転職の自己分析とは何をする作業なのか
転職の自己分析とは、これまでの経験から「価値観」「強み」「キャリア軸」の3つを言葉にする作業です。性格を占ったり、天職を探し当てたりするものではありません。
この3つが言葉になっていれば、退職理由も自己PRも志望動機も同じ材料から組み立てられます。逆に飛ばして応募すると、書類は書けても面接の深掘りで答えが揺れます。
ここでは、言語化する3つの要素、やらずに応募したときに選考のどこで詰まるのか、そして公務員が自己分析から得られるものを整理します。目的は自分探しではなく、経験を民間で通じる言葉に置き換えることです。
自己分析で言語化する3つの要素とは何か
言語化するのは3つです。1つ目の価値観は、仕事で何を大事にしてきたかという判断の基準にあたります。
住民に直接向き合いたいのか、仕組みを設計したいのか、人によって違います。2つ目の強みは、他人より無理なくできることです。
資格や実績のことではなく、周囲が面倒がる作業を苦にせず進められる、といった性質も含みます。3つ目のキャリア軸は、これからどの方向へ進みたいかという指針です。
この3つは独立しているようで、実際には過去を振り返る作業から同時に出てきます。先に3つの箱を用意しておくと、書き出した内容をどこへ入れるか迷いません。
やらずに応募すると選考のどこで詰まるか
自己分析を飛ばしても、書類自体は書けます。詰まるのは面接です。
「なぜ安定した公務員を辞めるのですか」「うちで何をしたいのですか」という質問は、ほぼ必ず来ます。ここで用意した答えを暗記して臨むと、二段階目の深掘りで揺れます。
「それはうちでなくてもできますよね」と返されたときに、自分の言葉が出てこないためです。価値観から一貫して説明できていれば、想定外の角度から聞かれても軸がぶれません。
私は最初の転職で準備が浅いまま面接に臨み、退職理由と志望動機が噛み合っていないことを面接官に見抜かれた経験があります。
自己分析で公務員が得るのは民間語への翻訳表
公務員が自己分析から得る最大の成果は、経験を民間で通じる言葉に置き換える対応表です。役所での仕事は、事業名や所属で説明しても外の人には伝わりません。
たとえば「住民説明会の運営」は、反対意見が出る前提で資料と進行を設計し、その場で合意を取り付ける仕事です。「システム更新の仕様調整」は、現場の要望と予算と法令の制約を突き合わせて落としどころを決める仕事だと言えます。
この置き換えの一覧が手元にあるかどうかで、職務経歴書の説得力が変わります。具体的な書き出し方は、次のセクションの記入例で扱います。
自己分析は自分を知る作業であると同時に、翻訳の作業でもあります。だからこそ、思い出す作業だけで終わらせず、必ず紙に書いて言葉として残してください。
言語化した3要素の使い方は、公務員の転職の志望動機の作り方で詳しく扱っています。
公務員が転職で自己分析に躓く3つの理由
公務員が自己分析に躓くのは能力不足ではなく、仕事の仕組みそのものに原因があると私は考えています。理由は3つです。
第一に、数年ごとの異動で経験が断片化し、一貫した経歴として語りにくくなります。第二に、成果が数字で残らないため「何をどれだけ達成したか」を説明する材料が手元にありません。
第三に、個人の貢献より組織としての貢献が前提のため、自分の働きを切り出す習慣がそもそもありません。同僚を見ても、優秀な人ほど自分の経験を言語化できずに悩んでいました。
これは直すべき欠点ではなく、前提として認識しておくべき条件です。
理由①:ジョブローテーションで経験が断片化する
公務員は2〜3年ごとの異動で担当業務が入れ替わります。15年以上勤めれば5〜7の部署を経験することになり、一つの領域での深い専門性を積みにくい構造です。
民間企業の「営業10年」「エンジニア8年」のような直線的なキャリアが作れないため、自己分析で「自分の強みは何か」と問われた時に答えにくい傾向があります。
理由②:成果が数字で可視化されない
公務員の業務は住民のためという大義はありますが、個人の成果が数字で見えづらい構造です。年度末の人事評価面談も「業務を滞りなく遂行した」で終わるケースが多く、具体的な達成を言語化する習慣がないまま年数を重ねてしまいます。
自己分析の要は「過去の成功体験を言語化する」ことですが、ここが難しいと全体が進みません。
理由③:個人貢献より組織貢献が中心
公務員の業務はチーム・組織で完結するものが多く、個人の意思決定や判断が単独で成果につながる場面が少ない傾向があります。
民間企業への転職活動では「あなた個人が何をしたか」を問われますが、個人の貢献を意識して業務してこなかったため、棚卸しに苦労する人が多いと感じます。
これは能力不足ではなく構造的な問題
この3つの躓きは、公務員の働き方の構造から生じる必然的な障害です。自己分析が進まないのは、あなたの能力やモチベーションが低いからではありません。
構造を理解した上で、公務員向けの進め方を取れば、必ず自分の軸は見えてくるといわれています。
(関連記事)公務員の転職で身につくスキルの棚卸し方
自己分析の3ステップモデル
自己分析は過去の棚卸し、価値観の抽出、未来への接続の3ステップに分けると迷わず進みます。最初に、これまで担当した仕事と、そのときの気持ちの上下を書き出します。
次に、その記録から自分が何を大事にしてきたのかを言葉にします。最後に、その価値観を今後の働き方と結びつけて、応募先を選ぶ軸に変換します。
所要時間の目安は合計7〜10時間で、休日2日で集中して片づけるか、平日の夜に分割して2週間でやり切るのが現実的だと感じています。順番を飛ばすと、最後に軸が出てこないので、1つずつ進めてください。
3ステップ全体像
| ステップ | 目的 | 所要時間の目安 | アウトプット |
|---|---|---|---|
| ①過去の棚卸し | 経験を言語化する | 3〜5時間 | モチベーショングラフ、経験棚卸しシート |
| ②価値観の抽出 | 自分が大切にしているものを特定 | 2〜3時間 | 価値観ワードリスト、優先順位表 |
| ③未来への接続 | 次のキャリアに落とし込む | 2時間 | Can/Will/Mustシート、希望条件整理 |
ステップ①:過去の棚卸し
公務員時代に印象に残っている出来事を時系列で書き出します。採用された時、最初の異動、印象的なプロジェクト、つらかった時期、評価された経験など、感情が動いた瞬間を拾うのがコツです。
モチベーショングラフを書くのがこのステップの中心的な作業になります。
ステップ②:価値観の抽出
過去の棚卸しで出てきた出来事から、自分が何に価値を置いているかを抽出します。「人の役に立つこと」「成果が目に見えること」「自由裁量があること」など、自分が心地よかった瞬間の共通項を抜き出してください。
ステップ③:未来への接続
抽出した価値観を起点に、次のキャリアで何を満たしたいかを言語化します。Can/Will/Mustで現在地を整理し、価値観・強み・キャリア軸の3つを応募書類や面接対策に落とし込める形にまとめます。
自己分析フレームワーク4選の使い分け
フレームワークは目的が違うので、全部やる必要はありません。過去を振り返って自分の傾向をつかみたいならモチベーショングラフ、今の持ち駒と希望を整理したいならCan/Will/Must、自分では気づけない側面を知りたいならジョハリの窓、長期的に譲れない価値観を確かめたいならキャリアアンカーが向いています。
おすすめの順番は、モチベーショングラフからCan/Will/Mustへ進み、迷いが残ればキャリアアンカーで確認する流れです。ここでは4つの使い分けと、選び方を間違えたときによくある失敗を整理します。
4フレームの使い分けマトリクス
| 目的 | 最適なフレーム | 所要時間 | 公務員への適性 |
|---|---|---|---|
| 過去の整理 | モチベーショングラフ | 2〜3時間 | ★★★★★ |
| 現在地の確認 | Can/Will/Must | 1〜2時間 | ★★★★☆ |
| 他者視点の発見 | ジョハリの窓 | 1〜2時間 | ★★★☆☆ |
| キャリア軸の発見 | キャリアアンカー | 1時間 | ★★★★☆ |
フレーム①:モチベーショングラフ
過去の出来事とその時の気分(高・低)を時系列でグラフ化するフレームです。公務員には最も合うフレームだと感じます。
異動で経験が断片化していても、モチベーションが高かった瞬間と低かった瞬間を拾うことで、自分が何に動かされるかが見えてきます。
フレーム②:Can/Will/Must
「Can(できること)・Will(やりたいこと)・Must(求められること)」の3つの円で現在地を整理します。3つが重なる部分が転職の軸になる考え方です。
公務員は「Can」が曖昧になりがちなので、モチベーショングラフでCanを洗い出してからこのフレームに進むと効果的です。
フレーム③:ジョハリの窓
「自分が知っている自分・知らない自分」「他人が知っている自分・知らない自分」の4象限で自己理解を深めます。同僚や家族に協力してもらう必要があり、負荷が高い分、客観的な自己像が見える強みがあります。
フレーム④:キャリアアンカー
8つの価値観(管理能力・技術専門能力・保障安定・独立自由・起業家的創造性・奉仕社会貢献・純粋挑戦・生活様式)から、最も譲れない価値観を見つけるフレームです。公務員は「保障安定」が強く出やすいですが、辞める決断をしている以上、第2・第3の価値観に注目するのがおすすめです。
順番は「モチベーショングラフ→Can/Will/Must→キャリアアンカー」
4つすべてをやる必要はありません。時間がない場合は、モチベーショングラフ→Can/Will/Must→キャリアアンカーの3つで十分な自己分析ができるといわれています。
ジョハリの窓は他者協力が必要なため、優先度は最後です。
フレーム選択の失敗パターン
自己分析の本を読み漁り、10個以上のフレームを試して消耗する公務員も少なくありません。フレームはあくまで自分の中にあるものを言語化する道具なので、1つのフレームで十分な気づきがあれば次に進むべきです。
完璧な自己分析よりも、手を動かしてアウトプットすることを優先してください。
フレーム別のアウトプットの目安
- モチベーショングラフ:A4用紙1枚の曲線グラフ+10〜15個の出来事の説明文
- Can/Will/Must:A4用紙1枚の3円図+各円に5〜10項目
- キャリアアンカー:8つの価値観のランキング+上位3つの理由文
- ジョハリの窓:A4用紙1枚の4象限+各象限に5項目程度
これくらいのボリュームで十分な自己分析になります。書きすぎて読み返せないほどの量になると、逆に軸がぼやけます。
(出典)厚生労働省:職業情報提供サイト jobtag
モチベーショングラフの書き方(公務員版)
モチベーショングラフは、公務員が最初に取り組むべきフレームです。異動で経験が断片化していても、時系列に並べれば一本の線として見えるようになるためです。
書き方は4ステップで、横軸に時間(小学校から現在まで)、縦軸に気持ちの高低を取り、出来事を点で置いて線でつなぎます。ここでは、公務員時代に起きやすい出来事のリスト例、点が高くなったときと低くなったときから何が読み取れるか、そしてグラフから自分の型を見つける方法を扱います。
手を動かす前に例を見ておくと、書き出しで止まりません。線を引くだけなら30分ほど、出来事の書き込みまで含めると本記事の目安表では2〜3時間としています。
書き方の4ステップ
- ステップ1:横軸に時間(小学校〜現在)、縦軸にモチベーション(+10〜-10)を取る
- ステップ2:人生の転機になった出来事を10〜15個書き出す
- ステップ3:各出来事のモチベーションの高さを点で打ち、線で結ぶ
- ステップ4:高い点・低い点の理由を文章化する
公務員時代の出来事のリスト例
| 時期 | 出来事 | モチベーション |
|---|---|---|
| 入庁1年目 | 配属・新規採用 | +8 |
| 入庁2年目 | 担当した施策の表彰 | +9 |
| 入庁3年目 | 最初の異動 | -3 |
| 入庁5年目 | 議会対応で評価される | +7 |
| 入庁7年目 | ハラスメント気味の上司 | -8 |
| 入庁9年目 | 昇進の遅さを実感 | -5 |
| 入庁12年目 | 災害対応で住民に感謝される | +9 |
| 入庁14年目 | 将来への閉塞感 | -6 |
| 入庁15年目 | 転職活動開始 | +5 |
高い点と低い点から読み取れること
モチベーションの高い点と低い点を比較すると、自分が何に動かされるかが見えてきます。上の例の場合:
- 高い点(施策表彰・議会対応の評価・災害対応):成果が他者に認められた瞬間が共通
- 低い点(ハラスメント上司・昇進の遅さ・閉塞感):自分の意思が反映されない環境が共通
この場合、自分の価値観は「成果が可視化されること」と「自分の意思が反映されること」だと整理できます。転職先の選定軸にも直結する情報です。
モチベーショングラフで見つかる「自分の型」
グラフを書き終えると、自分が高揚するパターンと消耗するパターンがそれぞれ3〜5個見えてきます。このパターンこそが、自己分析の核となる自分の型です。
転職先でこの型が再現できるかを判断軸にすると、入社後のミスマッチが減る傾向があります。
Can/Will/Mustで現在地を整理する
過去を整理したら、次は現在地です。Can(できること)・Will(やりたいこと)・Must(求められること)の3つを書き出し、重なる部分を探します。
ここが転職の軸になります。公務員の場合、Canの欄が埋まらずに手が止まる人が多いのですが、それは能力がないからではなく、担当業務を外の言葉に置き換えていないだけです。
ここでは、3つの円に書き込むテンプレート、重なりの見つけ方、出てきた軸を志望する業界や職種にどう変換するか、そして書くときに注意すべき点を扱います。埋まらない欄があっても、そのまま次に進んで構いません。
Can/Will/Must記入テンプレ
| 項目 | 公務員15年以上の例 |
|---|---|
| Can(できること) | 法令解釈、予算編成、住民対応、関係機関調整、議会対応、文書作成、プロジェクト推進 |
| Will(やりたいこと) | 成果を数字で可視化したい、自分の裁量で意思決定したい、Web分野で専門性を築きたい |
| Must(求められること) | 家計維持(住宅ローン・教育費)、家族の時間確保、40代に向けた市場価値の担保 |
重なりの部分を見つける
上の例では、CanとWillの重なりに「プロジェクト推進×成果の可視化」が見えてきます。Mustまで含めると、「家計を維持しながら、プロジェクト推進スキルを数字で見える環境で発揮する仕事」が転職の軸だと言語化できます。
Can/Will/Mustで出てきた軸を志望業界・職種に変換
軸が言語化できたら、具体的な業界・職種に落とし込みます。上の例なら、以下のような候補が浮かびます。
- Webマーケター(数字で成果可視化、自分の裁量で動ける)
- ITコンサルタント(プロジェクト推進スキルが活きる)
- 事業会社の企画職(公務員の調整スキルが活きる)
Can/Will/Mustを書く時の注意点
Canの欄に「法令解釈」「予算編成」などの公務員用語をそのまま書くと、民間企業の人事担当者には伝わりません。Can欄は民間企業の人が読んで理解できる言葉に翻訳して書く必要があります。
たとえば「法令解釈」は「ルール・規定を読み解き適切な運用判断をする力」、「予算編成」は「限られたリソースを配分する計画策定力」のように言い換えてください。この翻訳作業こそが、応募書類の自己PRの骨格になります。
(関連記事)公務員から転職する時の強みの見つけ方
自己分析シートの作り方と公務員向けの記入例
フレームをひととおり試したら、結果をA4用紙1枚にまとめて、はじめて使える形になります。書き散らしたメモのままでは、志望動機にも職務経歴書にも転用できないためです。
ここでは、1枚に収める5つの項目の作り方、公務員の職務経歴を書き出すときの記入の例、そして自分では気づけない強みを第三者から1行もらう他己分析のやり方を扱います。特別な用紙は不要で、A4のコピー用紙1枚とペンがあれば始められます。
この1枚が、以降の応募書類と面接すべての土台になります。私も転職活動中は、この紙を何度も見返しました。
A4用紙1枚に収める5つの項目のつくり方
紙を横向きに置き、5つの欄を作ります。1つ目は「できること」で、これまでの仕事で人に説明できるレベルの作業を書き出します。
2つ目は「やりたいこと」で、続けたい仕事の方向を書きます。3つ目は「大事にしたい条件」で、勤務地や働き方、年収の下限など譲れない条件を並べます。
4つ目は「避けたいこと」で、二度と関わりたくない業務や環境を書きます。5つ目は「まだ分からないこと」で、判断がつかない項目をそのまま残しておく欄です。
5つ目の欄を作っておくのが要点で、分からないことを無理に埋めようとすると自己分析が止まります。各欄は3〜5行で十分です。
埋まらない欄があれば、それも情報として受け止めてください。
公務員の職務経歴を書き出すときの記入例
公務員が書き出しでつまずくのは、担当した事業名だけを書いてしまうからです。「福祉政策の担当」「窓口業務」と書いても、外の人には何をした人か伝わりません。
書くべきなのは、その仕事で自分が何を動かしたかです。たとえば窓口業務なら、1日に何件の相談を受け、どんな苦情を、どういう手順で解決に持っていったのか。
事業の担当なら、関係する部署がいくつあり、誰と誰の合意を取り付けて前に進めたのか。予算折衝を経験しているなら、いくらの規模の要求を、どんな根拠資料で通したのか。
私の場合、自分では地味だと思っていた予算折衝の経験が、書き出して言葉にしてみるといちばんの強みになりました。地味に見える仕事ほど、書き出してみる価値があります。
他己分析で第三者から強みの言葉を1行もらう
自己評価だけでは、強みは過小にも過大にも振れます。そこで、書き上げたA4用紙を誰か1人に見せて、「自分だったらこの人のどこを買うか」を1行で言ってもらってください。
相手は同僚でも、家族でも、先に民間へ移った知人でも構いません。転職エージェントとの面談を使う手もあります。
ここで欲しいのは励ましではなく、自分では思いつかなかった言葉です。返ってきた言葉が意外なものであるほど価値があります。
もらった1行は、A4用紙の余白にそのまま書き写しておいてください。志望動機や自己PRで言葉に詰まったとき、この1行が起点になります。
1人で完結させないことが、自己分析を早く終わらせるコツでもあります。
書き出した職務経歴を応募書類に仕上げる手順は、公務員の職務経歴書の書き方を参考にしてください。
自己分析の結果を志望動機・自己PR・退職理由につなぐ方法
自己分析は、書類と面接の言葉に変換してはじめて意味を持ちます。変換の対応は決まっていて、価値観は退職理由に、強みは自己PRに、キャリア軸は志望動機になります。
この3本を同じ材料から作るので、面接で深掘りされても話が食い違いません。公務員の場合、特に効くのが退職理由です。
「なぜ安定を捨てるのか」は必ず聞かれる質問であり、価値観から一貫して説明できるかどうかで印象が変わります。ここでは、3要素の接続フロー、変換するときの注意点、私自身の自己分析ノートの実例、そして実際に組み立てた3要素の例文を扱います。
接続フロー表
| 自己分析の要素 | 接続先の応募書類 | 具体的な落とし方 |
|---|---|---|
| 価値観 | 志望動機 | 「私は〇〇を大切にしており、御社がこの価値観を実現できる環境と感じた」 |
| 強み(Can) | 自己PR | 「公務員時代に培った〇〇のスキルは、御社の〇〇業務で活かせる」 |
| キャリア軸 | 退職理由 | 「今の環境では〇〇の軸が満たせないため、転職を決意した」 |
接続する時の注意点
- 同じ軸で3要素をつなぐ:志望動機・自己PR・退職理由がバラバラだと面接官の不信感を招く
- 具体的なエピソードを各要素に紐づける:抽象論ではなく、公務員時代の具体例で裏付ける
- 「だから御社」の接続詞を意識する:価値観・強み・キャリア軸が御社でどう活きるかを明示
私の自己分析ノートの実例
私が転職時に使った自己分析ノートの中核部分を公開します。
- 価値観:成果が数字で可視化されること・自分の裁量で意思決定できること
- 強み:プロジェクト推進・関係者調整・文書作成
- キャリア軸:Webマーケティング領域で5年以内に専門家ポジションを築く
この3行を軸に、志望動機・自己PR・退職理由のすべてを組み立てました。同じ軸で3要素をつなぐことで、面接での説得力が大きく上がったと感じています。
実際に組み立てた3要素の例文
志望動機:公務員時代に担当した施策で、成果が目に見える形で残りにくいことに課題を感じていました。御社のWebマーケティング事業は、数字で成果が可視化される環境であり、私が大切にしている価値観と合致すると考えています。
自己PR:15年以上の公務員生活で培ったプロジェクト推進力・関係者調整力・文書作成力は、御社のクライアント対応業務で即戦力になると考えています。特に議会対応での説明資料作成は、Webマーケの企画提案書の作成スキルと直結すると感じています。
退職理由:公務員の仕事にやりがいはありましたが、成果が数字で見えにくい環境では自分の成長実感が得られないと感じるようになり、Webマーケ領域で専門性を築きたいという思いから退職を決意しました。
この3つが同じ軸(成果の可視化・数字での評価)で貫かれていることを意識してください。面接では「同じ質問を角度を変えて3回聞かれる」とよく言われます。
軸がぶれると不合格になりやすいと感じます。
(関連記事)公務員から転職する時の自己PRの作り方
分析の結果から業界と職種を3つに絞る手順
自己分析は、応募先の候補が3つまで絞れてはじめて完了します。志望動機や自己PRが書けても、どこに出すかが決まっていなければ転職活動は動きません。
ここでは、やりたいことではなく避けたいことから候補を削る方法、残った条件で応募できる業界と職種を書き出す方法、そして絞った3つについて求人の実数を確かめる手順を扱います。先に足し算をすると候補が無限に広がるので、引き算から始めるのが早道です。
この作業は1〜2時間を目安に終えられ、終わった時点で次に何をすればよいかがはっきりします。
避けたい条件から先に応募先の候補を減らす
候補を絞るときは、やりたいことから考えないでください。やりたいことは抽象的になりやすく、どの業界でも当てはまってしまいます。
先に使うのは、A4用紙の「避けたいこと」と「大事にしたい条件」の2欄です。転勤ができない、夜勤は避けたい、年収がこの額を下回るのは無理、といった条件を並べると、それだけで候補は大幅に減ります。
減ることを怖がる必要はありません。条件に合わない会社に入っても続かないので、早い段階で外したほうが時間を節約できます。
条件を先に決めずに応募先を選ぶと、入ってから合わないことに気づく確率が上がります。私自身、最初の転職では求人票の確認が足りず、短期間で辞める結果になりました。
残った条件で応募できる業界と職種を書き出す
条件で絞ったら、残った枠に入る業界を紙に書き出します。公務員の経験が値段になりやすいのは、顧客や取引先に行政が含まれる業界だと考えられます。
自治体向けのシステムやサービス、補助金の申請支援、建設やインフラ、環境関連など、許認可や制度が前提になる分野です。それ以外でも、法人営業やバックオフィスのように、調整力と文書作成力が土台として効く職種があります。
ここでは正確さより網羅性を優先して、思いついたものをすべて書き出してください。削るのは次の工程です。
10個ほど並べば十分で、そこから3つに絞る作業に進めます。
最後に候補を3つに絞って求人件数を確かめる
最後に、書き出した候補のうち3つを選び、実際の求人がどれだけあるかを確かめます。転職サイトで、自分の居住地と希望条件を入れて検索するだけです。
ここで見るのは求人の中身ではなく件数です。件数が極端に少なければ、その業界は現時点では現実的ではないと判断できます。
逆に一定数あれば、応募先に困ることはありません。候補が3つあれば、1つが不調でも活動が止まりません。
1つに絞りきらないのは、比較対象がないと内定が出たときに冷静に判断できなくなるためです。この検索は在職中でも今日できるので、自己分析を終えたその日のうちに済ませてください。
業界選びの具体例は、公務員からの転職におすすめの業界でも整理しています。
自己分析ができない・進まないときの3つの原因
自己分析が終わらない人には、共通する3つの止まり方があります。1つ目は深掘りしすぎるパターンで、「本当の自分」を探し始めると答えが出ません。
2つ目は他人軸に流されるパターンで、周囲の意見を取り込みすぎて自分の結論が消えます。3つ目は過去を美化する、あるいは逆に卑下しすぎるパターンで、どちらも事実がゆがんで判断材料になりません。
いずれも公務員に多く見られる傾向だと感じています。ここでは3つの中身と、それを回避するための具体的なルールを扱います。
先に知っておけば、はまったときに自分で気づけます。
罠①:分析の深掘りしすぎ
公務員は真面目な人が多く、自己分析に1ヶ月〜2ヶ月をかけてしまうケースがあります。完璧を目指すと終わりません。
2週間以内に第一稿を完成させるタイムボックスを設け、応募書類を書きながら自己分析も更新していくのが実務的です。
罠②:他人軸に流される
「家族が安定を望むから」「親が民間を嫌がるから」など、他人の期待で結論を出してしまう罠があります。自己分析は自分の軸を見つける作業で、他人の期待は別枠として整理するのが鉄則です。
罠③:過去美化(または過度な卑下)
過去の出来事を振り返る時、成功体験だけを拾って美化したり、逆に失敗体験だけに注目して卑下したりしがちです。モチベーショングラフの高い点・低い点をバランスよく取り上げ、両方から学ぶ姿勢が重要だといわれています。
罠を回避するための3つのルール
- 期限を区切る:2週間以内に第一稿完成
- 他人の意見は参考情報として別枠:自己分析は自分軸で貫く
- 高い点も低い点も拾う:バランスの取れた自己像を作る
よくある質問
ここからは、実際に手を動かし始めた人からよく出る7つの疑問にまとめて答えます。自己分析をいつ始めればよいのか、市販の性格診断ツールは使うべきか、途中で手が止まったときはどうするか、公務員の強みを見つけるにはどうすればよいか、職務経歴書と自己分析はどちらを先にやるべきか、グラフに高低が出ないときはどう描き直すか、そして分析が終わったあと何をすればよいか。
どれも私自身が転職活動中に立ち止まった点で、調べても答えがはっきり出てこなかったものばかりです。先に答えを知っておくと、迷って止まる時間を減らせます。
該当するものだけ読んでもらって構いません。
Q1. 自己分析を始めるタイミングは
転職を考え始めた時点が最適です。具体的な転職活動(書類作成・面接対策)に入る前に、1〜2週間を自己分析に充てる順序が推奨されます。
応募書類を書きながら自己分析を同時並行することも可能ですが、軸が固まっていない状態で応募すると書類の一貫性が崩れやすい傾向があります。
Q2. ストレングスファインダーなどの性格診断ツールは有効ですか
補助的には有効です。ツールの結果だけで自己分析を完結させるのは危険ですが、モチベーショングラフで見えた自分の型を客観的に裏付けるのに使えます。
ツールの結果と自分の主観が食い違う場合は、両方を並べて検証してください。
Q3. 自己分析が進まない時はどうすればいいですか
過去の具体的な出来事を1つ書き出すところから始めてください。抽象的な「自分の強みは?」という問いは答えづらいですが、「入庁3年目の〇〇の仕事でどう感じたか」という具体論なら書けます。
具体→抽象の順序で積み上げるのが進めるコツです。
Q4. 公務員の強みを見つけるコツは
他組織との調整経験・法令解釈と運用経験・多様な住民対応経験の3つを起点に振り返るのが有効だといわれています。民間では得にくい経験であり、営業職・プロジェクト職・企画職で高く評価されやすい傾向があります。
Q5. 自己分析と職務経歴書はどちらが先ですか
自己分析が先です。職務経歴書は自己分析で言語化した強み・価値観・キャリア軸を具体例で裏付ける書類なので、自己分析が曖昧だと職務経歴書も説得力に欠けます。
Q6. 自己分析が完了した後の次のステップは
応募書類の作成(職務経歴書・履歴書)と面接対策に移ります。自己分析で言語化した価値観・強み・キャリア軸を、応募書類の各項目に落とし込む作業が次のステップです。
Q7. モチベーショングラフで「特に高い点も低い点もない」場合はどうしますか
小さな出来事まで拾うのがコツです。「当時は当たり前だったが、今振り返ると嫌だった」「些細な成功だが達成感があった」レベルの出来事で十分です。
公務員は感情を抑えて仕事をする習慣が染み付いており、自分の感情が麻痺しているケースが多く見られます。家族・同期・学生時代の友人と話しながら記憶を掘り起こす作業も有効だといわれています。
まとめ
公務員が自己分析でつまずくのは能力の問題ではなく、異動で経験が断片化し、成果が数字で残らないという仕事の仕組みが原因です。それを前提にしたうえで、過去の棚卸し・価値観の抽出・未来への接続の3ステップを、モチベーショングラフとCan/Will/Mustの順に進めれば、合計7〜10時間で自分の軸を言葉にできます。
仕上げは、結果をA4用紙1枚にまとめ、応募先の候補を3つに絞るところまでです。今日やることは1つだけで、A4用紙を1枚用意してモチベーショングラフを書き始めること。
完璧を目指さず、2週間で第一稿を終える意識で進めてください。
- 公務員が自己分析に躓くのはジョブローテ・成果可視化困難・組織貢献中心の3つの構造要因が原因
- 自己分析は過去棚卸し→価値観抽出→未来接続の3ステップで進める
- フレームはモチベーショングラフ→Can/Will/Must→キャリアアンカーの順番で使う
- 自己分析の3要素価値観・強み・キャリア軸を志望動機・自己PR・退職理由にそれぞれ接続する
- 2週間以内にタイムボックスを区切り、他人軸に流されず、過度な美化も卑下も避ける
なお、分析した結果「やはり自分には公務員が合っている」という結論になっても、この作業は無駄になりません。残ると決めた理由を自分の言葉で説明できる状態は、辞める理由を説明できる状態と同じくらい強い材料です。
書き上げたA4用紙1枚は、家族に見せて話し合う材料にもなります。ひとりで抱えて決めるより、共有してから決めるほうが、あとで揺り戻しが起きにくくなります。


