「30代半ば、市役所に15年も勤めてしまった自分は、もう外の世界では通用しないのではないか」
そうやって、夜な夜なスマホで転職サイトを眺めては、そっと画面を閉じる日々を過ごしていませんか。
私は新卒から15年間、大阪府の某市役所に勤務し、30代半ばで民間企業(IT業界)へ飛び込んだ元公務員です。現在は2社の経験を経て、Webマーケターとして完全在宅で働いています。
住宅ローン(35年)を背負い、小さな子どもを育てながらの転職でした。周囲からは「なぜ安定を捨てるのか」「もったいない」と散々言われました。
結論から言います。 私は、転職して本当に良かったと思っています。
ですが、それは「民間に行けば誰でも幸せになれる」という甘い話ではありません。実際、転職直後は地獄のような苦しみを味わいましたし、年収も一時的に激減しました。
この記事では、きれいごとは一切抜きにします。 公務員という「最強の安定」を捨てた結果、私の人生がどう変わり、どうやって過ごしてきたのか。 あなたと同じように家族とローンを抱えながら辞表を出した私の「戦略」のすべてを公開します。
公務員から民間企業に転職した結果、「幸せ」か「後悔」か?
多くの人が最も知りたいのは、「結局のところ生活はどうなったの?」という点でしょう。 ここでは、私が実際に体験した「光」と「影」を包み隠さずお話しします。
結論:市役所時代にはなかった「精神的・時間的自由」
転職して数年が経った今、私が手に入れたのは「自分の人生を、自分でコントロールしている」という実感です。
市役所時代を思い出してください。 毎朝の満員電車、意味があるのか分からないハンコリレー、前例踏襲のための膨大な資料作成、そして「税金泥棒」と罵られる理不尽な窓口対応。 「これが定年まであと30年も続くのか」という焦燥感で、私の心の中はいっぱいでした。
現在のWebマーケターとしての生活は、それとは対極にあります。
- 働く場所の自由: 完全在宅勤務のため、通勤時間はゼロです。浮いた往復2時間は、副業やスキルアップ、そして家族との時間に変わりました。
- 評価の納得感: 「どれだけ長く席に座っていたか」ではなく、「どれだけ売上に貢献したか」で評価されます。シビアですが、成果を出せば給与にも働き方にも反映されるため、モチベーションは常に高い状態です。
- 人間関係の風通し: 市役所特有の閉鎖的な社会や、派閥争いとは無縁です。ビジネスチャットで必要なことだけを端的にやり取りするスピード感は、私にとって非常に快適です。
何より、夕方に子どもをお迎えに行き、家族と一緒に夕食を食べられる。「パパ、おかえり」ではなく、家で「おかえり」と言える生活。 これは、公務員を続けていたら定年後まで絶対に手に入らなかった幸せです。
転職後数ヶ月間は「後悔」したリアルな話
ですが、最初から順風満帆だったわけではありません。特に転職直後の3ヶ月間は、何度も「辞めなければよかったかもしれない」と後悔していました。。
当時の私は、「公務員の常識」が「民間の非常識」であることを痛いほど思い知らされたのです。
- スピード感の違い: 「とりあえず6割の完成度でいいから、今日中に出して」と言われ、市役所時代とのスピード感の違いに私は戸惑いました。丁寧に時間をかけて100点を作ろうとすると、「遅い、仕事が止まる」と怒られるのです。
- ツールの壁: Slack、Zoom、Google Workspace、Notion……。見たこともないカタカナのツールが飛び交い、誰もマニュアルなんてくれません。「ググれば分かるでしょ?」という空気感の中、30代半ばのおじさんが新卒のようにオロオロする状態は、本当に辛かったです。
- 「お客様」の定義: 公務員にとって市民は「公平に奉仕する対象」ですが、民間にとって顧客は「利益をもたらす対象」です。「利益にならないことに時間を使うな」というドライな判断基準に、最初は倫理的な葛藤すら覚えました。
「自分はここでは無能なお荷物」 そう突きつけられる毎日は、正直言って地獄でした。この「辛さ」を覚悟できなければ、転職は後悔に終わるでしょう。
(関連記事)公務員から民間転職のカルチャーショックと乗り越え方
なぜ30代・15年選手の公務員が「民間への一歩」を恐れるのか?
あなたが今、転職サイトを見ながらも「応募ボタン」を押せない理由は、痛いほど分かります。 かつての私も、以下の考えで縛られていたからです。
「公務員にしか染まれない自分」への劣等感
同級生たちが「プロジェクトマネージャー」がどうだ、「マーケティング」がどうだと話しているとき、 自分はこのような会話に全く入っていくことができず、この劣等感は、30代の公務員なら誰もが抱くものでしょう。
恐れるべきことは、スキルがないこと自体ではありません。「自分のスキルが、公務員という狭い世界でしか通用しない」と信じ込んでいることです。
- 前例踏襲でミスをしない能力
- 法令に基づき却下する能力
- 根回しをして合意を取る能力
これらは民間では「利益を生まない無駄な能力」だと、勝手に自己評価を下げていませんか。 「自分は市場価値ゼロの人間だ」という思い込みこそが、一歩を踏み出せない最大のブレーキです。
「住宅ローン」と「教育費」という物理的な足かせ
30代半ばといえば、人生で最もお金がかかる時期の入り口です。 私の場合、転職を検討した当時は、35年ローンでマイホームを買い、妻はパート勤務、子どもは保育園児という状況でした。
「年収550万円(安定・ボーナス確実)」というカードを捨てることは、家族を路頭に迷わせるかもしれないという恐怖は少なからずありました。 実際に転職エージェントからは、「未経験だと年収400万円台前半からのスタートになります」と言われていました。
手取りにして月3〜5万円のマイナス。 「私のわがままで、子どもの習い事を辞めさせることになるのか?」「旅行にも行けなくなるのか?」 そんな罪悪感が、挑戦しようとする足を強く引き止めます。
「公務員=安定」、実はそれが「リスク」である理由
それでも私が転職を決意したのは、ある日ふと気づいた「茹でガエル」への恐怖からでした。
「公務員は安定している」と言われます。確かに、組織は潰れないかもしれません。 ですが、「その組織にしがみつかなければ生きていけない自分」は、果たして安定していると言えるでしょうか?
- 退職金の減額傾向
- 定年延長による「役職定年」と給与減
- 増え続ける業務量と、減らされる人員
- モンスター化する市民からのクレーム
これらに耐えながら、40代、50代と歳を重ねたとき。「もし体を壊して働けなくなったら」「もし万が一、自治体が財政破綻したら」
その時、何の専門スキルも持たない50歳のおじさんを雇ってくれる企業などどこにもありません。
「組織が守ってくれなくなった瞬間、家族を路頭に迷わせてしまう」 このリスクに気づいたとき、私は「今動かないことこそが、最大のリスクだ」と確信しました。
公務員から民間への転職を「失敗」に終わらせないための3つの条件
公務員からの転職は、無策で挑めば確実に失敗します。 ですが、戦略があれば勝機は十分にあります。ここでは、私が実践した「失敗しないための3つの条件」をお伝えします。
「公務員のプライド」を捨て、アンラーニングする
最も重要なのはマインドセットです。 市役所で15年も勤めれば、役職が付き、部下もできて、庁内では「〇〇さん」と頼られる存在になっているはずです。
ですが、民間へ行けばあなたは「何も知らない新人」です。 年下の上司に敬語を使い、20代の先輩にツールの使い方を教わり、ミスをして怒られる。この現実に直面した時、「年下なのに生意気だ」「前の職場ではこうだった」というプライドが邪魔をすると、一瞬で職場から孤立します。
「アンラーニング」という言葉があります。 過去の成功体験や常識を意識的に捨て、新しい環境に合わせて学び直すことです。「私は何も知りません。教えてください」と素直に頭を下げられるかどうかが、転職後での生存率に影響します。
「福利厚生」ではなく「稼ぐスキル」で将来の安全を買う
公務員は「所属」に守られていますが、民間では「スキル」があなたを守ります。 転職先を選ぶときは、福利厚生の良さ(住宅手当や退職金制度など)よりも、「その会社を辞めても、個人で食べていけるスキルが身につくか」を最優先に考えてください。
私がWebマーケティング職を選んだのもそのためです。もし会社が倒産しても、Web集客のスキルがあれば、他の会社でも即戦力になれますし、最悪フリーランスとして生きていくこともできます。
「安定」の定義を、「会社に守ってもらうこと」から「自分の腕で稼げること」へ書き換える。これが、これからの時代の生存戦略です。
「辞める」前に「市場の評価」を1円もかけずに確認する
多くの人が陥る間違いが、「もう限界だ!」と感情的に辞表を出してから転職活動を始めることです。これは絶対にNGです。
まずは水面下で転職活動を始めてください。 職務経歴書を書き、エージェントと面談し、実際に企業の面接を受けてみる。 これには1円もかかりませんし、リスクもゼロです。
もし、どこからも内定が出なければ、「今の自分にはまだ市場価値がない」と分かるだけ。そうすれば、今の市役所の仕事に対して「雇ってくれてありがとう」と感謝して働きながら、スキルアップをすればいいのです。
「内定」というカードを手札に持って初めて、本当に辞めるべきかを悩んでください。
後悔しないための「家族と資産を守る」具体的な戦略
ここからは、より実践的な話です。 30代・子持ち・ローンありの状態が、どうやって年収ダウンの壁を乗り越え、家族を説得するか。その戦術を公開します。
一時的な年収ダウンを乗り切る「防衛計画」
私の場合、転職1年目は年収が約200万円下がりました。これを乗り切るために、妻には以下のようなプレゼンを行いました。
① 「貯金の切り崩し」を許容してもらう 「最初の数年間は、月々の赤字を貯金から補填させてほしい。将来的には今よりも稼ぐから、数年間は「投資」だと思ってほしい」と頼みました。
② 「副業」でカバーする覚悟を示す これが最も効果的でした。 「通勤時間がなくなる分、その時間を副業(Webライティングなど)に充てて、減った分は自分で補填する。」 公務員時代には禁止されていた副業ができるのも、民間の大きなメリットです。実際に私は、転職半年後から副業を開始し、減収分の一部を補填しました。
35歳・未経験でも「優良ホワイトIT企業」から内定をもらう
30代未経験の公務員を採用してくれる企業なんてあるのか? 結論、あります。ただし、「即戦力」としては見られません。見られるのは「ポテンシャル」と「リスク管理能力」です。
面接で私は、公務員の経験を以下のように「翻訳」してアピールしました。
×「窓口でクレーム処理をしていました」
⇒「理不尽な要求に対しても感情的にならず、事実と法令に基づいて粘り強く交渉し、納得解を導き出す『コンフリクトマネジメント』が得意です」
×「決裁文書を作っていました」
⇒「誰が読んでも誤解のない、論理的かつ正確なドキュメント作成能力があります。これはリモートワークでのテキストコミュニケーションにおいて、認識祖語を防ぐ強みになります」
×「言われたことをミスなくやっていました」
⇒「コンプライアンス遵守とリスク管理を徹底できます。ベンチャー企業の攻めの姿勢の中に、守りの要として貢献できます」
IT企業、特に急成長中のベンチャーは「攻め」には強いですが、「守り(管理・整える力)」が弱い傾向にあります。そこに、元公務員の「真面目で緻密な管理能力」が刺さるのです。
(関連記事)公務員経験を民間で活かす職務経歴書の翻訳術
転職エージェントを使い倒す方法
大手総合エージェント(リ○ナビなど)だけに登録するのは危険です。彼らは効率重視なので、「35歳・公務員・未経験」というデータを見た瞬間、「紹介できる案件はありません(=介護や飲食ならあります)」と塩対応される可能性があります。
私が使ってよかったのは、以下の2タイプです。
- 管理部門(事務・総務・経理)に強い特化型エージェント 公務員の事務処理能力を正当に評価してくれる企業を持っています。
- IT・Web業界の未経験枠に強いエージェント 「今はスキルがないが、学習意欲が高い人」を求めている企業を紹介してくれます。
担当者には、「公務員という安定を捨ててでも、御社でスキルを身につけたい」という熱意を伝えてください。エージェントをあなたの「ファン」にできれば、優良求人を紹介してくれる可能性が上がるかもしれません。
市役所→IT→Webマーケ。2回転職の「年収」と「働き方」
最後に、私のキャリアの変遷をお話しします。
15年いた市役所を去る日、私が感じた「解放」と「震え」
市長から退職辞令を受け取った最終出勤日のことは、一生忘れません。 手は小刻みに震えていました。「本当にこれでいいのか」「後戻りはもうできない」という想いが頭の中にありました。
ですが、庁舎を出た瞬間、不思議な感覚でした。 「明日から、自分の人生はすべて自分の責任だ」 それは恐怖でもありましたが、それ以上に、自由になった清々しさの方が強かったです。
年収が200万下がった1社目。そこで得た「スキル」
1社目のITベンチャーでの年収は400万円弱。公務員時代のピークから200万円近いダウンでした。 仕事は慣れないことばかりで、年下の社員に怒鳴られながら、必死で食らいつきました。
ですが、私はここで「ITスキル」の基盤を身につけました。chatworkやSlackなどのコミュニケーションツール、Zoomでの商談スキル、クライアントワークの基本。 家に帰ってからも独学でWebマーケティングの勉強を続けました。
「今は耐える時期だ。ここで力を溜めるんだ」 そう自分に言い聞かせ、歯を食いしばって働きました。
(関連記事)市役所の仕事が民間でこう評価された実録スキル翻訳
現在:完全在宅Webマーケター。子どもの「おかえり」を家で言える幸せ
そして2年後、身につけたITスキルと独学したマーケティング知識を武器に、2度目の転職を行いました。 現在のWebマーケティング会社です。
年収は副業を合わせると公務員時代を超えました。 何より嬉しいのは、働き方の変化です。
朝は子どもを保育園に送り、9時半から自宅で仕事開始。 18時にはPCを閉じ、家族で夕食を囲む。 平日でも子どもの行事に参加できるし、市役所のような無駄な残業もありません。
かつて私が市役所の窓口で、死んだような目でPCを叩いていた頃には、想像もできなかった未来がここにあります。 あの時、震える手で退職届を出した自分を、今は褒めてやりたい気持ちです。
結論:悩むのは「内定という選択肢」を手に入れてからで遅くない
もしあなたが今、少しでも「今のまま終わりたくない」と思っているなら、 どうか、その心の声を無視しないでください。
「転職活動」はノーリスク。「転職」はハイリスク。
何度でも言います。いきなり今の仕事を辞める必要はありません。
会社にバレることはないので、スマホで転職サイトに登録し、自分の市場価値を確かめてみる。気になる会社があれば、職務経歴書を書いてみる。これら「転職活動」そのものには、何のリスクもありません。
むしろ、外の世界を知ることで、「意外と自分も評価されるんだな」と自信がついたり、「やっぱり公務員も悪くないな」と今の環境に感謝できたりするかもしれません。 どちらに転んでも、あなたにとってはプラスでしかないのです。
40代で「あの時動けばよかった」と嘆く自分を救えるのは、今のあなただけ。
公務員からの転職における「35歳の壁」はリアルです。 40代になると、求人の数はガクンと減り、求められるハードルは跳ね上がります。
「石橋を叩いて渡る」これが公務員の性分かもしれません。 ですが、あなたが石橋を叩き続けている間に、その橋は老朽化し、向こう岸へ渡る体力が失われていきます。
まずは一歩、小さなアクションを起こしてみてください。
エージェントに話を聞きに行くだけでも構いません。 その小さな一歩が、あなたの、そしてあなたの家族の未来を明るい方へと変えるきっかけになることを、私は心から応援しています。


