます。批判は履歴書の行間に滲ませてはいけない最たるものです。
NG②:逃げのニュアンス
「もう無理」「疲れた」は、次の職場でも同じ理由で辞めると見なされます。どんなに本音がそうでも、前向きな言葉に翻訳するのが鉄則です。
NG③:嘘の理由
嘘の理由は、上司・面接官・家族の誰かに後から見抜かれるリスクがあります。特に地方の転職市場は狭く、業界内での評判が長期で影響する場合があります。
NG④:曖昧すぎる理由
「なんとなく」「色々考えて」は、意思決定の甘さを示唆します。特に面接と家族への説明では、具体的な動機が必要です。
NG⑤:金銭だけの理由
「年収を上げたい」という単独の理由は、次にもっと年収が高いオファーが来たらすぐ辞めると見なされます。
NG⑥:他責の姿勢
「職場が悪い」「制度が悪い」は、主語が自分にないため説得力がありません。自分の意思で辞めると明示してください。
NG⑦:準備不足の言い訳
「勢いで」「とりあえず」は、家族を不安にさせます。家族向けの説明では、準備してきたことを具体的に示す必要があります。
NG表現の自己チェックフレーム
退職理由の原稿ができたら、以下の7カテゴリのどれかに該当する表現が残っていないか自分で読み返してください。
- 組織批判(職場・上司・同僚への否定)
- 逃げ(疲れた・無理・しんどい)
- 嘘(事実と異なる理由の捏造)
- 曖昧(なんとなく・色々)
- 金銭のみ(年収単独の理由)
- 他責(自分の意思が主語にない)
- 準備不足(勢い・とりあえず)
この7カテゴリは、相手が上司でも面接官でも家族でも同僚でも共通のNGです。自分の発言を録音して聞き返すのも有効だと感じました。
書き言葉では問題なくても、話し言葉になるとネガティブなニュアンスが漏れることがあります。
(出典)厚生労働省:一般職業紹介状況
公務員の退職理由で変わる退職手当と失業時の給付
公務員の退職理由は、上司や面接官にどう伝えるかとは別に、退職手当の計算にも関わります。総務省の調査では、令和6年度に自己都合退職等で辞めた地方公務員は6万5千人を超えています。
国の制度では、自分の都合で辞めると勤続19年までは退職手当の基本額が減らされ、病気やけがによる退職はこの減額から外れます。
公務員には雇用保険がないため、辞めた後の生活費を民間の会社員のように失業保険で埋める計画も立てられません。退職願に「一身上の都合」と書く前に、自分の退職がどの区分になるかを人事担当に確かめておくべきです。
自己都合で辞める地方公務員は年間6万5千人
総務省の「地方公務員の退職状況等調査」によると、令和6年度に離職した地方公務員は135,027人でした。そのうち自己都合退職等は65,134人で、離職者全体の48.2%を占めています。
- 令和6年度の離職者数:135,027人
- 普通退職者数:78,760人(前年度から2,678人、3.5%増)
- 普通退職のうち自己都合退職等:65,134人(離職者全体の48.2%)
- 令和5年度の自己都合退職等:62,520人
普通退職には、自己都合退職のほか、別の自治体などへ移るための退職も含まれます。この調査は退職の区分を数えたもので、一人ひとりがなぜ辞めたのかまでは教えてくれません。
辞める人が多いという数字は安心材料になりますが、自分の理由が辞める根拠になるかどうかは別の問題です。人数の多さで背中を押してもらうより、理由を4つに仕分けて確かめるほうが、辞めた後に迷いが残りにくくなります。
出典:総務省「令和6年度 地方公務員の退職状況等調査 退職状況等調査結果のポイント」
国の制度では自己都合退職の退職手当が減額される
国家公務員退職手当法第3条は、病気やけが、死亡によらず自分の都合で退職した人について、退職手当の基本額に勤続期間に応じた割合を掛けると定めています。
減額の割合は次のとおりで、勤続20年以上にはこの減額の規定がありません。ただし勤続20年以上でも、自己都合の退職は定年退職などより低い支給率で計算されます。
| 勤続期間 | 自己都合等で退職した場合に掛ける割合 |
|---|---|
| 1年以上10年以下 | 100分の60 |
| 11年以上15年以下 | 100分の80 |
| 16年以上19年以下 | 100分の90 |
| 20年以上 | この減額の規定なし |
地方公務員の退職手当は各自治体の条例で定められているため、割合や扱いは所属先の条例と人事担当で確認してください。心身の不調で辞める場合は、傷病による退職として扱われるかどうかで金額が変わることがあるので、退職願を出す前に確かめておくと安心です。
退職手当の計算の流れは、勤続15年の退職金の計算式と20年の壁で詳しく整理しています。
公務員は雇用保険がなく失業者の退職手当で補う
国や自治体の職員は、離職したときに受ける退職手当などの給付の内容が雇用保険の給付を上回ると認められるとして、雇用保険法第6条で適用から外されています。そのため、民間の会社員のように離職後に基本手当、いわゆる失業保険を受ける前提は立てられません。
その代わりに、国家公務員退職手当法第10条には「失業者の退職手当」が定められています。受け取った退職手当が、雇用保険に入っていれば受けられた基本手当の額に満たず、失業している状態が続くなどの条件を満たせば、その差額が支給される仕組みです。
勤続が短く退職手当が少ない人ほど、この差額が生じやすくなります。地方公務員の扱いは各自治体の退職手当条例によるため、受けられるかどうかは所属先の人事担当に確認してください。
私は市役所を5月末に辞めて6月1日に入社したので、この制度は使っていません。空白期間を作らずに移れるなら、失業時の給付をあてにしない計画のほうが家計は崩れにくいと私は考えます。
よくある質問
Q1. 退職理由を聞かれて正直に「やりがいがない」と答えていいですか
上司や面接官には避けた方が無難です。「成果を数字で可視化できる環境で挑戦したい」と前向きに翻訳してください。
Q2. 退職理由が明確でない場合はどうすればいいですか
紙に書き出すところから始めてください。複数の理由の組み合わせになるのが普通で、その中から相手に合う要素を選ぶのが実務的です。
Q3. 上司に退職を伝える最適なタイミングは
退職希望日の2〜3ヶ月前が目安だといわれています。民法上は2週間前でも退職可能ですが、引継ぎと人事手続きを考えると3ヶ月前が無難です。
Q4. 退職届と退職願はどう違いますか
退職願は相談、退職届は意思表示です。上司に相談する段階では退職願、合意後に退職届を出すのが一般的な流れとされています。
Q5. 引き止めに遭ったらどう対応すればいいですか
感謝を伝えつつ、意思は変わらないことを明確に示してください。条件改善の提案をされても、最初の意思が本気であれば受けない方が後悔が少ないといわれています。
Q6. 退職理由を同期に相談してもいいですか
上司承認前は避けた方が安全です。同期ネットワークは情報伝達が速く、上司が第三者から先に聞くと関係が悪化します。
Q7. 退職代行を使うべきですか
通常の退職では不要だといわれています。ハラスメントや恫喝で自分で切り出せない状況の場合のみ、選択肢として検討してください。
公務員の場合、退職代行を使うと人事課との事務手続きや退職金の申請で本人が動かなければならない場面が残るため、完全な代行が難しいケースもあると聞きます。
Q8. 有給休暇はすべて消化できますか
法的には退職日までに残っている有給は消化する権利があります。ただし、引継ぎとの兼ね合いで上司から調整を求められる場合があるため、退職希望日から逆算して有給消化期間を確保するスケジュールを組むのが現実的だといわれています。
私は退職日の1ヶ月前に業務引継ぎを完了させ、最後の1ヶ月は有給消化に充てました。
Q9. 退職理由で「ステップアップのため」と伝えるのは有効ですか
抽象度が高すぎるため、単独では弱い表現です。具体的にどの分野で、なぜその分野で、なぜ今のタイミングで、という3点を添えると一気に説得力が増します。
「ステップアップ」は補足として使い、本体の理由は別に用意してください。
Q10. 退職理由を聞かれて「人間関係」と答えてしまいそうです
人間関係を理由にすると、面接官は「どの職場にも人間関係はあるので、また辞めるのでは」と懸念します。人間関係で消耗した本音がある場合は、「多様な価値観のチームで自分の持ち味を活かしたい」など前向きな表現に翻訳する方が安全だといわれています。
家族や親しい同期にだけは本音を話し、公の場では常に前向きなフレーズで統一する二段構えがおすすめです。
エージェント選びまで進むなら、公務員向けの転職エージェントを比較した記事を別にまとめています。
(関連記事)公務員の転職エージェントおすすめ比較|元市役所職員が選ぶ最初の3つ
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まとめ
公務員の退職理由は、本音・上司用・面接用・家族用の4パターンに書き分けるのが実務的だと、私は15年以上勤めた経験から結論づけました。本音は意思決定の軸として整理し、それぞれの相手の関心軸に合わせて伝える情報を選ぶ。
嘘をつくのではなく、相手が必要とする情報を選んで伝えるという姿勢が、退職を円満に進める鍵です。組織批判・他責・曖昧さを排除し、感謝と挑戦のベクトルを必ず添える。
この原則を守れば、上司から面接官、家族、同僚まで、誰にも遺恨を残さずに次のキャリアへ進めるはずです。
最後に、本記事のポイントを5つで振り返ります。
- 退職理由は4パターンに書き分ける。本音を整理した上で、相手の関心に合う情報を選んで伝える
- 上司には組織批判ゼロ・個人的挑戦・感謝の3点セットで切り出す。タイミングは午前中の遅めが無難
- 面接では「うちでも同じ理由で辞めないか」の不安を消すことが最優先。挑戦のベクトルを強く出す
- 家族には数字とシナリオで説明する。年収表・家計シミュ・リカバリープランの3点が説得力の軸
- 同僚には伝える順番を守る。上司承認前は話さず、退職確定後に全体へ広げる
退職理由の言語化は、一度作れば面接・社内説明・家族相談のすべてで使い回せる資産になります。この記事の4パターンのフレームを、ぜひ自分の本音に当てはめて使ってみてください。


