2022年4月のある夜、私は自宅の食卓で転職サイトの登録画面を開いたまま、一時間ほど指が止まっていました。退職を決めかけていたのに、「私は本当に外で通用するのか」「ただ逃げたいだけではないか」という問いに答えが出なかったからです。
同じ場所で立ち止まっている30代の公務員に向けて、向き不向きの見極め方を整理しました。
この記事を書いた人
市役所に15年勤務後、35歳でIT企業へ転職。年収200万円ダウン、1社目6ヶ月退職を経て、現在は在宅Webマーケターとして勤務しています。
公務員時代の経験と2回の転職体験をもとに、同じ悩みを持つ方へ判断材料をお届けしています。
当ブログでは、公務員からの転職に関する体験談や実践的な情報を発信しています。ご質問やご相談があれば、お気軽にお問い合わせページよりご連絡ください。
「向いている/向いていない」を分ける軸は適性ではなく相性
結論から書きます。転職に向いているかどうかは、能力の高さではなく今の環境と自分の相性で決まります。
優秀でも公務員のままが幸せな人はいますし、平均的でも外に出たほうが伸びる人もいます。私はこの順番を最初に取り違えていました。
能力の優劣と転職適性は別物です
私は市役所で15年働き、決して仕事ができないほうではなかったと思います。それでも転職を考えたのは、能力が足りなかったからではありません。
評価のされ方や働き方が、自分の納得感と合っていなかったからです。ここを混同すると、「自分はダメだから辞める」という間違った前提で動いてしまいます。
転職の適性を測るとき、まず分けてほしい問いが二つあります。
- できるかどうか(能力の問題)
- 続けたいかどうか(相性の問題)
この二つは別の話です。能力はあとから伸ばせますが、相性は変えにくいものです。
だからこそ、向き不向きの判定では相性のほうを先に見ます。
「向いている人=強い人」という思い込みを外す
世の中には、転職に成功する人は特別に優秀で、行動力もあって、何でもこなせる人だというイメージがあります。私もそう思い込んでいました。
ですが、実際に転職して数年が経った今、その印象は事実とずれていると感じます。外で生き残っている元同僚は、能力が突出していたわけではなく、自分に合う場所を選んだ人が多いからです。
私が市役所時代に見ていた優秀な先輩の何人かは、今も公務員として活躍しています。逆に、目立たなかった同僚が民間で生き生きと働いている例もあります。
この差を生んだのは才能ではなく、環境との噛み合わせでした。だから「自分は優秀ではないから転職は無理だ」と決めつけるのは、判断の入口を間違えていることになります。
能力は転職の合否を決める唯一の要素ではないのです。
相性は数年単位でしか変わらないと考える
相性が変えにくいというのは、私の実感としても確かなものです。市役所にいた15年のあいだ、私は「いつか慣れるだろう」と思いながら、前例踏襲のやり方に折り合いをつけようとしました。
しかし、合わないものは年単位の時間をかけても合いませんでした。相性は努力で短期間に上書きできるものではなく、年数をかけてやっと少し動く程度だというのが、私が15年かけて知ったことです。
ここで大切なのは、相性が悪いこと自体は悪いことではないという視点です。相性が合わないのはあなたが劣っているからではなく、その仕組みがあなたの性質と噛み合っていないだけです。
合わない場所で無理に自分を曲げ続けるより、合う場所を探すほうが結果的に楽になることもあります。私はこの考え方に切り替えてから、転職という選択肢を罪悪感なく検討できるようになりました。
「不満の出どころ」を環境か気分かで分ける
向き不向きを分ける最大のポイントは、不満の出どころが環境にあるのか、その日の気分にあるのかという点です。環境に根ざした不満は時間が経っても消えませんが、気分の不満は一週間もすれば薄れます。
私の場合、年功序列で成果が反映されない仕組みへの不満は、半年経っても一年経っても消えませんでした。
一方で、繁忙期のイライラや上司との一時的な衝突は、配属が変われば和らぐ種類のものでした。この二つを区別せずにまとめて「もう無理だ」と判断すると、辞めてから「あれは気分だったのか」と後悔します。
環境由来と気分由来を見分ける質問
実際にどう見分けるのかを、私が後から整理した質問の形でお伝えします。次の問いに答えてみると、不満の正体がどちら寄りかが少し見えてきます。
- その不満は、休日や連休明けにも同じ強さで残っていますか
- 配属や担当が変わったら消えそうな不満ですか、それとも残りそうですか
- 一年前の自分も、同じことで悩んでいましたか
- 給料や評価の仕組みそのものに、繰り返し引っかかっていますか
休日にも残り、配属が変わっても消えず、一年前から続いている不満は、環境由来である可能性が高いものです。逆に、特定の時期や特定の人にだけ反応している不満なら、気分由来の比重が大きいと考えられます。
私はこの問いを自分に向けるのが遅く、感情のピークで判断を急ぎかけました。
私が判断を誤りかけた点
正直に書くと、私は2022年の春先、この区別をできていませんでした。年度途中で退職を決めたのも、半分は仕組みへの根深い不満、もう半分はその時期の人間関係の疲れだったと思います。
後者だけなら、おそらく辞めるべきではありませんでした。自分の不満を二つに切り分ける作業を、もっと早くやるべきだったというのが、今も残る反省点です。
あのとき私は、疲れがピークに達した夜に転職サイトを開いていました。冷静な日中ではなく、消耗した夜に決断しようとしていたわけです。
判断は、感情が一番高ぶった瞬間ではなく、落ち着いた状態で下したほうが精度が上がります。今の私なら、まず一週間ほど置いてから同じ問いに向き合います。
向き不向きの判定でも、タイミングを選ぶことは思っているより大切です。
転職に向いている公務員の3つの特徴
向いている人には共通点があります。変化を受け入れられること、自分から学べること、不満の根が環境にあることの3つです。
一つずつ、私自身や周囲の元同僚を思い出しながら説明します。
特徴1:変化そのものを苦にしない
転職に向いている人は、ルールや手順が変わる場面でストレスをためにくい傾向があります。公務員の仕事は前例踏襲が基本で、決まった手続きを正確に回すことに価値が置かれます。
この安定を窮屈に感じる人ほど、外の変化に適応しやすいという関係があります。
私は市役所時代、制度改正で運用が変わるたびに、面倒だと思う同僚が多い中で、むしろ新しいやり方を試すのが楽しいと感じていました。今の在宅Webマーケターの仕事は、検索エンジンの仕様も広告の手法も毎月のように変わります。
変化を負担ではなく刺激と感じられたことが、移ってから役立ちました。
変化に強いかどうかを自分で確かめる場面
変化への強さは、特別な出来事ではなく日常の小さな場面に出ます。私が振り返って「これは向いている兆候だった」と思うのは、次のような瞬間でした。
- 担当業務に新しいシステムが入ったとき、戸惑いより興味が先に来た
- マニュアルが改訂されると、まず差分を読み込みたくなった
- 部署異動の内示が出たとき、不安より「何が変わるのか」が気になった
逆に、こうした場面で胃が痛くなったり、できるだけ現状維持で済ませたいと感じたりするなら、変化そのものが負担になりやすいタイプかもしれません。これは優劣ではなく性質の違いです。
変化が刺激に感じられるか、消耗に感じられるかは、転職後の働きやすさを大きく左右します。民間は公務員より変化の振れ幅が大きいので、ここの自己理解は欠かせません。
特徴2:誰にも頼まれなくても学ぶ
向いている人は、評価や昇給に直結しなくても勝手に勉強します。民間では、自分でスキルを更新し続けられるかどうかが市場価値を左右します。
指示がなくても学ぶ習慣がある人は、未経験の分野でも追いつけるからです。
逆に、研修で与えられた内容だけをこなしてきたタイプは、転職後に苦労しやすいと感じます。学習意欲があるかどうかを自分で確かめる簡単な方法があります。
- この一年で、仕事と関係なく本を一冊読み通したか
- 興味を持った分野を、休日に自分から調べたことがあるか
- 新しいツールやアプリを、説明書なしで触ってみる癖があるか
一つでも当てはまるなら、学ぶ素地はあります。
「学ぶ習慣」が転職後に効いてくる理由
なぜ学ぶ習慣がこれほど重要なのかを、私の実体験から補足します。私が在宅Webマーケターに移ったとき、知識はほぼゼロからのスタートでした。
それでも続けられたのは、誰にも指示されないうちから検索の仕組みや文章の書き方を自分で調べる癖があったからです。民間では、教えてもらうのを待つ人より、自分で取りに行く人のほうが早く戦力になります。
公務員の研修は手厚く、必要な知識は職場が用意してくれることが多いものです。それ自体は良い環境ですが、与えられる学びに慣れすぎると、自分で学ぶ筋肉が衰えます。
私が1社目のIT企業で痛感したのは、誰も体系立てて教えてくれないという現実でした。事務職兼カスタマーサポートでも、商品知識や対応の型は自分で覚える必要がありました。
学ぶ習慣の有無は、転職直後の数ヶ月で大きな差になって表れます。
特徴3:不満の根が「制度」にある
3つ目は、不満の根っこが人ではなく仕組みにある場合です。特定の上司が嫌だ、という不満は異動で解決する可能性があります。
ですが、年功序列・前例踏襲・成果が数字で見えない、といった構造への不満は、職場を変えても公務員である限り付いて回ります。制度そのものへの違和感は、転職でしか解消できない種類の不満です。
ここで、自分の不満が一過性かどうか迷う方は多いものです。私自身、頭の中だけで考えていた時期は堂々巡りでした。
制度由来の不満と人間関係の不満を切り分ける
制度由来の不満と、人間関係の不満は、見た目が似ていて混ざりやすいものです。私が両者を切り分けるときに使った視点を共有します。
「この人がいなくなったら解決するか」を問うと、不満の根がどこにあるかが見えてきます。
- 苦手な上司が異動したら、この不満は消えますか
- 部署を変われば、この働きにくさはなくなりますか
- もし理想の同僚に囲まれても、この仕組みへの違和感は残りますか
最後の問いに「残る」と答えるなら、それは人ではなく制度への不満です。私の場合、どれだけ良い人に囲まれても、成果が評価に反映されない仕組み自体への違和感は消えませんでした。
だから転職という選択が、私にとっては筋の通った答えになりました。一方で、特定の人への不満だけなら、異動を待つほうが損が少ないこともあります。
一人で自分の適性を言葉にするのは、想像以上に難しい作業です。私は当時、誰かに頭の中を整理してもらえたら、と何度も思いました。
第三者と話しながら自分の言葉を引き出す方法を探している方には、コーチングという選択肢もあります。
転職に向いていない、または今は動かないほうがいい公務員の特徴
逆の側も率直に書きます。向いていない、あるいは今は動くべきでない人にも、はっきりした特徴があります。
不満が一過性であること、準備がゼロで勢いだけであること、生活設計が崩れることの3つです。これは私が転職して年収を200万円下げ、1社目を6ヶ月で辞めた経験からも痛感したことです。
特徴1:不満が一過性で、半年後には消えている
その時の繁忙や人間関係に起因する不満は、時間とともに薄れます。繁忙期や異動直後の一時的な感情で辞めると、外でも同じ壁にぶつかります。
民間にも理不尽な上司も無茶な締め切りもあるからです。
向いていない人かどうかを見分ける問いは単純です。「半年前も同じことで悩んでいたか」を思い出してください。
半年前は気にもしていなかったなら、それは環境ではなく今の気分の問題である可能性が高いです。
一過性の不満を見抜く具体的な場面
一過性の不満は、特定の時期に集中して現れます。私が市役所で経験した中では、年度末の繁忙期、人事異動の直後、大きなクレーム対応の後などが、辞めたい気持ちが急に強くなる場面でした。
こうした山を越えた後にも同じ気持ちが残るかどうかが、一過性かどうかの分かれ目です。
たとえば三月の年度末、私は毎年「もう辞めたい」と口にしていました。ですが四月の中旬、業務が落ち着くとその気持ちは薄れていました。
つまり、あの三月の「辞めたい」は気分由来だったわけです。一方で、年功序列への違和感は、繁忙期でも閑散期でも一定の強さで残り続けました。
自分の不満が季節や出来事に連動して上下するなら、まずは山を越えてから判断したほうが安全です。忙しさのピークで決めた退職は、後悔に変わりやすいというのが私の見方です。
特徴2:準備ゼロで勢いだけ
二つ目は、貯金も情報収集もスキルの棚卸しもないまま、勢いで辞めようとしている状態です。準備期間が3ヶ月未満の転職は、後悔につながりやすいという傾向が、各種の転職相談でも語られています。
私は1社目に飛び込むとき、業界研究も自分の強みの整理も不十分でした。その結果、入社後に「思っていた仕事と違う」と感じ、6ヶ月で退職しています。
準備の有無は、次の項目で測れます。
| 準備項目 | 向いている人の状態 | 危ういサイン |
|---|---|---|
| 退職理由 | 言語化できている | 「なんとなく嫌」で止まる |
| 準備期間 | 半年以上を見込む | 3ヶ月未満で焦っている |
| 生活費 | 数ヶ月分の蓄えがある | 貯金がほぼない |
| 家族の理解 | 相談済みで合意がある | まだ話せていない |
| 行き先のイメージ | 業界・職種が絞れている | 「どこでもいい」 |
危ういサインが3つ以上ある場合は、今すぐ動くより準備に時間を使うほうが安全です。
私が準備を怠って失敗した話
準備不足がどう響くかを、私の失敗から具体的にお伝えします。1社目のIT企業に応募したとき、私は「公務員を辞めたい」という気持ちが先に立ち、入社後の働き方をほとんど調べていませんでした。
事務職兼カスタマーサポートという職種が、自分の性質に合うかどうかも検討していませんでした。辞めることばかり考えて、入った先のことを考えていなかったのが、最大の落ち度でした。
結果として、私は入社してすぐに「思っていた仕事と違う」と感じ、6ヶ月で退職することになりました。年収も200万円下がっていたので、生活面でも余裕がありませんでした。
この遠回りから学んだのは、辞める準備と同じくらい、入る準備が重要だということです。次の転職では、仕事内容や求められる役割を事前に調べ込みました。
準備に時間をかけたぶん、現職の在宅Webマーケターには納得して移ることができました。
特徴3:35年ローンや家族の生活で収入減を受け止めにくい
三つ目は、収入減が生活設計を直撃する場合です。住宅ローンを長期で抱え、子どもの教育費がこれからかかる時期に、年収が大きく下がる転職は家計を圧迫します。
家族の生活を巻き込む決断は、本人の納得だけでは進められないのが現実です。
私は最初の転職で年収が200万円下がりました。妻に相談したとき、妻は嫌な顔ひとつせず後押ししてくれました。
今でも心から感謝しています。ですが、もし妻が反対していたら、あの決断はもっと重いものになっていたはずです。
家計のシミュレーションを家族と共有しないまま進めるのは、向き不向き以前の問題だと考えています。
生活設計が崩れるかどうかを先に見積もる
生活設計が耐えられるかどうかは、感覚ではなく数字で見たほうが安全です。私が動く前に妻と確認したのは、年収が下がった後の毎月の収支がマイナスにならないか、という一点でした。
収入が下がっても暮らしが回るかを先に計算しておくと、決断のときに腹がくくれます。
具体的には、固定費がどれくらいあるか、何ヶ月くらい無収入でも耐えられるか、年収が下がった後の貯蓄ペースはどうなるか、といった項目を紙に書き出しました。住宅ローンや教育費など、簡単には減らせない支出がある人ほど、この見積もりは欠かせません。
数字を出してみて「これは無理だ」と分かれば、それは向いていないのではなく、今は時期ではないというサインです。逆に、数字の上で耐えられると確認できれば、年収減という条件があっても前に進めます。
なお、公的な雇用保険や再就職に関する制度は、公式情報で正確に確認することをおすすめします。
(参考)厚生労働省:公式サイト
自分で判定する適性チェックリスト
ここまでの内容を、自分で点検できる形にまとめます。チェックの数ではなく、どの項目に印が付くかで適性が見えてきます。
気軽な気持ちで、正直に答えてみてください。
向いている人サイドのチェック
次の項目は、転職に向いている傾向を示すものです。
- 制度や前例踏襲そのものに、半年以上ずっと違和感がある
- ルールや手順が変わる場面を、面倒ではなく面白いと感じる
- 評価に関係なく、自分から学んで試すことがある
- 退職理由を「○○がしたいから」と前向きに言葉にできる
- 半年以上の準備期間を確保するつもりがある
- 数ヶ月分の生活費を確保している、または確保の見通しがある
- 家族に相談し、方向性について合意が取れている
向いていない/今は動かないほうがいいサイドのチェック
次の項目は、今は慎重になったほうがよいサインです。
- 辞めたい気持ちが、繁忙期や特定の人間関係に強く連動している
- 半年前は今ほど辞めたいと思っていなかった
- 退職理由が「逃げたい」「ここが嫌」で止まっている
- 貯金がほとんどなく、無収入期間に耐えられない
- 行きたい業界や職種のイメージがまったくない
- 家族にまだ転職の話をしていない
判定の読み方
読み方の目安を表にまとめます。
| 状態 | 解釈 | 次の一手 |
|---|---|---|
| 向いている側に多く印 | 環境との相性で動く理由が明確 | 準備を具体化して進める |
| 両側に同じくらい印 | 不満の切り分けが未完了 | 一過性か構造かを再整理する |
| 向いていない側に多く印 | 今は準備不足か気分の比重が大きい | 動く前に下準備を固める |
私自身を当時のこの表に当てはめると、向いている側にも向いていない側にも印が付く「両側型」でした。両側に印が付く人は、向いていないのではなく、整理が終わっていないだけというケースが多いと感じます。
チェックリストを使うときの注意点
このチェックリストは便利な反面、使い方を間違えると判断を歪めます。私が注意してほしいと思うのは、印の数を「合計点」のように扱わないことです。
向いている側に五つ印が付いても、向いていない側の「貯金がほとんどない」に一つ印が付いていれば、その一つが決定的に重いこともあります。
数の多さより、どの項目に印が付いているかを重く見てください。とくに、生活費や家族の合意といった土台に関わる項目は、ほかの何項目分にも相当します。
また、チェックは一度きりではなく、時間を置いて二回以上やってみることをおすすめします。感情が落ち着いた日に付け直すと、繁忙期の勢いで付けた印が外れることがあります。
私は当時、感情のピークで自己採点していたので、後から見ると過大に「辞めたい側」へ寄っていました。
もう一つ気をつけたいのは、チェックを他人と比べないことです。同じ職場の同僚と印の数を見せ合っても、相性は人それぞれなので意味がありません。
このチェックは他人との競争ではなく、自分の現在地を知るための道具です。誰かが「向いている」と出たから自分も動こう、という使い方はおすすめしません。
あくまで、自分の不満がどこに根ざしているのかを確かめるために使ってください。
「両側型」だった私がやったこと
両側に印が付いたとき、どう動けばよいのか、私の例を具体的にお伝えします。当時の私は、向いている側にも向いていない側にも印が付き、しばらく身動きが取れませんでした。
そこでやったのは、両側に付いた印のうち、向いていない側の印を一つずつ消せるかどうかを検討することでした。
たとえば「貯金がほとんどない」という印は、在職中に数ヶ月かけて貯めることで消せます。「家族に話していない」という印は、妻に相談することで消せます。
一方で「不満が制度由来である」という向いている側の印は、時間が経っても消えませんでした。こうして、消せる印と消せない印を仕分けていくと、自分が何を準備すれば前に進めるのかが見えてきました。
両側型の人は、向いていないと諦めるのではなく、消せる弱点から一つずつ潰していくのが現実的な進み方です。
「向いていない」と出ても、それでも進むなら何を準備するか
向いていないという結果が出ても、進む権利はあなたにあります。大事なのは、向いていない側の弱点を、準備で埋めてから動くことです。
私が1社目で失敗した反省から、最低限そろえたい4点を挙げます。
準備1:不満を「構造」と「気分」に仕分ける
最初にやるのは、辞めたい理由を紙に書き出し、一つずつ「これは制度の問題か、その日の気分か」と分類する作業です。仕分けが終わると、辞めるべき理由と我慢で済む理由が分離されます。
制度側の理由だけが残ったとき、初めて転職が本筋の解決策になります。
私がこの仕分けをやったとき、紙の左側に制度由来、右側に気分由来と書いて、理由を一つずつ振り分けました。やってみると、思っていたより気分由来の理由が多いことに気づきました。
頭の中だけで考えていると不満は塊に見えますが、紙に分解すると輪郭がはっきりします。この作業は十分や二十分でできるので、迷っている人ほど一度試してほしいと思います。
つまらなさの原因をもっと細かく分けたい方は、この記事も参考になります。
(関連記事)公務員がつまらないと感じたら原因を4つに分けて考える
準備2:無収入期間に耐える生活費を作る
二つ目は、お金の備えです。在職中に数ヶ月分の生活費を貯め、転職後に年収が下がる前提で家計を組み直します。
収入が下がっても暮らせる設計があるかどうかが、決断の余裕を生みます。私は年収が200万円下がる前提を妻と共有してから動いたので、最初の生活の落差にも耐えられました。
ここで意識したいのは、貯金は「いざというときの保険」だけでなく、「焦って妥協しないための余裕」にもなるという点です。生活費の蓄えがないと、転職活動中に最初に受かった会社へ飛びついてしまいがちです。
お金の余裕は、選ぶ会社の質を保つための土台でもあります。私が1社目で失敗した一因も、生活面の余裕が乏しく、じっくり選べなかったことにありました。
お金や年齢への不安そのものを分解したい方は、こちらにまとめています。
(関連記事)公務員からの転職が不安なのは当たり前|まず分解する
準備3:自分の強みを言葉にする
三つ目は、自分の経験を民間で通じる言葉に翻訳する作業です。公務員の仕事は成果が数字で見えにくく、強みを言語化しづらいという難しさがあります。
棚卸しをして一行で言える強みを持つと、面接でも迷いません。
- 過去に工夫したこと、改善したことを書き出す
- 調整役として動いた場面を思い出す
- それを「○○ができる人」と一行にまとめる
この棚卸しのやり方を詳しく知りたい方は、自己分析の記事をご覧ください。
(関連記事)公務員が転職で自己分析に躓く3つの理由
準備4:第三者と迷いを整理する
四つ目は、一人で抱えないことです。向き不向きの判定も強みの言語化も、頭の中だけだと堂々巡りになりがちです。
私自身、食卓で一時間固まっていた夜のように、一人では答えが出ませんでした。自分の言葉を引き出してくれる相手がいると、判断の精度が上がります。
家族や同僚に話しにくい場合、利害のない第三者と話すほうが本音を出せることがあります。迷いを言語化する場として、コーチングを検討するのも一つの手です。
4つの準備に優先順位をつけるなら
4つの準備をいっぺんにやろうとすると、かえって手が止まります。私が振り返って思う優先順位を、簡単な表にまとめます。
まず取りかかるべきは、生活が崩れない土台づくりだと考えています。
| 優先度 | 準備内容 | まず着手する理由 |
|---|---|---|
| 高 | 不満の仕分け | 動くべきかどうかの前提が決まるため |
| 高 | 生活費の確保 | 土台が崩れると他の準備が無意味になるため |
| 中 | 強みの言語化 | 応募先を絞り、面接に進む段階で効くため |
| 中 | 第三者との整理 | 迷いが消えず手が止まったときに効くため |
不満の仕分けと生活費の確保は、ほかの準備の前提になります。ここが固まらないまま強みの言語化に進んでも、そもそも動くべきかどうかが定まっていないので空回りします。
私は当時、順番を考えずに焦って動いたので、土台が薄いまま1社目に飛び込みました。準備は数より順番が大切だというのが、遠回りした私の実感です。
まとめ|向き不向きは「整理が終わったか」で見える
最後に私の結論を一文で書きます。転職に向いているかどうかは才能ではなく、不満を構造と気分に切り分け、準備を整えられたかで決まります。
両側に印が付いた当時の私のように、多くの人は「向いていない」のではなく「まだ整理が終わっていない」だけです。
ここまでの要点を振り返ります。
- 向き不向きは能力ではなく、環境との相性で決まる
- 不満の出どころが構造か気分かを必ず切り分ける
- 向いている人は変化に強く、自分から学び、不満の根が制度にある
- 準備ゼロ・勢いだけ・生活設計が崩れる人は今は慎重にする
- 向いていないと出ても、4つの準備で弱点は埋められる
私は転職して良かったと思っています。変化を楽しめる今の働き方は、市役所時代より自分に合っています。
それでも、不満の切り分けを後回しにし、1社目を6ヶ月で辞めた遠回りは、今も残る後悔です。あなたには同じ遠回りをしてほしくないので、動く前にまず整理してほしいと考えています。


